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異世界ガクブル半隠遁  作者: 尾中垂太
番外その1
20/26

一夜干しの行方 前編

リクエストありがとうございます!

文字数が多くなってしまったのでまずは前編です。

どうしようもらっちゃった…。



シルヴィは困惑していた。

うっかり遊ぶ約束をしてしまった銀の古猫種に置き去りにされたかと思いきや、戻ってくるなりお土産だと言って包みを渡そうとして来たのが原因だった。

そのあまりの唐突さに、山に入ってから流れ続けていた涙は止まってしまった。

どうしたらいいか分からずに硬直するシルヴィ、焦れた古猫種が再度包みを押し付けるようにして持たせる。


はっ、としたシルヴィは包みをまじまじと眺める。


包みは大きい。いや大人からしたらたいした事の無いサイズだが、小さいシルヴィからしたら十分運びごたえのある大きさだ。

中身を目の粗い布で包んだ後にとてもきれいなハンカチで中央をぐるりと一周してある。


『ごほっん!』

「あっありがとうございました!でも…」


貰えない、そう続く筈だったシルヴィの言葉は遮られた。


『心配するにゃ、その包みの対価は求めにゃいにゃ』

『ええ。それにこの包みはシルヴィへの御褒美でご家族へのお土産だと、シナからの伝言ですわ』


「……」


『包みの中身は薬と魚にゃ。

薬はその怪我に、魚は家族宛だとにゃ』

『わたしたち怒られてしまいましたの。

危ないことをさせてはいけない、と。シルヴィ、泣かせてしまったのね。ほんとうにごめんなさい』



シルヴィは混乱のあまり言葉が出てこずひたすら頷いた。何か話そうとしてもモゴモゴと口が動くだけで言葉にならないのだ。


夜寝ないと古猫種が来て朝を隠してしまう。

村の大人達からそう言われてる存在に謝られた。

シルヴィは十歳だ。それが悪い子を脅かすための話だと知っているし、話の全てが嘘ではないということも理解していた。

そんな存在に謝られた。

衝撃に立ち直れずにいるシルヴィに古猫種達はなおも話を続けた。


『今後は放置しにゃいと誓うにゃ。

シナが帰せと言うしにゃ、今日はもう帰っていいにゃ』

『シルヴィこちらよ、姉妹達が転移の準備をしているの』


そう言って銀色の古猫種が歩き始める。それに着いていこうと足を動かしたシルヴィは、ふと思った。


物をもらったら何て言うの?

お友だちのおうちから帰るときのごあいさつは?


反射的に三毛の古猫主の方を向いて話し出していた。


「ありがとうございます。

今日はおじゃましました」

『ふむ、またくるにゃ』


そう言って古猫種達はくるりと向きを変えてシルヴィの前から居なくなった。

うるさく跳ねる心臓を貰った包みで押さえつけるかの様に抱きしめる。


シルヴィの耳が機嫌良さそうにゆれる。

行商人が来た時にしか食べられない魚はシルヴィの大好物なのだ。それに最近は行商人が村に来る回数が減ったために食事の量自体も減っている。

そんな時に魚を貰えるなんて嬉しいなとニコニコ顔のシルヴィ。



お魚はみんなで食べよう!



そんなシルヴィの様子をうふふと優雅に笑いながら銀の古猫種は先を促す。

それに着いていきながらシルヴィは緊張からぼーっとする頭で更に考える。



よかったぁ。ちゃんとおれい言えた。

でも…どうしよう。

お薬とお魚もらっちゃった。

しらない人からもらっちゃいけないのに…。

でも、この子のお友だちはしらないけど、この子達はしってるからいいのかな?

でも、わたし…その人におれい言ってない!

たしか、お名前は…



「あ、のね」

『どうしましたの?』

「これ、くれた…シナ、さま?

シナさまにありがとうございます、って…」


銀の古猫種はまた、うふふと笑って必ず伝えるとシルヴィと約束をした。ほっとしたシルヴィは今度は包みを縛っているハンカチを気にし始めた。



すごく、きれいなハンカチだなぁ。

こんなきれいなのでしばっちゃうなんていいのかな?シナさまはきっとお金持ちなんだろうなぁ。

お姫さまが使ってたのと…ううん、こっちの方がきれい!

これがあれば、馬鹿にされない、かなぁ…。



肩を落としてしょんぼりしながら少し前の事を思い出す。

シテーゼドランを訪れた視察団の中にいた貴族のお姫様の事を。実際はお姫様ではないのだが、貴族の令嬢を初めて見たシルヴィにとっては絵本の中のお姫様みたいだと思ったのだ。

しかしそのお姫様は絵本の中の様に優しい存在ではなかった。遠巻きに集まる村の子ども達を見るなり眉を寄せながら馬鹿にしたのだ。

その令嬢が常に綺麗な刺繍の入ったハンカチを持っていたため、裕子のハンカチを見てその時の事を思い出したのだった。



お姫さまのハンカチは白に赤で大きいお花が縫ってあったなぁ。

シナさまのは、薄いピンクでかわいい!それに不思議、よくみると縫ってないのに白いお花が描いてある!

すごいなぁ。

きれいだなぁ。

シナさまがつかうのかな?

シナさまはおんなのひと?

それともシナさまの所にはお姫さまがいるのかな?

どんなお姫さまなんだろう?やさしいお姫さまだといいなぁ。



そのうち貴族の令嬢の事も忘れ、まだ見ぬお姫様を想像するシルヴィの歩みはだんだんと遅くなっていた。

気が付いた銀の古猫種は楽しそうに笑いながら進む速度を少し下げる。そうしてなおもシルヴィの考察は進む。



やさしいお姫さまだからお土産をくれたんだ!うん、きっとそう!

じゃあシナさまはお姫さまなのかな?

どうして山にいるんだろう?



「シナさまはお姫さま?」

『うっ…ふふ、シルヴィはおもしろい事をいうのね』

「ちがう、の?」

『ええ。シナはお姫様ではないわ』



気付けばシルヴィは口を開いて銀の古猫種に話しかけていた。そんな自分に酷く驚く。



わたし、いまちゃんとお話しできた!?

あまり怖くなかったなぁ。

でも、それより、シナさまはお姫さまじゃないんだ…。

じゃあ騎士さま?王子さま?

あっ!お姫さまを助ける魔法使い様とか魔術師様かも!!

お姫さまはきっと、理由があって山にきてるんだ。

こわくないのかなぁ?

それともシナさまが守ってあげてるから大丈夫?

そういえば、ごほうびって何のことなんだろう。

わたし何もしてないのに…。





『ねえ、シルヴィ?』

「なぁに?」

『どうして薬をつかわないのかしら?』

「お薬?」

『ええ、あなた怪我をしているでしょう?』


はて、自分は怪我をしていただろうかと首を捻る。そうして思い出したのは膝の擦り傷だった。

そういえばジクジクと痛む。


「いま使うともったいないから後で使うの!」


精霊の奇跡が起こったとしても村にはまだ病人や怪我人がいるのだ。自分の小さな怪我に全部使うより、皆で使った方がきっといい!

つかえながらも自身の言葉で言い切るシルヴィに銀の古猫種は満足そうだ。


『うふふ、シルヴィがそういうのならシナに伝えておくわ。

さあここが転移の場所なの』


そう言ってシルヴィを誘導する。

誘導された場所に立つや、足元や周囲が光り気が付けばシルヴィは村の前で立ち尽くしていたのだった。

見慣れた景色に安堵し泣き始めたシルヴィに大騒ぎする周囲。




こうして一夜干しはシルヴィに抱かれ村へと到着したのだった。



優雅な感じを目指すアメショーも品川さんがお姫様と言われた瞬間ふきました(笑)

予定では16時に後編、17時に精霊会議を載せていきます!

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