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決着

 魔王代理と勇者の戦いは苛烈を極めた。

 勇者の力はチートにふさわしく、その剣は天を裂き、魔法は大地を穿つと噂されていたが、あながち間違いでもなかった。

 さらには、勇者をサポートする嫁たちの存在。

 一人ひとりの力は勇者には遠く及ばないが、力を合わせて勇者の助けとなっていた。

 勇者とその嫁のパーティーはまさしく人族最強のパーティーであった。


 対する魔王代理であるミコトは一人。

 しかし、ミコトは幼いころから魔王の元で研鑽積み、名実ともに魔王の娘としての地位を得ていた。

 つまり、代理とはいえ彼女は魔王にふさわしい力を持っている。

 ミコトは剣術に加え、空間魔法と重力魔法、時折幻術を混ぜて人数差をものともせず果敢に戦った。


 長い戦いの末、ついに決着がついた。

 勇者の負けで。


 倒れ伏す嫁たち。

 そして、ボロボロで満身創痍の勇者。

 その首元には剣が突きつけられている。


「私の勝ちね」


 そう宣言するミコトは傷を負っているものの、まだまだ余力は残っている様子である。


「う、うそだ。俺が負けるはずがない。勇者が魔王に負けるなんてあってはならないんだ」


 ガタガタと震えながら勇者はそんなはずはないとつぶやく。


「そうだ、これは魔王の罠だ。俺が負けるはずがないんだ。これは幻術だ。そうだ、早く目を覚まさなければ」


 そして現実を受け入れることが出来ず、都合の良い夢を見ようとする。


「残念ながらこれは現実だ。お前は敗れ去ったのだ勇者」


 とそこに玉座の陰から一人の女性が現れた。

 その人は信じられないほどの美貌を持っており、品と覇気を持ち合わした絶世の美女であった。


 ー▽ー


「お母さん」


 その美女は養子となった私のお母さんであり、本当の魔王だ。


「見事だミコト。ついにやったな」

「うん。ありがとう。わたしのわがままで見守っててくれて」

「なに、娘を見守ることも母の役目だ。私はうれしいぞ。お前がこんなにも成長してくれて」

「お母さん」


 思わず涙が出そうになる。

 あの時、初めてお母さんに出会ってからお母さんはずっと私を見守ってくれた。

 血もつながってない、しかも勇者の娘である私を本当の娘のように想ってくれてて。

 今回の戦いだって、自分で決着をつけたくて手出しが無用と言って受け入れてくれた。

 感謝してもしきれない。


「さて、あともう一息だ。私はここで見守っている。頑張れ」

「うん」


 もうすぐ、このキチガイから解放される。

 全ての元凶であるこのキチガイが死ねばもう不遇に生まれてくる子もいなくなる。

 洗脳される人もいなくなる。


「う、美しい」

「は?」


 いざ、過去に決別せんとしたとき、キチガイが顔を上げて何やら言い出した。


「なんて美しい人なんだ。こんなところで出会うなんて。やはり俺は勇者だ。こんなところで魔王なんかに負けるはずがない。さあ、そこの美しい人。俺を助けてくれ。そして俺と愛し合おう」


 何を言っているのこのキチガイは。

 支離滅裂なこともさることながら、私のお母さんに何を言っているの。

 しかもこいつ。


「残念ながら私に魅了や洗脳は効かないぞ」


 そう、よりにもよって私のお母さんになんてことをしようとしているの!!


「私の大好きなお母さんになにしようとしている!!」

「ごふっ」



 思わず怒りでキチガイを蹴り飛ばしてしまう。


「お前みたいなキチガイにお母さんを渡すものですか!! さようならお父様。本当に大っ嫌いでした」

「ま、まて」


 これ以上何かを言う前にキチガイの首を切り落とす。

 ふう。終わった。

 初めて人を殺したけど、特に罪悪感もないわね。

 まあ、相手はキチガイだったし。


「今度こそ終わったな」

「うん。お母さん大丈夫?」

「ああ、さっきも言ったが私にあんなのは効かん」


 そっか。よかった。

 ホッとしているとお母さんは私を優しく抱きしめた。


「いままで本当に頑張ったな。お疲れさま」

「うん。ありがとう。私頑張ったよ」


 今度こそ涙があふれてくる。


 思い返せば苦労の連続だった。

 お母さんがいなければこんなにもうまくいかなかった。

 本当にお母さんのおかげ。


「お母さん、ありがとう。大好き!!」


 そう言って私はお母さんに抱き着き返した。



 それからしばらくした後は、倒れている母親たちをあの城に送り返した。

 城では阿鼻叫喚であった。

 キチガイが死んだため、キチガイの嫁たちにかかっていた魅了や洗脳が解けたのだ。

 可愛そうではあったが、私はすぐさまに城から離れた。

 流石に、彼女たちを助ける気にはならない。

 私が守りたかったのは弟や妹たちであって彼女たちではないのだから。


 そして、その弟や妹たちは魔族領で平和に暮らしている。

 私が魔王の娘となっているおかげで迫害を受けていることもない。

 戦闘の駒に育てられることもなく、キチガイの性奴隷として育てられることもなく、ちゃんとした環境でちゃんとした教育を受けさせてあげられる。

 キチガイが心出し、これ以上被害者は生まれてこない。

 ただ、またキチガイ染みた勇者が召喚されないように向こう側に働きかけなければならない。

 お母さんたちは訳あって魔族領から離れられないが、私なら問題ない。

 きっと役に立てるはず。


 まあ、ひとまずはお城でゆっくりしましょう。

 そもそも私まだ子供だし。

 なにかするにしてもじっくりやっていきましょう。

 ひとまずは親孝行でもしようかしら。



まあ、そんなに長くはないですが、これで終わりです。視点がコロコロ変わるので中編小説にしてみました。いろいろと設定は考えたのですが、途中で書くのが面倒になったので完結だけはしようとがんばりました。最後までお読みいただいでありがとうございます。


では、恒例の人物紹介。


ミコト(ステラ):勇者の娘で転生者。キチガイの父親の元で生まれたが転生者としての知性があったため危機感を感じて行動した。そして、魔王の娘となった。素質はあり、研鑽を積んだため、勇者を上回る力をつけた。まだ発展途中。魔王大好きっ子。ステラはキチガイにつけられた名前のためあまり好まずミコトで通している。


魔王:ミコトの姿に感銘を受けて娘にした。超絶美女。ミコトの事は本当の娘のように愛している。歴代の魔王の中でも最強の力を誇っており、キチガイ勇者程度なら普通に勝てるため、ミコトが戦っているときはもしものために後ろで待機していた。


キチガイ勇者:キチガイ。異世界に召喚され、急にチートじみた力をつけたため、何をやっても許されると思い、ゲームと現実との区別がつかなくなってキチガイとなった。しかし、ミコトからすればどんな経緯があろうとキチガイの危険人物。

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― 新着の感想 ―
[一言] もっとキチなアホなろう勇者を苦しめぬいてコロコロしてほしかったな。
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