ある仔犬の体験談
こんにちは!初の感想がもらえて狂喜中の尾中です!
今回はお犬様のターンです。
ああ、腹が減った。
強烈な飢餓感で目覚める。
傍らの兄弟達を見ると皆も同じ気持ちだったようで、此方を見ていた。
思念を飛ばし伝える。
『さぁ兄弟達よ!飢えを満たしに行くぞ!!』
獲物を狩りに行くのは実に久しぶりだ。
この山に居る生物は魔を喰らう。
しかしそれは成体と成った者のみ。
己達のような幼体には魔力は強すぎて毒となる為に多くは摂取できない。
摂取出来なくば、餓える。
飢えを満たすには獲物を喰らってその力を己が力とせねば成らんが、悔しい事に己等はまだ幼体。
この山では多種族の幼体等は成体にとっていい食料となる。
外に狩りに出たとしても碌な獲物が居ない上に、最近では麓の人間供も知恵を付けてきている。
痩せた人間など大して美味くも無いが、糧としては十分だったのだが…。
遠出しようにも、山の魔力をこまめに取らなければ成体には成れない。
己が生まれ落ち30年。兄弟達と共に成体と成るにはあと20年程だろうか。
獲物を探しながら兄弟達の様子を伺う。
己も含め、餓えから痩せた身は幼体であることを差し引いても小さい。
早急に獲物を喰らわねば、死が近い。
魔力に毒され餓える、更に幼体が生まれにくい。
この山に生物が少ないのはこれ等が理由なのだろう。
現に己が種の幼体は己等3個体のみ。成体も片手で数える位だ。
果たして己は生体と成れるだろうか。
頂きへと向かった兄弟からの合図。
どうやら獲物を見つけたらしい。
兄弟の元に駆け付けると、同じ境遇の古猫種の幼体と睨み会っている。
彼等は古犬種よりは力に劣るが知に優れる。
だが己等からすれば知識で腹は膨れず意味無き物だ。
どうやらそんな奴等が誘い込んだ熊を奪おうとしてこうなったという。
だが、肝心の熊が居ない。
辺りを確認するが少なくとも近くには居ない。
己が探していると古猫種も気付いたのか焦り始める。
獲物を逃すよりはと、争いを辞めて熊を探す。
熊は簡単に見つかった。
どうやら水を求めて湖に行ったらしい。
湖…彼処には神代の時からの化物が棲んでいる。
数多くの足と毒を持つ奇怪な色を持つ化物。湖に近付くと直ぐ様その足で引きずり込むのだ。
故に山の生き物は湖に寄り付かない。
熊は諦めるか…。
その場に居た全てが悔しさで歯噛みする。
その時、
「失礼します!!」
声と共に何かが此方に近づく音がする。慌てて身を隠す。
_____人間だ。
兄弟達が驚喜し狩りを開始しようとする。
だが、おかしい。
古猫種は驚いてはいるが・・・あれは、怯えている?
もう一度人間を観る。
あれは!?
近付こうとした兄弟の足元が音も無く抉れる。
慌てて飛び退き、古犬種は元より古猫種も逃げに入る準備をする。
精霊は敵に回すと危険だ、兄弟に警告だけで済んだのは不幸中の幸いというべきか。
恐らく人間が争いを嫌がった為だと、後から古猫種に知らされ初めて人間に感謝した。
精霊を警戒していると人間が何かを投げた。
思わず血臭がするそれに向かって走る。
しかし古猫種が素早くそれを咥えて走り出す。
奴等!持ち逃げする気か!!
兄弟達と古猫種を追い、駆ける。
獲物を咥えた奴等には直ぐに追いつく事が出来たが様子が可笑しい。
急に取り乱した理由をを問い質すと、こう答えた。
曰く、人間が投げたのは魚と言ってあの湖の生物らしい。
曰く、あの湖の魚は栄養価が高く、そして美味である。
曰く、魚は湖の化物が独占している。
何故その魚の事を知っているのかと問うと、遥か昔から言い伝えが古猫種の中であるらしかった。
湖の魚は古猫種にとって憧憬の対象であり、力の象徴だと。
栄養価が高い。それは含んでいる魔力も多い事を意味する。
魔力は獲物を通して吸収する分には害が無い。
そして其処まで言われると俄然興味が湧いてくる。何せ己等も餓えているのだ。
距離をジリジリと詰めると、質問に答えた黒と茶と白の色を持つ古猫種がポツリと鳴く。
『精霊の意思に従い、獲物を共有しないか』
飛んで来た思念に少し考える。
あの人間は争いを嫌がり、精霊はそれを受け入れた。
人間が己等に与えた糧を巡り争うのは精霊の意思に反する。
ここは共有するのが吉。
『是。己等も精霊の意思に反する気はない』
思念を飛ばすと古猫種が頷く。
今まで狡賢く薀蓄を垂れ流すばかりの臆病者ばかりだと思っていた古猫種だが案外話の解る奴等だ。
こうして我等は魚を共有する事となった。
精霊さんの警告は品川さんは知らないです。
犬猫が逃げようとした音で初めて接近を知ったと・・・。
ちなみに、古犬種と古猫種は山犬と山猫がこの山仕様に進化した種族です。
生物が育つにはハードな環境な為、皆必死なのです。
犬ときたら、次回は・・?




