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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
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以降の難易度は追加コンテンツ(2)

「…さてと

「ママ、ママ!すごい大きいね!!」


 ルティスを適当にあしらった所で、少し離れたオヒメの元までやって来たあたしは、はしゃぐ彼女に促されながら、目の前の建築物を半眼で見上げた。


「何よこれ…サクラ○ファミリア?

「ね~おっきいよね~!」


 あたしの呟きに、多分解っていないちびっ子の声が重なる。目の前にある建物は、あたしでも知っているような、世界遺産の教会然とした巨大建築物だった。少し離れたこの国のお城と、遜色ないくらい立派な建物だ。


 と言うか、遠くから馬車の中で見た時は、お城の一部かと思ったわ。実際お城の方角に目を向けると、この建物と一部繋がっているように見えるし。


 ここがクラマ公爵邸の敷地内って事?まぁ、クラマ公爵は王様の弟…身内なんだから、王城と敷地で繋がっていても不思議じゃ無い…のかしら?


 それにしても広大だし、どちらかって言うと、王城よりもこっちの方が立派じゃね?って気がするんですけど…


 これが王の弟の個人宅だって言うんなら、間違いなく王様より権力あるわよね?これ…


「あちらが、イリナス様が居られます、精霊教ヤマト支部になります

「…は?あれで支部なの?

「え?えぇ。精霊教本部は、エルフの聖都エルヴンガルドにございますので。」


 後ろから聞こえたルティスの言葉に振り返り聞き返す。と同時に、自分の勘違いにも気が付いた。


 ま~ね。普通に考えればそうですよね。


 いくら王族だからって、自国の城よりも立派な建物に住んでる訳無いか~しっかし、この世界でも宗教の力の方が、やっぱり国力よりも上なのかしらね?


 建物の規模や煌びやかさで、その力関係が図れるって言うのは、何処の世界でも一緒なのね。まぁ、分かり易くて良いと思うけど。


 けど不思議ね~いくら教会だからって、公爵が王弟って言う事は、ここら辺一体王族の土地って言う事よね?いくら教会の力が強力だからって、そこまで好き勝手させておいて、国の面子とかは大丈夫なのかしらね?


 それに、気になる事がもう一つ。ここが教会って言う事は、それなりに一般に開けていないといけないと思うのよね。


 けれど見た感じ、一般人の出入り所か、王族の敷地内だから当然、一般人の往来さえ一切見当たらない。教会の入り口に見えたのは、THE警備員って感じの、フルメタルプレートを身に付けて、長槍を手に持った衛兵ばかりなのよね。


 教会って言うより、教会の形をした国の重要機関って感じよね?まぁ物々しい警備なのは、ここにイリナスが居るから何でしょうけれど。


 そしてそれが、必要以上にここが見栄え良く造られている、理由の1つなんでしょうね。まぁ、この国の力関係とか歴史とか、あたしの知ったこっちゃ無いけどさ。


「中でヤマト王と我が主のクラマ公爵と、まずは面会していただきます

「それより、クラマ公爵邸てどこにあるの?

「え?あ~…」


 ふと気になったので、マティスの言葉を遮って、そんな事を聞いてみた。いや、だって気になるでしょ?


 敷地内にあるって言われていた、イリアスの居城が想像以上だったんだもの。言うなれば居候の家屋がこれなら、本来この土地にドカッとあるべき筈の公爵邸は、どれほどご立派なのかしら?と。


 まぁ、答えは分かりきってるし、マティスの反応を見たら『これの後に見せるの~?』って思いがヒシヒシと伝わってくるしね。自分でも相当底意地悪いなぁ~って思うような質問よね。


「…あちらが、私のお仕えしている屋敷になります。」


 と、暫くして観念したマティスが、教会の隣に建てられたお城とは、反対の方角に手を差し向けたので、そっちに視線を向ける。


「…え?あ~…うん。その、広いお庭が素敵なおうちね

「…はい、そうでございますね。」


 その先にあった屋敷を目にして、流石のあたしもちょっと引きました。いやいや、立派は立派よ?白くて2階建てで、入り口も広く取られているし、噴水だってあるもの。


 よく物語で聞くような、舞踏会でも開けるくらいには、きっと広いと思うのよ、うん。


 けどね?対比が…ね?


 サク○ダファミリアもどきや、それに負けないくらいのお城見た後にさ、立派とは言っても個人レベルの一軒家見たらね?その…例えるなら、豪邸と犬k…


 嫌!これ以上は流石のあたしでも、あまりにも不憫すぎて言えない!!流石にアレは離れか、囲いもあるみたいだったから、他の御貴族の家じゃね?って思ってたのがそうだったなんて!


 比較する対象が対象だったから、ちょっと小洒落たマンションくらいはあるんだろうなって、勝手に思っていたんだけど、流石にあたしの鋼の胸も締め付けられちゃうわよ。ないわ~


 2階建てみたいに見えるけど、近くによって見たら実は思ったよりもでかいって言う、遠近法マジック!って、無いわね。誰に対するフォロー入れてんのかしら、あたし…


「優姫さん

「ん?」


 公爵邸を密かに哀れみつつ弄っていたあたしに、ルージュが話しかけてきたので振り返る。


「ここまで来たのなら、この者の話も嘘でないと判断できましたので

「あ…ようやく解っていただけましたか。」


 オブラートに包む気配の無い彼女のその物言いに、ルティスが苦笑を浮かべて呟いた。まぁ、ちょっと可哀想な気もするけどね、用心に用心を重ねるのは、あたしも良いと思うから、それ以上はなんとも思わないけどね~


 誤解があったのは確かだろうけど、誤解される方も悪いんだし。


「ですので、そろそろお暇させていただこうと思います

「え~?!ルージュ、帰っちゃうの~?」


 次いで紡がれた彼女の言葉に、あたしが反応するよりも先に…と言うか、物理的に間に割り込んで、あたしの視界を遮ったオヒメが、不満たらたらといった感じで文句を口にする。


「…すまないな、姫華

「やだやだ~!!もっと一緒に居ようよ!!」ガシッ「きゃっ?!」


 そんなオヒメに、ルージュが困った表情で謝るのを見たあたしは、軽くため息を吐きながら、なおも駄々をこねるちっちゃい子供を鷲づかみにして手繰り寄せて。無理矢理視界から退かした。


「…ったくもう、駄々こねてお姉さんを困らせるんじゃ無いわよ、あんた

「ブーブーッ!!

「ごめんなさいね、この子が無理言って

「いえ、すみません…

「貴女が謝る事じゃ無いじゃない。」


 律儀にお辞儀して謝ってくる彼女に、あたしは苦笑しながらそう言って、顔を上げさせる。なんて言うかほんと、あたしの中の勝手な騎士像と、ぴったり合う人だな~なんて再認識した瞬間だった。


「けど、オヒメじゃ無いけれど、出来ればあたしも、もう少しルージュさんから話を聞きたいのよね~

「え?」


 次いであたしがそう言うと、それを意外に思ったのか、ルージュが少し驚いた表情を浮かべ、手で掴んでいるオヒメは逆に、パッと華やいだ表情を向けてくる。いや、別にあんたの擁護しようって訳じゃ無いからね?


 ちなみに、ルージュが美人さんだから、口実作って別れる前にどうにかセクハラしようとか、そんな理由でも無いかんね?あたしが両刀だからって、変な期待すんな☆


「当然だけど、この子(オヒメ)みたいな子供っぽい理由じゃ無いわよ?貴女を精霊の先達として見込んで、この力の使い方を、少し教えて欲しいなって思った訳よ

「あぁ、そうでしたか。」


 あたしのその言葉に、得心がいったと言う風に頷くルージュ。そう、それこそあたしが、ルージュにお願いしたいと思っていた事なのだ。


 精霊についての事だったら、自身が精霊種で精霊使いであるエイミーにも聞けるけど、こと『精霊の力の使い方』ってなると、流石にエイミーに聞いても解らないでしょうからね~


 この世界での自分の立ち位置を受け入れて、精霊としての力を使うと決めたは良いけど、こちとらピッカピカの精霊1年生だかんね~イフリータとの試練で、なんとなくは理解したつもりだし、ある程度は使えると思うけれど、それでもきっと本来出来る事の1割にも満たないでしょうね。


 自分で色々実験して、力の使い方を模索するのも良いけど…って言うか、どっちかって言うと、そっちの方があたし的には好きなんだけど、指導してくれる人が側に居てくれるなら、そっちの方がありがたいしね。


 この辺は、根っからのアスリート的思考よね~自分の視点だけじゃ、なかなか気付けない事とか、思いがけないアドバイスがもらえたりするのって、その道の先達が居てからこそだし、上を目指そうとする人にとって、そんな人が近くに居るって、これ以上無い位心強い事なのよ。


 まぁ、そんな事言うと、自分がこの力を進んで使って、頂点を目指したいのかって、受け止められちゃうんだろうけど、別にそういう訳でも無いのよね。そりゃ、全く無いのかって聞かれたら、そりゃ嘘になるけれどもさ、それ以上に怖いじゃない。


 よく解らない、知りもしない、得体の知れない力なんて、ただただ恐怖でしか無いのよ。前にも言ったけど、安易に『これがチート能力か!ヒャッハー!!』なんて喜ぶ気は、あたしにはさらさら無いのよ。


 まぁ、そう思えたなら1番楽なんだろうけどね~けれど、一端の武道家にしてアスリートとしての面が、それを決して許そうとしないのよ。


 力や技術や経験って言う物は、積み重ねて初めて肉体に反映されて、確固たる自信へと繋がっていく物だと、小さな頃から教えて込まれてきたし、しっかりと自分の考えを持って、今なお1人の選手として活動しているあたしにとって、そこに疑念の入り込む余地さえ無いのよ。


 だって言うのに、ようやくこの世界の環境下での、強化された身体能力に馴れてきたって所で、さらに意味不明だった力を使う事になったのよ?こんなの、整備不良でいつ暴発してもおかしくない拳銃渡されて、無理矢理使わされてるようなものじゃない。


 こんなの、1日でも早く『正しい使い方』を覚えて、安全に制御出来るようにしておかないと、使いたくても使う気にさえなれないのよ。整備不良なら、整備しちゃえば良いってね。


 別に、元の世界に帰る事を諦めた訳じゃ無いけれど、あたしが今ここに居るのが、この世界の意思(神様)そのものだって言うのなら、そう簡単に帰してはくれないんでしょうしね。なら、何時か訪れるだろう、精霊の力を使わざるを得ない状況を、最初から念頭に入れて行動しておくべきなのよ。


 そう考えた時に、ルージュが今後協力してくれるか否かって言うのは、実に大きな分かれ目になると思うのよね~だからここでなんとか、彼女の協力を得たい所なのよ。


「私からもお願いします

「エイミー殿

「エイミー…」


 あたしの申し出を聞いて、暫く考えていた様子のルージュに、背後から近寄ってきたエイミーが会話に参加してきた。その反応に、今度はあたしが驚きの表情を浮かべる番になった。


 意外ね、エイミーの事だから、てっきりあたしを元の世界に帰すのを優先させて、それよりも帰る事を優先して考えて下さいって、言われるものだと思ったのに…


 いや、きっとエイミーは、あたしを元の世界に帰す事を第一に考えているだろうし、何よりもそれを優先すべきと思っているんでしょうね…けれど、相手が相手だから、そう出来なかった時の事を考えて、他の選択肢も視野に入れたって所なんでしょうね。


 なんて箏は無いわね…あたしがそうだったように、彼女もまた腹を括ったって事ね。まぁ何にしても、ここでエイミーの援護射撃が貰えた事は、素直に喜ばしい事だと思うわ。


「…ん、そうですね。私で良ければ…

「本当に?!」


 エイミーの援護射撃を受けてから暫くの魔の後、考えが纏まったのか、ルージュが漏らすように呟いた。それを聞いて、あたしは素直に喜びを表したんだけど、しかしそうは問屋が素直に卸さなかったようで、彼女のすまなそうな表情が目に飛び込んできたのだった。


「ですが、私の一存では決められないのです。イフリータ様に聞いてみない事には…

「あ…そっか。そうよね…」


 喜んだのも束の間、彼女は申し訳なさそうにそう告げた。それを聞いて、あたしも落胆に肩を落としてしまう。


 まぁ、考えてみれば当然の事よね、精霊としての彼女は、イフリータの眷属なんだから。ここに居るのだって、彼女の意思ではあるけれど、イフリータの許可が出たからこそなんだし。


 と言う事は、これから彼女は、イフリータに許可を貰いに、カザンウェル山に戻って聞いてくるって事になるのか…それは流石に申し訳ないわね。


 あたしが気を失ってから、大体2日でこの帝都に着いた訳だけど…乗り合いの幌馬車みたいに、他の街に寄ったりしなかったから、最初聞いてた日程よりも早く着いたみたいね。本来飛ぶ事の出来る精霊の彼女なら、もっと短時間で往復出来るんでしょうけれど、それでも1日か2日は掛かるでしょうね。


 いくらこっちからお願いした事とは言っても、流石にそれは悪いと思うし、もしもイフリータがOK出さなかった場合、律儀そうな彼女の事だから、それを伝える為にまた戻ってくるんじゃ無いかな?そう考えると…


「では、少しお待ちください

「え?あ、ちょっ!…?」


 な~んて、あたしが色々考えていた気苦労は、全く以て無駄だったらしい。突然ルージュがそう告げたから、慌てて制止させようとした次の瞬間には、彼女の姿は薄れて瞬く間に虚空へと消えてしまった。


「あれ…?何処行ったの?

「あ、あぁ!精霊界を通じてイフリータ様の元に戻ったんですよ。」


 消えたルージュが、それまで立っていた場所を見つめてあたしが呟くと、それに気が付いたエイミーが、慌てた様子で説明しだした。


「精霊界とは、イリナス様がご自身と精霊達の為に用意された、異空間に存在する世界の事なんです。各精霊王様方の眷属である精霊達は、例え現実世界のどこに居たとしても、精霊界に戻る際は必ず、自身が仕える王の領域に戻る事が出来るんです

「何それ超便利。簡易どこでも○アみたいな物じゃん!」


 その説明を聞いて、真っ先に思い浮かんで、口に出した単語がそれでした。○ラえもんの中でどこで○ドアと○次元ポケットは、みんな欲しがる不思議道具1位2位だかんね。


 …うん?ちょっと待ってよ…


 ふと、思い浮かんだ考えに、未だ手に握ったオヒメに視線を向ける。


「ねぇオヒメ。もしかしてあんたもあれ出来るの?

「うん?出来るよ!」


 と、あたしの質問に屈託無く笑うと、次の瞬間パッといきなりオヒメの姿が、あたしの手の中から消え去った。


「ね?」


 次いで聞こえてきた声に振り向くと、そこにはまたしてもうっすい胸を反らして、ドヤ顔しているちびっ子の姿があった。どうしよう、自分と似た顔でドヤ顔されると、ちょっとイラッてするかも…


 それよりも、今のであたしにもその精霊界って場所に、自分の領域がちゃんと用意されているって言う事が証明された。精霊界って、イフリータに閉じ込められていた、あの紅い荒野みたいな場所よね?


 それがあたしにも合って、例えどこに居てもそこに一瞬で戻れるのよね?何その固有結界。


 どうしよう、あたしの厨二心がくすぐられちゃうわ…ちょっと使ってみたいかもしんない。これだけの為に、ちょっと精霊の力解放しちゃおうかしら?


 なんて不埒な事を考えて、ちょっとうずうずしながら、腰に提げた兼定に手を掛けた。さっき怖くて使えないって、言ったばっかりじゃないって?そんな事知らん!!知らんったら知らん!!


「ねぇオヒメ?ちょっと今、どうやったのか教えてくんない?

「…優姫?まさか面白そうとか思っていませんか?」


 ギクッ!くっ、エイミーたんの視線が痛いわ!!


 エイミーの鋭い指摘に、肩をビクッとさせたけど、決してそっちを振り返らない。何故かって?どんな表情してるのか、振り向かなくっても解るからよ。


 呆れてる、絶対呆れてる!!ふ、ふんだ!少し位、この力で遊んだって良いじゃ無い!!


 精霊化する為の動力はエイミーじゃ無いって?そんな事は知らんなぁ(正に外道


「う~んとね、ビュッ!って飛んだらいけるんだよ!!

「………あ、はい。」


 そして、返ってきたオヒメの答えを聞いて、あたしのテンションは一気に急降下した。しまったわ、この子産まれてそんな経ってないから、語彙がなさ過ぎて全然わかんにゃい…


 だって言うのに、すんごいニコニコしてるもんだから、ツッコミも入れられないじゃない…このやり場の無い気持ち、一体全体どうしたら良いのかしらね?


 まぁ、こんな小さな子相手に、説明求めたあたしが悪いんだけどね。しゃ~ない、これに関しては落ち着いてからどうにかするかな。


 また脱線してるって?デスヨネーほんとサーセン

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