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異世界ガクブル半隠遁  作者: 尾中垂太
本編の続き
26/26

人格者の孫

遅れてしまいすいません!

今回やっと山以外です(笑)

商人であるダーズさんとはなんだかよく分からない内に商談が進んでいった。

嘘ですごめんなさい。

村長さんがベラベラと村の内情を捲し立てて、シュゼ君がドアの前でガン飛ばしてた一部始終を見て惚けたくなっただけだ。

ようはあれだ、商人のダーズさんが話を断れないようにって事だ。ははは…。


そう考えるとシュゼ君が最初にダーズさんにポーション持ってたのも臭い。

ダーズさんが責任者の商隊だとしても、あの場には他に商人がいたのだ。なのに真っ直ぐにダーズさんとこに行った。

その様子を見るに計算…なんだろうなぁ、うううっ…異世界の若者怖い。



半泣きのダーズさんに同情するも現金は欲しいのでありがたく商談にのっかる事にした。

ポーションもとい、下級回復薬二十本をダーズさんに納品。

今度のは効果はちゃんと調節してあるから、通常の物より少しいい位に出来上がっている。

代金は本店のある商業都市アルバニアにてシュゼ君が受けとる手筈だ。

もちろん他言無用である。

そこら辺は私よりも村長さんが気を張ってるから心配ないだろう。多分。


ダーズさんを盛大にビビらせてからの商談だったがさすが商人。

ちゃんと自身の商会の取り分を主張しつつ、此方も納得できる額を提示して来たのにはただ驚くばかりだった。


誇りをもって働くおじさんは凄いのだ。



ポーションの代金はしめて金貨二三枚ちょい。

それが日本円換算でどのくらいの価値があるのか分からないから、いまいちピンと来ない。


なのでシュゼ君にアルバニアでも買い物を代行して欲しいと告げる。

そしたら自分が代金を管理すると知ったシュゼ君が青ざめてセリアちゃんに助けを求めた。

そのくらいの大金らしい。


「金貨二三枚…無理だ!セリアっ!ここは双子らしく責任も二つに分けるぞ!」

「え!?嫌よ!半分にしても十枚もあるじゃない!私を巻き込まないでよっ。意気地無し!」

「意気地無しでも弱虫毛虫でもいい!セリアは心が強いから多目に持たせてやるよ!!」


仲良き事は美しきかな。

こうしてセリアちゃんもアルバニアに同行することになったのだった。

ついでに双子はアルバニアで短期の出稼ぎをするらしい。

若いのにいい子だ!と、ちょっとホロリときた。


カブリスさんがセリアちゃんの同行を渋ったので帰り道は心配しないでと伝えておいた。

ふふん、私はアフターケアがちゃんと出来る女なのである!…やるのは精霊さんだけど。

大精霊さんにお伺いを立ててみたところ、帰りは双子と荷物だけだから転移魔法を使うとのこと。



少し気になったので村長さんにメールを送ってみた。


『シテーゼドランからの出入りは自由なんですか?』


忘れがちだけどここの人達っていわゆる政治犯とその親類。

なんかしらの制約がないとおかしいと思ったのだ。


『シュゼとセリアは罪を犯したわけじゃないからのう…まあ、黒に近い白ってところじゃ』


なるほど。

あまり深く聞かない方がいいな。

なんか危ない気がする。


ちなみにこれは後日知ったことだ。

シテーゼドランの住人には何段階かで行動を制約する魔法だか魔術だかがかけられてるらしい。

ちなみに村長さんは村から出たら一発で即死らしい。

一見してお茶目なお爺さんなのにいったい何やったんだ。


そんな人達を一ヶ所に集めるとか私的には駄目だと思うんだけど…。

暴動とかそんな方面での不安感が半端ない。

私には今のところ優しいので問題ないが世間一般の人は恐怖を感じないのだろうか?


ちなみに我が品川家では善人でも政治と宗教と野球の話をふってはいけないと言われて育つ。

曾祖父の遺言らしい。曾祖父の身にいったい何があったのか此方の方もかなり気になった。


気になる事だらけだが知ってもどうしようもないし、もういいや。

やめやめ。

問題があったとしたらこの世界の支配階級の皆様が何とかするのだし、私には関係ないない。



今はアルバニアでの情報収集を兼ねたショッピングを楽しむ準備をしなくては!




鼻唄を歌いながら大きな布に印をつけていく。

ごわごわして分厚い布の本来の用途はシーツらしい。

あまりのごわつきっぷりに今は使っていないのだ。

今はなんかのモンスターの毛皮の上に寝ている。

精霊さんに頼んで虫の排除やら毛並みを整えて貰ったりとかの加工済みだ。

頼りすぎと言うなかれ痒くなるのは嫌なのだ。

ついでに消炭くんに声をかけたのだ速攻で逃げられた。

あれ?普通は猫の方が水を嫌がるんじゃなかったっけか…。

生き物を飼ったことがないからなんとも言えないけども。


小屋にもとからあったシーツはまだ幾つかあるし豪快に生地を使っていく。

10日もあるし時間は十分。

だって暇だし。



「異世界で金持ちかぁ…」


赤い花から作った染料をかき混ぜながらまだ見ぬ金貨に想いを馳せる。


お金は好きだ、そりゃもう大好きだ。

愛とお金、欲しい比率を答えてくださいと言われたら2:8と迷わず数値を振り分けるだろう。

愛とは維持するのにお金がかかるとは私の持論である。


でも、異世界でお金ばっかり持っても仕方無いんだよなぁ。

だって私の欲しいものが必ずしもこの世界にあるとは限らないし…。

まあ、無いよりはある方がいいけれど。


当たり前の様に作っていたが、赤い染料の作り方は【レシピ集】から調べたものだ。

ドロリとした赤い液体で布の一部分を染める。

あとは少しだけ乾かした後に洗って、他のパーツと縫い合わせたら完成だ。


私の力作が完成したのはシュゼ君とセリアちゃんがアルバニアに旅立ってから一週間以上がたってからだった。



写メを撮って双子のもとに送った。

その際にメールで、


『買い物の時はこれを使ってね。赤い丸がある方が外に見えるようにね』


きなりの元シーツの表面には真っ赤な丸が一つ。

上部には大きめに I LOVE 地球!!


品川裕子作、日の丸トートバッグである。

一応、シーツを二重にして丈夫さをアピール。

上の部分をファスナーの代わりに紐で口を絞れる仕様になっていて、スリ対策はバッチリ。


だけど私なら恥ずかしくて絶対に持ちたくないほどダサい一品である。

はっきり言おう、ダサい。

それが二つ。

シュゼ君とセリアちゃん用である。

どんな時も私は公平なのだ。


一応、漢字と英語を使ったのでそこら辺の生活圏の人がいた場合は反応してくれるだろう。

ううむ、他言語は知らないのが悔やまれる。


少し歪んだが、ダメで元々だしこの位のクオリティーで十分だろう。

ちゃんと使えるし大丈夫、大丈夫。

まだ始まったばかりだしきっとこれから上達することだろう。

うん。裁縫って奥が深い。


時間だけはあるのでついでに小さい巾着も作成してみた。

こちらはシンプルにこう書いた。


[ワレワレハ地球人デアル!!]

完璧ネタである。

しかも日本語だから日本人にしか通じない。



アプリを起動してのぞき見ると、私からのささやかなプレゼントに驚きながらも不思議な模様だと首を捻るシュゼ君とダーズさん。


『気にしないでください。ある種のお呪いですから』


そうメールすると若干引きながらも納得してくれたようだ。

よかった、ダサすぎて持ち歩き拒否という事態は免れた。


しかし別方面での問題が急浮上した。

サムライガールのセリアちゃんである。

いつだったか見た夢のサムライガールと激似である。多分、本人。

初めて村で見かけた時は一人で気まずい思いをしたのは良い思い出だ。


気まずいついでに勢いで魔具となった新羊皮紙を渡してしまったのも良い思い出としておこう。

本人からの希望もその時点であったのだし、丁度よかったのだ。


さて、そのサムライガールがなんだかちょっと嬉しそうなのだ。


そんなセリアちゃんをシュゼ君とダーズさんは微笑ましげに見ている。

ちょっと、なになに?

憂さ晴らしに双子にネタ装備を強要した身としては非常にいたたまれない事態だ。



『あのー、片割れさんどうしたの?』


セリアちゃんには直接聞きにくいのでシュゼ君にメールを送信。

メールを見たシュゼ君はにやにやしだした。


「セリア~、シナ様がどうかしたかって」

「えっ!?シナ様いま見てらっしゃるの!?」


からかうようなシュゼ君に慌てるセリアちゃん。

真っ赤な顔をしてガリガリとメールに返信を書き始めた。


『お礼が遅れてしまって申し訳ありません。この度は素敵な袋を賜りまして…』


長い。

読んでいるうちにもまだまだ届くお礼文に恐怖さえ抱き始めた頃、シュゼ君からメールがきた。



『俺たちこの間、成人になったんです。それでセリアが勘違いしてしまって。すいません、いま訂正しますんで』

『まった!』

「へ?」


うおー!

数日前の自分殴りてー!!

成人のお祝いに素人作のダサすぎるトートバッグって!うわー!

お祝い用に作ったやつだったら気持ちだよね!?ですむんだけど、これ違う!

どうすんよ!?どうしよう!?

セリアちゃん喜んでまだまだお礼文を送ってきてんよ!?

今更、ちょっとした出来心でしたとかって気まず!言えねーっ!


しかもシュゼ君も分かってると言いつつどことなく嬉しそうなのだ。

嬉しいよ!そりゃ嬉しいよ!!

だって成人!おめでたいもんね!?


「それだけに自分の悪行が際立つという…。たしかこの子達、高校生位だよね?大人としてこの仕打ち。うわー、自分ないわ~…」


自分の時は何を貰ったっけ?

えーと、たしか母からはiPodで父からは新しい自転車だ!

ちょっ、余計に自分があげた物が残念すぎる!


…。


セリアちゃんはまだガリガリとお礼文を作成中である。


…。


シュゼ君は返信を待ちつつ楽し気に巾着の文字をなぞっている。


…。


やりなおーし!

大人としてちょっとアレだったからやり直そう!もう一回。


『今回のはお祝いの品じゃないんだ』


一回区切って双子に送信!

テンションがた落ちの双子に非難するような目で私を探すダーズさん。

いや、これから!これからだから!


『まずは成人おめでとう。これからは大人の一員として子供達のお手本になるよう努めてくださいね。

アルバニアに着いたらこれからの自分に必要だと思う物を何でもいいから一つ選んでください。それが私から二人へのお祝いの品とします』


送信!どうだ!

良いお手紙っぷりだろう!?

といっても祖母から貰った手紙の一部を丸パクりしただけなんだけど…。

良い文なんて思い付かなかったのだ。

ちなみに祖母はご近所で人格者として有名なのだ。

惜しむらくはその人格者っぷりが孫に受け継がれてないことだ。

本当ごめん、ばあちゃん。



メールを読んだ双子はどことなく引き締まった表情をしていた。

ダーズさんはそんな双子を涙ぐんで見ている。

どうやらイメージダウンを防げたようだ。


「よーし!狙い通り!」

『どこがにゃ。見栄張りすぎだにゃあ』


三毛猫がなんかいってるけど気にしない。

だって私が知ってる猫ってしゃべらないし。

きっと幻聴だろう。そうだろう。





それから数日後。

商隊はあっさりと商業都市アルバニアに到着。

その間に精霊さんがなんかしたらしくて何回かメールでお礼がとどいた。

いったいなんのこっちゃ。

とりあえず私には関係とだけ言っておいた。


ウキウキとしながら【精霊監視網≪おみとおし≫】を起動する。

精霊さんにお願いしまくってセリアちゃん達と行動を共にしてもらったのである。


初めて見るアルバニアは商業都市と言うだけあって栄えていた。

格式のありそうな老舗から道端の露店商や屋台まで様々である。

それぞれの店の規模で区画整理されており、アルバニア初心者にも安心ってなぐあいだ。

なんでもアルバニアに初めて来た人は、膨大な数の店と人の波、綺麗に舗装された石畳に驚く、らしい。

かくいう私も驚いた。


「ああ、人間って素晴らしい…」

「にゃあに言ってるにゃ、最近のシナは布を切り裂いたり、ひどい臭いの赤い汁を煮詰めたり、奇行が目立つにゃ!」


よほど染料がキツかったのか、あれから三毛猫はチクチクと嫌みをいってくるのだ。

まあ、確かに染料は臭かった為、甘んじて受け入れているが…。

あれ?そう言えば最近仔犬達を見てないような…。



そんなこんなで昼間は商会や冒険者ギルドで働く双子を他所に、私はアルバニア探検である。


色々と珍しい物があって楽しい。

が、時おり見える路地裏から表通りを見て隙を伺う浮浪者。

バイトを探したりスリをしようとする汚れた子供。

どうやらアルバニアは貧富の差が激しいらしい。


「うわぁ…アルバニア…」

「別にここだけじゃにゃい。助けたくば助ければいいんじゃにゃいか?」

「いや申し訳無いけど無理。面倒見れないし自分が一番可愛い」

「…正直だにゃあ」


と、各方面から御叱りを受けそうな事を話していると、怒鳴り声とガシャンと何かが割れる音が遠くからした。


「喧嘩?」


精霊さんが音の方へと移動した。

どうやら奴隷市らしい。

現代っ子的にキツいのだが精霊さんはお構いなしに映像を映す。

地面に引かれた布の上に首輪をはめた奴隷達がいた。

小さい子からお年寄りまでかなりの人数が並んでいた。


うーうー、唸りながら映像を見続ける。

どうやら奴隷の男性が殴られて、倒れこんだ音だったらしい。

ううっ、異世界って怖い。

そして殴られた男性も超怖い。


そう、男性も怖かったのだ。


長身に痩せた身体はまだ良くない、けどいい。

顔色が土色で何だかヤバそうなのも良くないけど、まだいい。

ギラギラと光るイッちゃってる眼差しもこの男性の心境を思いやれば、まだいい。


だけど!

だけどね、なんで頭に!垂れたウサ耳がはえてんのっ!?!?


『ああ、兎の獣人だにゃあ。耳が垂れてるから個体としては弱いし不細工だから売られたんだろうにゃあ』

「えええぇえ!!?垂れ耳だと不細工なの!?あの人格好いいじゃん!?」


そうなのだ。

ウサ耳男性はそこそこ格好いい顔をしていた。

涼しげっていうかクールっていうか、独断と偏見だが恋に恋する年下の子が彼女ですって感じの顔だ。

すいません。全国の涼しげさん悪気はないんです。


それが痩せすぎな身体とヤバイ顔色とイッちゃってる目付き、そしてウサ耳で台無しとなっていた。

あれ?こうして見ると台無し理由がウサ耳だけじゃない事実。ああ現実って厳しい。


「獣人はそれぞれの種で美醜が独特だからにゃ、シナが驚くのも無理はにゃいにゃ。それにあの奴隷には尻尾がにゃいにゃ。大方喧嘩でもしてむしられでもしたんだろうにゃあ。嗚呼にゃると流石に哀れだにゃあ…」

「あ、ほんとだ。尻尾ない」


三毛猫と二人、なんとなくウサ耳男性を暫く見つめた。

男性はどうやら客と口論となり、奴隷商人に殴られたらしい。

殴られるのは痛い。

眉をしかめて同情心がより一層育ちかけた時に、初めて男声が口を開いた。


「ババアに興味はないっ!俺はイケてるウサ男だぁああ!!」


同情心は溶けて消えた。


言われた女性客は怒りに震えていた。

冒険者風の女性は多目に見ても二十代半ば位。

ウサ男は二十代後半。

この歳で女性客がババアなら…。


「チャンネルかーえよっと」


けっ!胸くそ悪いもん見たぜ!とばかりに視点を切り替えてショッピングを続けるのであった。



◎補足◎

シテーゼドランから一番近い町は監視用の人員が駐在してるので、ほぼ素通り設定です。

10日と表記してありますがこれは異世界育ちの異世界っ子が 馬車で移動しながらの距離なので、品川さんが徒歩で移動となると残念なほどに時間がかかります。


◎補足2◎

兎の獣人は耳がピンと立っていて前歯がしっかりとした人が好まれる模様。

周囲の他種族は、不細工不細工と自種族に言われている獣人をみて「ああ、こいつ不細工なんだ…」と思い込む罠。

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