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円はそのまま、半径だけ変える

八時十五分。

なるわ営業所を出る。

尾張町。

博労町。

上堤町。

下堤町。

南町。

いつものループ。

狭い円だ。

だが、この円はよく当たる。

ホテルが固まっている。

チェックアウトの客が、短い距離で転がる。

一本。

また一本。

千二百円。

千四百円。

たまに千六百円。

本数は出る。

だが、伸びない。

信号待ち。

ハンドルに手を置いたまま、考える。

もう一段、取りに行くか。

俺には、もう一つ見るものがある。

地図でも、配車アプリでもない。

スマホのタイミーの画面だ。

清掃の募集が出ているホテル。

時間。

一見、ただのバイト情報だ。

だが俺にとっては違う。

清掃が入るということは、

その前に部屋が空くということだ。

チェックアウトの時間。

客が、動く時間。

さっき、画面に出ていた。

広坂。ファーストホテル。

清掃、十時から。

あの辺りで、出る。

この一行で、十分だ。

尾山神社を抜ける。

そのまま南町に落とすのが、いつもの形だ。

今日は違う。

ほんの少しだけ、迷う。

この円を外せば、

回転は落ちる。

GOも取りこぼすかもしれない。

今まで積み上げてきたリズムを、

自分で崩すことになる。

それでも——

ハンドルを少しだけ右に切る。

香林坊。

視線は道路じゃない。

画面だ。

Uber。

まだ鳴らない。

そのまま抜ける。

広坂。ファーストホテル。

止まらない。

溜まらない。

ただ、通る。

ここは待つ場所じゃない。

触る場所だ。

さらに流す。

片町。アマネク。

もう一つ、点を打つ。

画面が光る。

Uber。

いつもより距離がある。

悪くない。

次の瞬間には、ハンドルはもう返している。

Uターン。

拾う。

駅まで。

いつもの千二百円や千四百円ではない。

そのまま終わらない。

戻る。

南町。

尾山神社。

元の円に戻る。

GOが鳴る。

近い。

取りこぼさない。

また一本。

リズムは崩れていない。

だが、さっきとは少し違う。

広げすぎると、死ぬ。

狭すぎると、伸びない。

だから、

円はそのまま。

半径だけ、変える。

もう一度、尾山神社。

ほんの少しだけ、外に出る。

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