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貴族様と言われたい  作者: チョウリョウ
第2章  デリア国編
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黒豹の逆落とし

# 雷霆砦での攻防 ― 黒豹の逆落とし



## 激戦の序章


ラウテル山の峠ふもとにに「雷霆砦」という簡易要塞が完成し、黒豹軍の補給路が遮断される、これに危機を覚えた

思った以上に早くデリア本国からの援軍5万が到着して。パベル軍とデリア軍の戦いが始まろうとしていた。パベル軍8万はデリア軍5万を相手に戦いを挑む

デリア国5万の大軍が簡易な土塁による堤防状の防壁と雷霆砦に押し寄せていた。緑地の山並みを背景に展開する黒と金の甲冑の波は、まるで大河が平原に流れ込むような壮大さだった。


パベル軍8万は雷霆砦を中心に簡易な土塁で防御陣形を構えていた。チャイス《ディフェンダー》重装歩兵1万が前線で盾を並べ、光雷卿ヒンター・ベルガーは要塞内で全体の指揮を執っていた。

「正面から受け止めるな。横陣で側面を狙え」


「弓隊射撃開始!」

スベッチ《弓》の弓兵1万が土塁の石垣から一斉に矢を放つ。弓の弦音が連続して鳴り響き、嵐のような矢がデリア軍に降り注いだ。


「怯むな!前進せよ!」

デリア軍指揮官の叫びが轟く。黒い旗を翻し、槍兵の大群が盾を並べて進軍してくる。


「重装歩兵!密集陣形!」

チャイス《ディフェンダー》隊長の命令で重装歩兵1万が鉄壁の密集陣を形成した。


「突破だ!」

デリア軍が槍先を揃えて突撃する。


盾と盾が衝突し、鈍い金属音が山中に響き渡った。前線では肉薄した兵士たちが剣戟を交え、血飛沫が飛び散る。

「光雷卿!右翼が押されています!」


「ロレンソ(時渡)、アイリ(戦斧)を投入しろ!」


ロレンソ軍閥徴収軍3万からアイリ(戦斧)部隊5千が出撃し、重装歩兵と並走しながら戦場に躍り出た。


「斬り込め!」


アイリ(戦斧)の部隊がデリア軍の右翼側面をの深く押し込むが、デリア軍の必死の反撃で。デリア軍の5万の波に押し返され、パベル軍も徐々に後退していく。

「持ちこたえさせろ!」光雷卿が雷霆砦から前線へ指令を送る。

「マリイカ《アタッカー》騎馬隊を出せ!右翼援護!」


デリア軍はパベル軍右翼に戦力を集め攻撃してきた、パベル軍の右翼ではチャイス《ディフェンダー》重装歩兵とアイリ(戦斧)部隊が共同で戦い続けていた。重装歩兵が前線で壁となり、アイリ(戦斧)部隊が隙間から敵を斬り込む。


「耐えろ!持ち堪えろ!」


アイリ(戦斧)の部隊も負傷者が増えてきていた。重装歩兵の疲労も限界に近付いている。

「あと少しだ!頑張れ!」


右翼の光景を見ていた光雷卿は顔をしかめた。

「時間がかかりすぎている」


## 最悪の事態


「チャイス《ディフェンダー》重装歩兵!盾で防ぎ続けろ!」

前線で必死に抵抗するチャイス《ディフェンダー》重装歩兵。しかし体力の限界を迎えた者も少なくない。

「右翼の支援に行け!」


ロレンソ軍閥徴収軍3万が右翼に向かって進軍を開始する。左翼のスベッチ《弓》弓兵1万も右翼への射撃を強化した。


「中央に突入してくる!」

光雷卿の耳元で副官の声が響く。デリア軍がパベル軍右翼より密集陣形を維持したまま前進していた。


「重装歩兵隊!盾を立てろ!」

アイリ(戦斧)が叱咤する、防御陣形を組んだ。皆が右翼の状態に気を取られる、その時だった、手薄になった雷霆砦に何かが落ちてくる。


黒豹の策に光雷卿が掛かった。


## 黒豹の逆落とし


「黒豹軍!上からの攻撃!」

ガルメル(遠目)の叫びが戦場に響き渡った。ラウテルから険しい峰の上から黒豹軍1万が急坂を駆け下りてきたのだ。


人登れないような峰から駆け下りてきたというより落ちてきた、死を恐れず雷霆砦落ちてきた?

黒豹部隊はみな血を流しながら、パベル軍に襲い掛かる。まさか落ちてくるとは思わずパベル軍は浮足立つ

光雷卿が目を見開く。

「近衛兵、注意せよ!」

「落ち着け!混乱するな!」


「上から落ちてくるとは……」

ロレンソ(時渡)が眉をひそめた。


# 雷霆砦の死闘 ― 暗雲が垂れ込める


## 黒豹の死の舞踏


「何だ!あの峰から落ちてくるのは!」


ロレンソ(時渡)が叫ぶ間にも、ラウテル山の絶壁から黒豹部隊が次々と滑り落ちてくる。まるで人間が石ころのように岩肌を転がり落ちていく。


「自殺行為だ!」

ガルメル(遠目)が恐怖の目を向けた。


だが驚くべきことに、ほとんどの黒豹兵が、山で鍛えた身体能力だけで落下して普通なら致命傷になるはずが。彼らはほとんど物が大怪我を覆いながらしながら雷霆砦の中に落ちてくる。


「ラウテル山黒豹の落下作戦かなんだ……!」

光雷卿の唇が震えた。


このような捨て身の戦術は通常考えられない。


「敵は死ぬことを恐れていない!」

ロレンソ(時渡)が警告する。その言葉通り、黒豹兵たちは負傷しても立ち上がり、狂ったように突進してくる。


「密集陣形を崩すな!」

アイリ(戦斧)が叫ぶが、あまりの衝撃にパベル軍が乱れ始めた。


## 悪夢の到来


「光雷卿!チャイス《ディフェンダー》隊長が!」


重装歩兵の前線から巨躯の男がやってきた「皆あわてるな!」

動揺する近衛兵にげきを飛ばす、チャイスは立ち上がる。


「ラウテル山黒豹グレン・ヴォルケンが来た!」


戦場の喧騒の中、一人の老将がゆっくりと歩み寄ってくる。黒豹の紋章を胸に刻んだ革鎧。長い髪を後ろで束ねた豹のような眼を持つ男──ラウテル山黒豹グレン・ヴォルケン。


「我が名はグレン・ヴォルケン。ラウテル山の黒豹を率いる者」

静かな声だが、戦場の全てを沈黙させる威圧感がある。


チャイス《ディフェンダー》重装歩兵隊長が剣を抜いた。

「チャイス・バースト!重装歩兵隊長。貴様に屈することはない!」


「ならば試してみるか」

グレンが腰の短刀を抜く。それは漆黒に染まり、刃先が赤く発光していた。


二人は睨み合い、そして同時に動き出した。


チャイスの巨大な剣が風を切って振り下ろされる。それをグレンが紙一重で躱し、返す刃でチャイスの肩口を掠めた。


「くっ!」


重装歩兵の鎧を貫通する短刀の威力にチャイスが唸る。二人の間で何度も剣と刃が交錯する。チャイスの力強い攻撃とグレンの流れるような回避が繰り返された。


「素晴らしい!貴様こそ真の戦士だ!」

黒豹が叫ぶ。


チャイスもまた全力で応じていた。彼の重い一撃は山をも砕くかと思うほどの威力を秘めていた。二人の戦いは他のすべてを忘れるほど熱を帯びていった。


だが勝敗は突如として訪れる。チャイスの豪快な袈裟懸けの一撃を、豹のように体を回転させて避けた。そして返す刀でチャイスの胴を横一閃。


「うおおおっ!」


重装歩兵の鎧をも貫く一撃にチャイスが悲鳴を上げる。鮮血が噴き出し、巨躯が崩れ落ちる。それでもチャイスは最後の力を振り絞って立ち上がろうとするが──


「見事な戦いぶりだった」

黒豹が短刀を彼の首筋に当てた。


「さらばだ……勇士よ」


チャイスの目が閉じられる。重装歩兵の希望とも言うべき隊長が倒れた瞬間、パベル軍全体に暗雲が立ち込めた。


「隊長が……!」


重装歩兵部隊に動揺が広がる。それを確認したグレンは次の標的を見据えた──雷霆砦内の光雷卿ヒンター・ベルガーだ。


「次は貴様だ!光雷卿!」



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