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異世界ガクブル半隠遁  作者: 尾中垂太
乙女の身嗜みがととのうまで編
9/26

餌場

間に合ったー!!

見に来てくださっている方々ありがとうございます!!



あれから数日、石鹸と着替えが無い以外はそれなりに暮らしてる品川裕子です。


しかし最近かなりの頻度での独り言が増えてきてしまっている。

今もほら。


「肉が食べたい・・・無理なら卵でもいい・・」


そう肉。肉が食べたいのだ猛烈に。

しかし二週間以上この山で生活しているが生物に遭遇したことが無い。

魚とクラゲは除いてだけど。


何でもこの山は地球で言うパワースポット的な場所らしく、古くからいる独特の進化を遂げた生物しかいないらしい。

それだけでも嫌な予感がするってのにどうやらその中でも肉食や雑食の奴らは人間どころかモンスターも食べるという。

うげぇ。

いや弱肉強食ってわかってるんだけど、弱者の立場になるとなんていうか・・・。

食べられたくないし、むしろ私も肉を食べたい。

ちなみに独特の進化ってのは魔力だけで生きていけるとか、知能が高いとからしい。

すげぇなおい、リアルで霞み食って生きてける生物ってどんなんだよ!


そんな奴らばっかだからこの山は生態系としてかなり可笑しなことになっているという。

小動物が全くいない。

個体数が少ない。

そして虫も異様にデカイ。

生態系の一番下となる動物がいなく、普段は皆して山の魔力を食べて飢えを凌いでいるらしい。

山にいる生物同士で共食いしようものなら、弱ったとこを勝者も敗者もあっという間に第三者に食べられる。

なのでどうしても肉が食べたくなったら近くの村からつまみ食いをしたり、モンスターを山に誘導すると。

どうやらこの間見たゴブリンも誘導された口らしい。



これらの事を教えてもらった時は心臓が止まるかと思った。

正直、もう無理だ、と。

しかしながら私には大家さんこと、大精霊様々の加護がついている!

これにビビッて獣どもは私に近寄れないと知った時は久しぶりに泣いたものだ。

獣もそうだけど巨大な虫とか現代っ子が見たらトラウマものだと思う。

ただでさえこっちはゴブリン事件から度々、夢に見て飛び起きるのだから。

トラウマはお腹いっぱいです。

村は・・・まぁあれだ、可哀想だとは思うけど今の私の状況の方が可哀想って事で勘弁してほしい。


「と、完成~。」


うんうん。今回の回復薬もいい感じに仕上がった。

もう私の職業はポーション職人でいいんでないか。

慣れた手つきでビンに詰めて【写真収納おどうぐばこ】へ。

回復薬のストックは全部で13個。

ここ数日、暇だったし毎日のように作っていたが鍋が小さいため数はあまり作れなかった。


音楽を聴きながら次に何をしようかと考える。

そう、ここ数日あの胎教育成と名前が変わっていたアプリを使用しているのだ。

しかし効果というかそういったものが一向に判らずにいた。

やはり妊娠していないとダメなのか。


他にも電話やメールも使え無かったし、SからMに変わったテレビ電話アプリも同様。

電話帳はもちろん、適当に押してもうんともすんとも言わないのだから困った。

ああ、もうそろそろ充電が切れてしまうし充電するかな。

このスマホの充電もここ数日で自力でできるようになったことの1つだ。

私自身の魔力で充電。


そう!魔力!!


驚いたことに地球産の私にも魔力があるのだ。

しかもその量は一回の充電で魔力のほとんどを使ってしまうという大変貧相な量だった。

がっかりしたけどこんなもんだろうとある意味で納得。だって私、主人公の器じゃないし。

それにチートで俺TUEEEEEプレイをやりたい願望もないし。

ていうかこのスマホ自体がチートじゃね?と思ってたりする。

でもまぁ、これぞ自家発電ならぬ自家充電!なんちゃって。


スマホに魔力を注ぎ昼の準備をする。

魔力を使うとお腹が空いた気がするのだ。



料理用の鍋に水を注ぎ火にかけ、魚の一夜干も炙る。

沸騰したらそこにアク抜き済みの山菜とキノコを入れて火を通す。仕上げに塩で味付けて完成。

魚は食べてるうちに焼けるだろう。


「いただきます」


質素で素朴な味わいだ。

悪くはないんだけど肉的な油分が欲しいな切実に。


「うーん、やっぱり肉を食べるまで諦めらんねぇ。焼肉焼肉・・・」


ブツブツ言いながら昼食を摂っていると小屋の戸を引っかく音がした。

溜息をついて窓から外を覗くと子犬と子猫が数匹すでにスタンバっていた。

・・・相変わらずいい鼻をお持ちな事で。


写真収納おどうぐばこ】から魚の頭を取り出しなるべく遠くに投げる。

すると凄い勢いで子犬と子猫が投げた方へと群がっていく。

ここ数日この餓えっぷりを見ているがドン引きだ。

野生丸出し、ついでに牙と爪も丸出しで争いながら頭を奪い合う。

この図を見てしまったが最後、動物が怖くて近づけない。

いくら普段が可愛くても無理無理無理。

なにあの牙と爪!超怖い。

此方に来てから着実にトラウマは増えていくのであった。


次に昨日の夕飯だった焼き魚の背骨を投げる。

ドドドッとそちらに向かう群れ。

それを見ながらこの動物達にあった時を思い出す。



***********************************************


思いがけず魚をゲットした私はもう一度湖に向かった。

久しぶりに食べた魚は美味しかったのだ。そう、もっと欲しくなるくらいに。

湖に着き、早速水球を出してもらう。

精霊さん達にはあらかじめ魚が食べたいという事を伝えているため彼等は張り切っている。

・・・どうやら新しい遊びと勘違いしているらしい。


小屋から持ってきた麻袋を湖につける。

今回は水じゃなくて魚が欲しいため、1つづつこの中に水球を入れてもらう。

張り切っているためか前回よりも多く魚が集まってご機嫌な私。

大小合わせて21匹と大量大量。

鼻歌を歌いながら魚の入った麻袋の中をニヤニヤしながら眺める。


「やった!これで毎食魚が食べれ・・・え?」


影。影が私にかかっているのだ。

獣臭いの表現で合っているのか判らないがなんか臭い。

とにかく洗っていない犬の臭いをもっと強力にした感じの異臭がする。

後から知ったが、影がこんなに近づくまで異臭に気がつかなかったのはどうやら風向きが関係しているらしい。


影の持ち主を刺激しないようにゆっくりと後ろを向く。

瞬間、突然の突風。水飛沫。

え!?いったい何がなになになに!?

瞑ってしまっていた目を開けるが何もいない。それどころか背を向けた湖からゴポゴポと嫌な音がする。

恐る恐る振り向き、湖を覗きこむ。



・・・透き通った湖の中でクラゲにがっちりと絡みつかれながら、でかくて赤い熊が溺れていた。



ええぇっ!?ちょ、クラゲ!?

助かったけどなんていうか、うわぁ。

私的異世界癒し系NO.1のクラゲが熊を食っている・・・。うわわわ。

さっきまでの恐怖やらなんやらが一気に吹き飛んだ。

そうだ!本格的なお食事風景を目撃する前にこの場を去ろう!


「ありがとう!失礼しました!!」


大声でお礼を言って重い麻袋を抱え込んでダッシュでその場を離れた。

驚異的な速さで小屋まで向かっていると、何やらガサガサと音が聞こえる。

ど、どうしよう!

この山の生物は私に手を出せないが、誘い込まれたモンスターにはそんなの関係ない。

私なんか一口で食べられてしまうだろう。

また、音がする。

とっさに麻袋の中から魚を一匹投げた。

数瞬の間、音は魚を追って離れていく。それも複数。

こ、怖い怖すぎる!!

べそをかきながら走って走って走りまくって、小屋に着いて安堵から超号泣。


しばらくしてから我にかえり魚を捌き始める。

もちろん泣きながら。

魚は多少鮮度が落ちてしまったが命には代えられない。

鼻を啜りながら20匹分の一夜干の準備を整えた。

あたりは薄暗くなっていた。


「もう今日は晩ご飯いらない・・・寝よう」


今日はもう色々とショックすぎて頭が回らない。

窓を閉めようとして気づく。

暗闇に光る複数の目、目、目。

汚い話、ちびりそうになった。囲まれてると知ってそれぐらい怖かった。

半狂乱になった私は精霊さん達にお願いした。


『家周辺を明るくして!!』


拳大の光球が現れ辺りを照らすと、そこには驚いて固まる子犬と子猫がいたのだった。




************************************



あれ以来この子達はご飯時になると餌をねだりにやってくる。

どうやら魚を投げつけた時に餌をくれる人認定をされたらしい。

毎回あげるわけじゃないけどなんだかんだ言って一日に1回はあげてる。


「今日はもうお仕舞い!」


そう叫んでとっておきを投げる。

とたんにとっておきを奪い合いながら遠ざかっていく物音、時折吠えたりするのも聞こえる。

かなり本気で奪いあってんなあの子達。


とっておきとは魚の内臓と少しの身、それと生臭さを消せそうなハーブっぽいのを磨り潰して焼いた物である。

見た目はいわしハンバーグみたいな感じだ。

【他人の知識《レシピ集》】に載ってたので作ってみたらかなりの大好評。大うけである。

いやぁ作ったかいがあった。



焼きあがった魚と温くなった山菜汁でお昼ご飯を再開する。

ああ次は何をしようかな。



ちなみにいわしハンバーグもどきは獣の調教用の餌という設定だったりします。

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