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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第三章 精霊編
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ガイアースに会いに行こう!(家庭訪問は玄関先塩対応(3)

……


「…成る程。その様子ではどうやら、そこの者と既に契約を結んでいる様だな

「…ッ。」


 一瞬の間の後、ガイアースの刺す様な視線と呟きを受けて、隣に立つエイミーが息を呑むのが伝わってくる。その間に割り込む様にエイミーの前に立ったあたしは、負けじとガイアースを睨み付け対抗する。


 口や態度に決して出さなかったけれど、エイミーの中ではきっと、再びこの場所に来る気なんて無かったはずだ。その事実は、昨日話してくれた内容の中で、彼女自身が語っていた。


 ここに来れば自然と、以前の契約精霊だったノルンの事も思い出すでしょうし、当時感じたであろうガイアースに対する憤りだって、きっと思い出して自分が嫌になるでしょう。嫌な思いをしたと言いながら、未だに彼女はガイアースの事を、世界の守護者の一角として、或いはイリナスの眷属として見て、ちゃんと敬称で呼んでいるのが良い証拠よね。


 それでも、嫌な顔1つしないでここに訪れたのは、当然あたしの為…なら、そのあたしがこうして彼女の壁となって、矢面に立たないで何時立つって言うのよ。


「何か、問題でもあるのかしら?

「…ふむ、問題か…問題など無いさ。その結果、邪神の勢力を削げるのであれば、契約者の相手が我の眷属で無い事など、些末な話だ

「そう。ならそんなおっかない目で、睨まないでくれるかしら?小心者なのよ、あたし。」


 睨み付けながら、何時もの様に軽口を叩く。それが功を奏した訳でも無いんでしょうけど、あたしの言葉を受けて彼女は、不機嫌そうに鼻を鳴らして瞳を閉じた。


「それじゃ、早速で悪いんだけれど、イリナスから受けたお遣いを済ませたいんだけど、構わないかしら?

「あぁ勿論だ。イリナスより念押しされているからな、是非も無いさ…」


 そこで言葉を区切ったかと思うと、それまで足を着けていた天井から浮かび上がり、ゆっくりと下降し始める。そして部屋の中間の辺りに来て、ようやく身体の向きを入れ替えて、地面に降り立つ手前で動きを止めた。


「我が力によって、憎き怨敵共を屠ってくれるのであれば、我が力好きなだけ持って行くと良い

「それが、あなたが誰とでも契約して、誰にでも加護を与える理由?

「そうだが?まぁ最も、そこの契約者は、もう随分と我の力を行使しておらんがな…

「あら、それだけ世界は平和だって事じゃない?いい話よね

「ふん、異世界人がぬけぬけと言うじゃないか。イリナス共は何を考えているのか…

「それは、あたしが聞きたい位ね~」


 同じ目線で話し始めたガイアースに、軽薄な笑みさえ浮かべて答えていく。それが気に要らないんでしょうけど、死んだ魚の目をした世界の守護者の1人は、苦言を呈しながら眉間に皺を寄せて、品定めでもする様に、あたしをジロジロと見始めた。


 その視線を一身に受けながら、苦笑を浮かべて肩を透かす。物怖じしないのは自分の長所だと思っているけど、こんな時までおちゃらけちゃうのは、間違いなくあたしの悪い癖よね。


「受け取る物受け取って、日暮れ前に下山したいのよね。試練が無いって言うんなら、ちゃっちゃと済ませてくれないかしら?」


 居心地の悪い視線を感じながら、ハッキリとした口調でそう告げる。するとガイアースは、ジロリとあたしの顔を睨み付け、またあの薄気味悪い笑みを浮かべた。


 それにあたしは、嫌な予感を感じつつ、眉を顰めて警戒する。そんなあたし達のやり取りを前に、背後に居る3人の不安な視線が、背中越しに突き刺さるのが伝わってくる。


「…気が変わった。我にはどうにも、貴様が守護者たる資格があるのか理解出来ん

「あら、奇遇ね。あたしにもそんな物、在るなんて思ってないわよ。強いて言えば、協力しているだけに過ぎないもの。」


 嫌な予感はしつつも、それを表には決して見せずに、変わらぬ戯けた態度で交渉を続ける。不穏な流れになってきたけど、ここで急に態度を変えたら、相手の思うつぼ待ったなしでしょうね。


 あくまでも、相手と自分は対等なんだと、そう示して見せつける事が肝心なのよ。下手に出て波風立てずに事を収めるのは簡単だけど、一方的に不利な条件を突きつけられたら、それこそ目も当てられないからね。


「なら、あなたの力は貰え無いで良いのかしら?折角ここまでやって来て、無駄足になるのは正直嫌なんだけど、それならそれで仕方無いわね

「嫌、先程も言ったがイリナスより念を押されている。力を分ける事は、無論吝かでは無い…が、どうにも貴様の覚悟が、軽い様に見えるのでな。そんな心構えで、邪神の軍勢と渡り合えるのか、疑問なのだよ

「覚悟ねぇ…そりゃそうでしょ?()()()()()()()()()()()じゃ無いんだし、あたし含む異世界人達が、そいつ等と命がけで闘う理由なんて無いわよ。」


 その一言に、ガイアースの表情が強張り、それまで死んだ魚の様な瞳に、明らかな怒りの色が宿る。その変化を目の当たりにして、黙って見守っていた背後の3人が、完全に萎縮してしまったのが、振り向かなくても背中越しに伝わってきた。


 そんな彼女達に心の中で謝罪しながらも、あたしは涼しい顔のまま、殺気と怨恨入り交じる視線を真っ正面から受け止め、それまで浮かべていた軽薄な笑みを消した。


「底が見えてきたじゃ無い。そっちの方が、死んだ魚の目よりよっぽどマシね

「小娘が…よく知りもしないで、囀るでは無いか

「えぇ、知らないわ。知っちゃこっちゃ無い…だから言えるのよ。あんたの感情を、あたしに押しつけようとしてんじゃ無いわよ。」


 そう言って、威嚇する様にお互い睨み合う。向けられる殺気と怨恨の入り交じった視線に、闘志をみなぎらせて1歩も引かない。


「…良いだろう。ならば知ってもらおうでは無いか。」


 どれだけ睨み合っていただろう、いい加減このままじゃ埒があかないと思い始めた頃、不意にガイアースがそう呟やくと、それまで見せていた感情を抑え込んだ。そして再び、魚の死んだ様な瞳に戻ると、あの薄気味悪い笑みを浮かべる。


「この世界の成り立ちをな。それを知る事を、我が貴様に与える試練としよう。断らんよな?」


 次いで紡がれた言葉に、あたしは眉根を寄せて、あからさまに警戒する。


 …そう来たか。


「あなたの主観が入った記憶なんて、見せられてもね~

「それは仕方無いと、諦めて貰うしか無いな。だが、それだけ見事な啖呵を切ったのだ、ソレ込みでも別に構わんだろう?

「…判ったわ。」


 そう告げてから、あたしはその場で振り返り、背後の3人に視線を向ける。見れば思った通り、3人が3人とも不安そうな表情であたしを見つめていた。


 そんな3人に、あたしは苦笑を浮かべなら側に近付くと、エイミーへと視線を向けて、その肩に手を置いた。


「すみません。まさかガイアース様が、あの時の事を未だに持ち出してくるなんて…

「エイミーの所為じゃないわよ。あぁ言うヤンデレはね、何時までも昔の事を、グチグチと持ち出すものなのよ。」


 あたしが手を置くと同時に、申し訳なさそうにそう言う彼女に対し、一応ガイアースに聞こえない様気をつけながら、彼女の耳元でそう呟いてウィンクする。


「ですが、その所為で話がややこしくなってしまって…

「それも貴女の所為じゃないわよ。むしろ喧嘩を吹っ掛けたのは、あたしなんだしさ

「あ、あの。どうして優姫さんは、あんな態度を取ったんですか?

「うん?あ~…まぁ、あっちの態度が癪に障ったってだけよ

「え…そんな事で?」


 アクアの質問にそう答えると、驚いた表情で絶句されてしまった。それを見てあたしは苦笑を浮かべ、そこで会話を切り上げて、再びガイアースへと向き直った。


 ガイアースの態度が癪に障ったのは事実だけれど、それ以上にあたしの内には、初めて会った筈の彼女に対する、静かに燻る様に揺らめく怒りを感じていた。だから、エイミーを庇って矢面に立ったのは、実の所理由の半分でしかない。


 全ては彼女達のその瞳の色が原因だった。その目を見ていると、あの時の自分の無力さを、嫌が応にも思い出す…


 それはある雪の日…痣だらけの小さな手の持ち主の事を…


「…さて、じゃぁちゃっちゃと初めてくれるかしら?

「フン、威勢が良いな。良かろう…」


 頭の片隅に過った昔の事を振り払い、ガイアースの眼前へと進み出たあたしは、睨み上げる様にしながら彼女にそう告げる。そして、不機嫌そうに鼻を鳴らした彼女は、左手をあたしの眼前へと翳した。


 あたしは、覚悟を決めてゆっくりと目を瞑ると、映像が直接頭の中に流れ込んできた。


……


『我は大地の精霊ガイアース。これから見せるのは、この世界の大地に刻まれた記憶そのものだ。』

「前置きは良いから、とっとと初めて頂戴。」


 まるで映画でも見せられている様な、そんな不思議な感覚の中、ナレーションの様に聞こえてきたガイアースの言葉に、思わずいちゃもんを付けていた。今あたしが見ている映像は、まるでSF映画のオープニングにでも使われそうな、燦然と輝く星々が眩しい暗い海原の光景だった。


『言われなくてもそのつもりである。遡る事およそ1万と少し前の事だ。それまで生命が誕生していなかったこの星に、1体のドラゴンの背に乗った1柱の神と、その者に付き従う4柱の従者が居た。』


 その台詞に併せる様に場面は変わり、星の海の奥から巨大なドラゴンの姿と、その背に乗った5人の人影の姿が映し出された。長く伸びるドラゴンの首の付け根に、進行方向を見据える様にして、目深にローブを被り杖を付く人物の姿。


 そして、その人物の後ろに控える様に、角の生えた筋骨隆々の男性の姿が、その隣に憂いのある表情を浮かべた美しい女性が、かしずく様にローブの人物の後ろに控えている。


 更にその2人の後ろには、まるでリクライニングチェアの様な物に身体を預け、静かに眠る中性的な少年の姿と、その隣に寄り添う様にして居る、あのイリナスの姿を見つけた。


 これって、まさか…


『気付いたかな?そのドラゴンは、今尚この世界で最強と名高き龍王・ミョルム。イリナスは流石に判るだろう…その隣で眠るのは、もう一柱の精霊神クロノスだ。その前で畏まっているのが、魔神デモニアと女神ラズベルさ。』

「なら、あのローブの人物が…

『そうさ。元神にしてこの星と同じ名前を持つ、邪神『グラム』だ。とは言え、その名を口にする事は、禁忌とされて随分経つから、邪神がこの星と同じ名前が付いている事を、覚えている者はもうほとんど居ないと思うがね。』


 そう語るガイアースのナレーションからは、怒りの感情が手に取る様に伝わってくる。そんなのはまぁ今更だから、軽く無視しつつ、映し出された映像の人物をジッと見つめる。


 これが邪神?あたしの思っていたイメージとは、随分違うわね…


 そんな感想を思い浮かべていると、何の前触れも無く再び映像が変わり、ドラゴンとその背に乗る人物達が、巨大な惑星と対峙する様に向かい合っている場面になった。そして、ローブの人物が手にした杖を、惑星に向ける様はまるで、古事記なんかに出てくる様な、国産みのシーンの再現かと思ってしまった。


『遠い地より、この星にやって来た彼等は、まず自分達が元々住んでいた環境の再現を行った。』


 ナレーションに併せる様に、ローブの人物が杖で指し示した後、イリナスが立ち上がり彼の前に進み出ると、惑星に向かって両手を広げる。すると次の瞬間、その惑星に虹色の膜が張られて、七色に光り輝いた。


「…イリナスは何をしたの?

『言ったろう?環境を再現したと。この星は重力が極端に低かったのさ。そのままでは、大気が地表に留まらず逃げてしまって、生物が産まれる様な環境では無かった。だからああして、地面に向かって押さえ付ける力場を張ったのさ。』


 その説明を聞いて、以前イリナスに教えられた知識の中にあった、不明だった4つ目の結界について、ようやく合点がいった。成る程、これが紛れもない事実だったら、おいそれと喋る訳にはいかないわよね。


 もしもイリナスに何かあって、この結界が消えてしてしまったら、もれなく世界滅亡なんて事実、世界中の人が知ったら、パニックになる事間違い無しだ。そんな重大な情報を、あっさり漏らしてしまうガイアースに、苛立ちを覚えてため息を1つ吐いた。


「…彼等は、なんでこの星に移住してきたの?」


 今尚、イリナスの大魔法によって、七色に輝く惑星を見ながら、思い至った疑問を口にする。


『それまでの住処を、追い出されたんだそうだよ。』

「ふ~ん

『なんだ?随分不満そうじゃ無いか。』

「別に?大した理由じゃ無いのねって思っただけよ。先を続けて頂戴。」


 その言葉に、再び場面が切り替わり、今度は緑生い茂るのどかな風景と、様々な人々の活気ある姿が映し出された。


『イリナスの手によって環境が整備され、神と4柱の従者、それに龍王は地に降り立った。そして様々な種族を産み出し、安寧の時が千年は過ぎただろうか。産まれた種族達は、順調に数を増やしていき、村を町を国を作り始めた。』


 その言葉に併せる様に、自然が何処までも続いていた風景の中に、村が出来て発展していく様が、まるで早送り再生の様なスピードで映し出されていった。


『ある時は神と従者達が手ずから導き、またある時は裁きを与えもした。そうして、この世界に秩序が生まれ、宗教が生まれ、加速度的に発展していった。そんな折りに、クロノスの発案で、世界の守り手となる守護者を設けようという話になった。』

「クロノスが?」


 そう呟いて、最初の方の映像に出てきた、ずっと眠ったままだった少年の事を思い出す。


『奴は時の番人だ。恐らくその時点で気が付いていたのさ、神が何を企んでいるのかと言う事に。』

「気付いて居たなら、神代戦争だっけ?それを起こさない様に動く事だって可能だったんじゃ無いの?

『それが出来れば確かに良かったんだろうさ。だが、それが出来ない理由があるのさ。グラムという元神は、自分の従者にそれぞれ自身に匹敵する能力を1つ、複製して持たせていたのさ。デモニアには圧倒的な破壊の力を、イリナスには絶大な魔力を、ラズベルには広く深い見識を、そしてクロノスには先を見通すだけの力を。』

「つまり、クロノスの力は神も持ち合わせているから、こっちが気が付いた時点で、向こうにも気付かれているって事?

『その通りだが、それが理由では無い。』


 そしてまた場面が変わって、4柱の従者達の姿が映し出された。


『奴が自分の力と同等の能力を、何故4つに別けて4柱の従者達に与えたか判るか?』

「…いくら神でも、同時に使用出来ない力があるから…とか?

『そうだ。クロノスに与えられた先を見通す力とは、無限とも言えるいくつもの可能性全てに目を向ける力。その情報量の多さ故に、情報を処理する事に専念する余り、起きていられないのだ。そしてその先を見通す力こそ、神が一番に欲していた力でもある。奴自身がその力を行使すると、クロノス程では無いにしろ、その行動に制限が掛かってしまうそうだ。』

「…じゃぁ、気付いた事に気付かれなければ、相手に悟られずに済むし、どの位起きていられるのか知らないけど、説明する時間が無くて手短に済ませるしか無かったと

『そう言う事だ。』

「けど、仮にそうだとしても、クロノスが神の思惑ってのに気が付くって事は、向こうには簡単に予想出来たんじゃ無い?それを計算に入れて無かったなんて、まさか無いわよね?

『勿論予想していただろうさ。だが、奴は所詮従者だと思い侮っていたのさ…』


 更に場面は切り替わり、どこかの神殿の様な場所でローブの人物と向き合う、イリナスとラズベルの困惑気味な表情を浮かべる、2人の女神の姿が映し出された。


『世界は発展し、クロノスの進言通り、守護者と呼ばれる存在が出来あがる頃、その時を待って居たかの様に、奴は従者達に命令を下したのさ。』

「『機は熟した。進軍の準備を整えよ。』かしら?

『ほぉ?よく解ったじゃないか。』

「そりゃ~ね。プライドと地位のお高い敗残兵が、再起をかけて準備するなんて、お決まりの展開じゃない。何処の世界でだって、変わりゃしないわよそんなの。」


 感心した様に喋るナレーションに、馬鹿馬鹿しいと言った感じで答えた。神の思惑だなんて、ご大層な事並べていたけど、結局それかと正直呆れてしまう。


 この星に移住してきた理由を聞いた時点で、簡単に予想出来たっての。だけど、そう言う人達の熱量は、くだらないと一蹴出来ない所があるから、厄介なのも事実なのよね…


『さて、では話を戻そうか。神の命令に対し、従者達はそれを拒否した。この星で産まれ育った者達を巻き込んで、今更遠い故郷を目指して進軍するなど無謀だとな。それでも神は止まらなかった。所か従者達を力尽くで従えようと、自分の眷属を率いて打って出たのだ。』


 そのナレーションと共に、戦争映画のワンシーンを彷彿とさせる、上空から戦場を俯瞰する場面に切り替わる。整然と並んだ数千数万の軍勢同士が、互いに睨み合っている様は、正に圧巻だった。


「馬鹿ね。進軍する為に整えた兵力を、自分で潰すなんて…

『だから言ったろう、奴は従者達を侮っていたと。奴は自分が命令を下せば、彼等は従うだろうと高を括っていたのさ。仮に誰かが従わなくても、少し脅せば敵わぬと諦めるだろうとな。だが結局、誰1人として従わない所か、神の忠実な護衛だった筈の龍王からも見限られた。』

「正に四面楚歌ね…あぁ、1人が相手なら、いくら自分に匹敵しうる力を持っていたとしても、どうにか出来ると思っていたって事ね

『その通りだ。1人2人の反乱なら、力任せにねじ伏せられると考えていたのさ。しかし、4柱全員に加えて龍王までが裏切る等、想像も出来なかったんだろうよ。』

「それだけ、彼等がこの世界に馴染んでたって事なんでしょうね。」


 会話が進むにつれて、軍勢同士がぶつかり合い、激しい戦火の幕が切って落とされた。数千数万という人並みが、うねりあってぶつかり合い、そして次第にすり減っていく光景を、変わらず上空から俯瞰していた。


 今目の前に広がる光景は、既に起こってしまった記録でしか無い。だけど、今まで何度となく、この世界で繰り返されてきた光景なのだろう。


 或いは、この先も繰り返される光景…か。


『後は史実の通りだ。その後神は邪神と呼ばれる様になり、恨み辛みを言い残して亜空間へと封じられた。』

「故郷を追われた恨みを晴らせぬままね…」


 そう呟いた瞬間、それまで目の前に広がっていた光景が、まるでブレーカーでも落とされたかの様に暗転する。そして…


……

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