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転生したけど魔法が使えないので薬師を目指していたら幼馴染み魔術師が私を溺愛してきます  作者: みゆり


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158/158

158.賢者が抱く本当の気持ち

 ソルソフィアとルーデウスは転移魔術を使い、トゥーラ遺跡に降り立った。


 遺跡では彼女の元で働いている作業員達が今も尚、発掘作業を行っている。


 空を見上げると集まった黒灰色の雲が向こうから近づいているのが見えた。暗雲は異様に冷たい気配を帯びていた。


 何か不遇の事態が起こってはまずい、念のため作業員を一時避難させるべきとソルソフィアは無言で足を動かす。


 その後ろをルーデウスは黙って付き従った。


 「……怒ってる? ソル」


 トゥーラ遺跡に着いた途端、物言わぬままの彼女の背を見つめ、ルーデウスの言葉が沈黙を破った。


 「本当はソルがティナを迎えに行きたかったんでしょ? あの術式だって元々の考案者はソルじゃないか、あの頃魔術師達と一緒に編み出したんだ。それを長い年月と共にいつの間にか人間達が勝手に禁書扱いにした」


 「もういい、それ以上は。あと君には私の心を無断で読むことを許していない」

 「……」


 契約により二人の間に流れる魔力、思考は共有されている。主はソルソフィアであり、彼女はルーデウスが見知ったものや思考を即時に認知する事ができる。だがルーデウスがソルソフィアの思考を読み取ることは禁じられていた。


 前を向いたままソルソフィアは振り返らない、遠い昔に思いを馳せているようにも見えた。


 「ルーに昔話した事があったよね。前に私がこの世界から『排除』されて別の世界に封じられた時、そこで偶然出会った如月瑠夏という娘が私を保護し助けてくれたんだ」


 「うん」


 ルーデウスは暗く俯いた。当時起きた出来事は忘れることは出来ない。あの時ルーデウスは諸事情で敵に拘束され動けない状態になっていた。そのため危機的状況に陥ったソルソフィアを救出に駆けつけることは叶わなかった。そんな不甲斐ない自分に歯噛みする、本来の役割を果たせなかった事が今でも悔やまれた。


 「彼女が手助けしてくれたから、私は再びここに戻る事ができた。だから逆の立場となった今こそ私が助けに行きたかった。何せあの空間は女神の領域、女の身である私が行けば少しはましだろうから」


 だからソルソフィアは如月瑠夏の生まれ変わりであるティナ・ヴァンドールを見つけた時、すぐに手元に置きたがり、古くから交流していた彼女の祖父アスガルド・デュヴァリエ侯爵に幾度も話を持ちかけた。


 それでなくとも幼少時からティナの魔力は人並み外れた量を宿し、ソルソフィアの元でさらに力を磨けば高位の魔術師への道も開ける。


 だが彼女と付き合いが長いアスガルドでも、まだ幼い孫娘を他人に預けるなど、良い顔をせず頷く事はなかった。それでも最終的にソルソフィアに説得され渋々了承したが。


 それからはソルソフィアの希望通りに話は進み、心の中で喜んでいたのだが不測の事態は存在した。


 ティナとクラヴィスの出会いによりソルソフィアの計画が全て歪んでしまった。


 ソルソフィアは憎らしげに瞳を細めた。


 「全く、この世はなんてままならないのだろう」


 彼さえ現れなければ、ティナをずっと自分の懐の中に置いておけたのに。そして頃合いをみて彼女をルーデウスと同等の存在に、と考えていた。


 「私の方が先に彼女を見つけたのにどうして――」


 頭の中に絶望が迫る。彼女の中はいつだっでそれで一杯だった。


 会わせなければ良かった。あの行動の結果が今の状態を招いたのだと予知していれば、ソルソフィアは絶対にあの二人を引き合わせなかった。


 けれど最早遅い。暗い夜空のように覆われた雲を見上げ、彼女は途方に暮れた。そして闇の思考が顔を出す。


 ――ああ、彼さえいなければ、彼女は私のものになっていたはず。


 「! ソル、ダメだよ。それ以上、考えてはダメだ!」


 闇色の思考に沈みかけ、表情を消した彼女の肩をルーデウスが強く掴んだ。埋もれかけた心が浮上する。やがて元の顔に戻ったソルソフィアは振り向いて小さく笑った。


 「すまないルー、ついよくない事を考えかけた。今は急いで発掘現場へ行かないといけないのに」


 「――うん」


 いつになく理性を制御できない彼女の姿を目にしてルーデウスは驚いたが、その理由を追及する事はなかった。


 トゥーラ遺跡の発掘現場は彼女が手掛ける調査の中で最も古く重要区域に認定される。土壌や出土物は魔術汚染されているものが多く、慎重かつ丁寧な作業を求められる。


 そのため熟練指導者を現場監督役に据え、作業を円滑に進められるようにしている。


 空を覆い埋め尽くす黒雲は通常の天候からは到底考えられないもので、何らかの魔力を含む可能性もある。勿論ただの自然発生した雲という事もあるが、用心するに越したことはない。どちらにせよ作業は一時中断し風雨からこの区域一帯を守る必要があった。


 ソルソフィア達の来訪に気づいた現場監督が小走りでやってきた。


 「まだ昼前で休憩には早いでしょう。何かあった……あ、もしかしてあの雲のことですかい?」

 「ああ、そうだ。嵐がくるかもしれない。一応今日の作業はこれで上がろう。風雨と魔力汚染を防ぐための結界をこれから張ろうと思う」


 暗雲を見上げ、複雑な顔をした現場監督にこれから行う事をソルソフィアが伝える。彼はすぐに頷くと近くにいた作業員を呼び、作業中止の号令をかけていった。


 作業員達は少しでも風雨を防ぐよう、薄く鞣した皮を幾つも繋げた物を広げ、掘削場所を覆っていく。


 ルーデウスも結界に使用する魔石を要所に置く作業を始めた。


 


 

 

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