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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第三章 精霊編

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シルフィードに会いに行こう!(風の谷の~…マジサーセン(1)

 一夜明けて、メルフィート山を出立したのは今日の早朝だった。あたし達は今、シルフィードの住む風の谷目指して、ジープを走らせている次第です。


 まだ夕暮れ前だったから、すぐに出発したかったんだけど、あの後アクアと言い争いになったのよね。ガイアース戦で、彼女がウィンディーネに託されていた力を、あたしに渡してくれたのは良いんだけど、彼女的にはあれは勢い余っての行為だったらしい。


 しれっと普通に付いてこようとした彼女に、あたしが『もうウィンディーネの試練は済んだんだから、付いてくる必要無いんじゃない?』って聞いたら、『ママに食事を届ける使命が終わってないから連れてって下さい!』って、悪びれも無くぶっこくんだもん、そりゃ口論にも成るわよ。


 試練ってのは口実で、結局そっちメインだったんじゃないって話だからね~精霊であるアクアが、お金待ってるわけ無いんだし、その食事代だってこっち持ちだしさ。


 終いには、『じゃぁお金だけ上げるから、1人で街巡ってその地の名物でも買ってくれば良いじゃん?』って言ったら、『は、恥ずかしいじゃ無いですか!!』だって。知らんがな、まぢで…


 最終的にエイミーの後押しが決め手となって、彼女の同行を許可せざるを得なくなった。だって…『アクアさんの行為が決め手となったから、優姫も無事だったんですよ?』なんて言われたらねぇ…ぐうの音も出ないわよ。


 まぁ、口論しといてなんだけど、あたしも本気で嫌がってた訳じゃ無いから、構わないっちゃ構わないんだけれど、ウィンディーネに良い様に使われてる気がするし、一応ポーズでも嫌がっとかないと示しが付かないのよね。それに、同行する為の条件として『身体で支払う』って、言質も取った事だしね。


 昨日は結局、日が暮れてから下山するんじゃ危ないからって事で、ガイアースの洞窟入り口前で、野宿する羽目になった。当然車中泊したんだけど、車内で雑魚寝した時に気が付いたのよね~


 アクアの身体って、水の精霊なだけあってひんやりしてるって。寝苦しい夜なんかに、抱き枕にしたらきっとさぞ気持ち良いんでしょうね。


 クックック、世間知らずちゃんめ。軽々しく身体で払うなんて言った事、必ず後悔させてあげるわ!性的な意味でね!!


 ぶるっ…「な、なんか悪寒が…

「あら、大丈夫ですか?」


 精霊って言うのは勘が鋭いのか、あたしのピンク色(?)の思惑を察知したらしいアクアが、身震いしながら顔を左右に振っている。アクアの隣に座るエイミーが、そんな彼女の様子を見て、心配そうに声を掛けているやり取りを、あたしは後部座席から見つめていた。


「ちょっとアクア。ハンドル握ってる時に、あっちこっち見てたら危ないわよ

「は、はい!すいません!」


 運転席に座るアクアの様子に、その悪寒の元凶だろうあたしは、しれっと何事も無いかの様な素振りで声を掛けた。そう、さっきのピンクな妄想は3割位冗談だけど、身体で支払うって軽々しく言った彼女には、今こうしてジープの運転を任せる事にしたのだ。


 危機感の無い彼女に対する、軽い罰っていう意味合いもあるんだけれども、少し酔いやすいらしいアクアに運転させる事で、運転に意識を向けさせた、ら酔わないんじゃ無いかって言う検証も兼ねている。付いてくるのはこの際構わないけど、昨日みたいに辛そうにされてたんじゃ、こっちもたまったものじゃ無いしね。


「いざって時には、あたしが直でコントロール出来るけど、それじゃあなたに任せてる意味ないんだし。それに操縦はハンドルが優先なんだから、ちゃんと前見ててよね?

「は、はい…」


 続けざまにそう言うと、彼女の肩へあからさまに力が入るのが解った。そんな彼女の様子に、呆れながらにため息を吐いた。


 ちょっと言い過ぎたかしらね?彼女にとっては運転なんて初体験なんだし。けど、ハンドル握って進行方向だけ気にしてって、言っただけなんだけどな~


 多分逆にそれが気を緩めちゃってるのかも知れないわね。前にお父さんが、高速道路とかの運転は、車線変更しなきゃ前だけ見てれば良いから、退屈で眠くなるって言ってた気がするし。


 ならきっと、落ち着きが無い子に、前だけ気にしてハンドル握っててなんて頼んだら、1時間と保たずに居眠りされそうね。そう考えたら、もうかれこれ3時間運転してるアクアは、優秀って事なのかしらね。


 まぁ、仮に居眠り運転されたとしても、精霊の位階が高まった影響か、ある程度自分の意思で操作出来る様になったから、事故る事は無いと思うけど。元々、眷属を遠隔操作する事は出来たんだけど、眷属の大きさによって、遠隔操作に必要な魔力量も違うから、これだけの質量を自由に動かす事は、以前のあたしには無理だった。


 けど、ウィンディーネとトパーズ達の力を取り込んだ事によって、それもある程度可能になった。まぁ、細かい操作は依然無理だから、速度を上げるとかブレーキを掛けるとか位だけど。


 それと不思議な事に、ジープの操作を意識すると自分の視界とは別に、ジープ周辺の状況も映像で認識出来る様になったんだけど、ちょっとタイムラグがあるから、やっぱり誰かがハンドル握っててくれた方が安心なのよね。


 まぁ、そう言った経緯もあって、今アクアに運転を任せている訳なんだけど、んじゃあたしは何やってるかって言うと、位階が上がった事によって、精霊として出来る事が色々と増えたので、その検証ついでに銀星と夜天用の服作ったり、オヒメ用の服のリサイズしたりと、色々してる最中ですっと。


「…と、こんな所かしらね。どう?オヒメ

「うん!ピッタリだよママ!!

「そう。うん、よく似合ってるわね

「えへへっ!」


 リサイズした服の1つを、嬉しそうに見回しながら、満面の笑みを向けてくるオヒメに、同じように笑みを向けて返す。普段からニコニコしている子だから、シンプルにワンピースとかがよく似合うのよね。


 淡い黄色の襟の部分が白い、オーソドックスなタイプのワンピース。それは、彼女の赤い髪とよく合いそうだなと思って、あたしが選んだ物だった。


「銀星はどう?

「わ、私までこんな恰好する必要あるんですか?

「何言ってんのよ。女の子なんだから、お洒落に気を遣って何が悪いってのよ?ねぇ、エイミー

「ふふ、そうですね。似合っていますよ?銀星ちゃん。」


 オヒメの様子に満足したあたしは、次に銀星へと視線を向けた。用意された服に着替えた彼女は、モジモジと恥ずかしそうにして、頬を赤く染めていた所を、エイミーからもそう言われて、耳まで真っ赤にして俯いてしまった。


 その表情を満足げに眺めつつ、改めてその姿を眺める。銀星に着せた服は、エイミーがエルフの里で身に付けていた、緑のスリット入りミニスカートと黒タイツのコピーと、帝都で購入した白のノースリーブで、持ち出しの部分がフリルになっているシャツのコピーをチョイスした。


 初めて彼女を見た時、ちょっと性格がキツそうだなって思ったのよね。もちろん悪い意味で無くて、人に厳しく自分にはもっと厳しそうって言うか、大人びた雰囲気って言うのかしらね。


 最初のイメージがそうだったから、選んだコーデも落ち着きのある大人女子を意識したのよね。欲を言えば、下は黒か紺のタイトスカートにしたかったんだけど、無かったのでエルフのミニスカはその代用だった。


 これにヒールと眼鏡を装備させたら、完璧女教師ルックよね。銀髪ツインテのキツそうな女教師とか、も、萌える!!


「うん、今度タイトスカート見つけたら購入しよう

 ぶるっ…「な、何かしら?私も悪寒がしました…」


 身震いして辺りをキョロキョロし出した銀星を尻目に、隠れてほくそ笑みながら邪な事を考える。


 やっぱり彼女達って、勘が鋭いみたいね~これじゃおちおち妄想だって出来ないわ。まぁするけどね!


「うぅ~ん…」


 そんな馬鹿な事を考えていると、それまで大人しくあたしの膝の上で寝ていた夜天が、眠たそうに目を擦りながら起き上がった。


「…銀?その恰好何?

「な、何だって良いじゃないの!!人の恰好よりまず、自分の恰好を気にしなさい!!

「え~?何カリカリしてんのさ~…あれ~?」


 文句を言いながら、銀星に言われた通り自分の恰好を確認する辺り、すごく素直なのよね。ただ銀星と違って、かなりのマイペースなのは、見ていてすぐに解る。


 今も、トロンとした表情で、間の抜けた声を上げながら、自分の恰好を不思議がっている。そんな彼女に着せたのは、同じくエルフの里から持ってきた、あたしも履いてた緑の短パンに、ゆるっとした感じの黒い7分袖シャツで、カジュアルな感じにまとめてみた。


 寝てたから、とりあえず締め付けない感じでと思って選んだんだけど、完全にあたしの趣味丸出しだわ。似合ってるっちゃ似合ってるんだけど、エイミーとは違うおっとりマイペースだしなぁ~う~ん…


「…次大きな街寄ったら、1からちゃんと選びましょうか

「え~?何の話マスタ~??」


 そんな決意を胸に出た呟きに、状況が全く飲み込めない感じの夜天は、着せられた服を不思議そうに引っ張りながら聞き返してくる。その仕草がまた可愛いのよね~


「…良いな~

「フフッ、でしたら私がアクアさんのお洋服を見立ててあげますよ

「ほ、ほんとですか?!やった~!!」


 そんなあたし達のやり取りを、バックミラーでチラチラ気にしていたアクアの発言に、エイミーがすかさず反応を示した。それに対して、心底嬉しそうに喜ぶ彼女だけれども…


「まさか、食事だけに留まらず、服までたかる気だなんて!?やだこの子怖い!!

「な?!そ、そんなつもりじゃ…」


 必要以上に大げさなリアクションをあたしがすると、昨日の事もあったばかりだからか、急にしゅんと肩を丸めて勢いなさげに呟いた。


「もう、優姫ったら。そんなにアクアさんを虐めたら駄目じゃ無いですか。気にしなくて良いんですよ?あれはわざと言ってるだけですから

「う~…」


 エイミーにそう咎められて、思わず茶目っ気たっぷりに舌を出してウィンクする。そんなあたしを鏡越しに確認してか、低く恨めしそうに唸り出すアクア。


「ま、昨日の件はこの位で勘弁してあげるわよ。けど、あなた達だって着ている物、魔力で物質化出来るんだし、着たいの自分で作れば良いじゃ無い?

「簡単に言いますが、イメージ通りの物を作るって、結構大変なんですよ?こういった凝った作りの物となると、高位の姉様達かママで無いと難しいんです

「ふ~ん?じゃぁそのドレスって

「はい!ママに作って貰いました!!」


 嬉しそうに自慢する彼女を、微笑ましく思いながら見つめる。と同時に、地の精霊達がなんで質素な服を着たままだったのか、その理由が解った気がした。


 今までのガイアースは論外として、トパーズも精神的に追い詰められていた風だったから、自分の着ている物に無頓着だったんだろうし、下の姉妹達の事まで頭が回らなかったんだろう。それに、他の精霊達と交流があった訳でも無いだろうから、自分達の恰好に疑問を抱く余地さえ無かったんでしょうね。


 そう言う事だったら、服を眷属化した子達の分だけでも、コピーにすり替えておけば良かったかも知れない。まぁ、そうするとしてない子達が可哀想なんだけどね。


 …暫くして落ち着いたら、もう一度様子を見に行くのも悪く無いかもね。ここまで来たら、乗りかかった船ってね。


 多分大丈夫だとは思うけれど、今まで無頓着だった分、着る物にまで考えが回ってない可能性もあるからね。次ぎ行った時に、高位精霊がまだ村人Aみたいな恰好してたら、流石に目も当てられないし。


「…そろそろ見えてきますよ~」


 不意にそう言われ、それまでの考えをとりあえず横に置いて、視線をフロントガラスの向こう側へと移した。視線の先には、木々が生い茂った林があって、その更に先の奥には、立派な山々の連なりが確認出来たけれど、それは大分前から見えていたから違うだろう。


 とすると、山脈の手前…林の木々の頭から、少しだけ顔を覗かせている、むき出しの岩肌がどうやら風の谷の入り口らしかった。


「なんだ。てっきりあの山脈がそうなんだと思っていたんだけれど、違うのね

「えぇ。あの山々の向こうはもう海なんですよ。山脈の左側で一部山が途切れている部分がありますよね?

「あそこ?」


 エイミーに言われた通り、左に視線を移すと、確かに山が途切れていて、そこからチラリと海が顔を覗かせていた。


「はい。周りの山が海風を防いでいる所為もあって、あそこの部分から集中して海風が入ってくるんです。大昔はその風をせき止める形で、あの林の向こうに岩山が、いくつかあったらしいんですが…

「その風に削られて、小さくなったって言うの?!はぁ~…どんだけ年月掛けたらそうなるのよ。」


 スケールの大きな話に、あたしの口から思わず感嘆の声が漏れた。大自然の神秘って、どこの世界にでもあるのね~


「シルフィード様が、あそこに居を構えてからは、吹く風も大分収まったらしいですよ

「自然の猛威をコントロール出来るなんて、守護者ってやっぱり規格外よね~

「当然ですよ!ママが住む以前のカラクニド海域は、いくつもの海流がぶつかり合うポイントで、漁が出来るような場所じゃ無かったんですから!」


 唐突に会話に参加してきたアクアが、何故か自分の事のように得意げに語り出した。その様子から、彼女が本当にウィンディーネの事を、心から慕っているんだなぁと伝わってくるんだけれど、今その情報は必要ないのよね。


 むしろ、どうせだったらカラクニド海岸に居る間に教えて欲しかったわ。と、突っ込みそうになる気持ちを抑え込んだ。


 どうせまた、そこからあたしが余計な事言って、エイミーに怒られるってのが目に見えてるしね!目的地も近いんだし、余計な尺は取らないわよ。


 なんて、アホな葛藤をしている内に、ジープは林の中へと突っ込んでいった。侵入するのに併せて、車のスピードを落としつつ、アクアに運転気をつけるようにと注意を促した。


 そこまで広がっていないらしい林の出口は、少し走った位ですぐに見えて、そして…


 キィィ…「着きました~!

「ご苦労様。さ、それじゃ行きましょうか。」ガチャ、バタンッ!


 労いの言葉をアクアに向かって口にして、意気揚々とあたし達は車から下車した。

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