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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
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い~んふぇるの!!(2)

 ドゴゴゴォンッ!「うっし!成功!!」


 刀を振り下ろすと同時に、飛べと強く念じて、刀の周りの青白い光のオーラが、飛んでいくイメージを思い描くと、それがそのまま現実に反映される。あたしの斬撃から飛び出した光のオーラは、三日月の形でまっすぐ直進していき、進路上の炎の塊を見事に両断していった。


 3個くらい両断した所で、あたしの斬撃は消えちゃったって、イフリータには全く届かなかったけど、その3つの爆発に巻き込まれて、その他の炎の塊の誘爆に成功する。


 ぶっつけ本番だったけど、なかなか上手くいったんじゃないかしら?自分の意思で形を変えられるんなら、切り離す事も可能なんじゃ無いかって思ったのよね~え?ぶっつけ本番で上手くいかなかったら、どうしてたかって?


 そんなの、失敗した気恥ずかしさを、テヘペロ☆ってして、可愛く誤魔化すだけよ!JKの特権よね!!


「ふうん、()()()出来るのか。ならこれにはどう対処する?」


 そう言ってイフリータは、再び炎の塊を無数に産み出した。それも、今度は大きさも大小様々で、おまけに1つ1つの間隔も大きく取られていた。


 あれじゃ、さっきみたいに斬撃を飛ばして、誘爆狙いで一掃するのは難しそうね。それに、多分それぞれ速さにも、ある程度緩急を付けてくるでしょうね、あたしならそうするもの。


 なら、取る行動は1つしか無いわね~斬撃を飛ばして、全部迎撃する!


 ダッ!「逃がすか!!」


 なんて、非効率極まりない事なんてしないわよ。思うが早いか、あたしは地を蹴って駆け出し、それに併せてイフリータの炎の塊も動き出す。


 一瞬で視界が引き延ばされて、トップスピードに達してふと思う。これ、時速100㎞くらい出てんじゃね?思った以上に速いんですけど…


 恐らく強化されてるんだろうな~とは思っていたけど、ここまでとはね。100㎞は言い過ぎにしても、チーターには素で勝てそうな気がするわ。


 そうなってくると、やっぱり心配だったのは動体視力なんだけど、それも今の状態なら強化されてるみたいで、ちゃんと認識できてるから良かったわ。視力だけじゃ無く、その他の五感も強化されてるのが解る。


 その証拠に、迫ってくる炎の群れを、気配できっちり察知出来て、チラッと後方を伺ってみる。すると、今のあたしの速度以上のスピードで迫る、小さめの炎の群れが、あたしの辿った道をなぞるようにして迫ってきていた。


 全部ホーミング機能付きか~厄介ね。


 その証拠に、小さめの炎の群れの更に後方には、大きな炎の塊があった。あの小さな炎を当ててあたしを足止めして、その隙に本命で畳みかけるって所か。


 けど、ここまでは予想通りだった。だって、あの炎は全部、あたしの身体を覆う青白い光のオーラと、原理はきっと一緒の筈なのよ。


 イフリータは炎の精霊なんだから、そのオーラの形が炎だとしても可笑しくないものね。ならあの火球は全て、あたしがさっき飛ばして見せた斬撃と、同一の現象なんでしょうね。


 と言う事は、あたしにもああいう風に、斬撃を無数に放ったり、大小や緩急を付けたり、ホーミング機能付けたり出来うる筈なんだけど、いかんせんそこまで出来る気がしないわね。あっちは古参の大精霊で、こっちはピッカピカの1年生なんだし。


 まぁ、1振りで斬撃2~3発出すとかでも、なかなかイメージが出来ないからなぁ~経験の差って言うよりも、固定観念に捕らわれ気味って事なんでしょうけど。


「そらそら!」


 けど、このまま逃げ回ってても、結局じり貧なのよね~後方の火球に追いつかれるのも、時間の問題だし、イフリータがあたしの進路方向に向かって、更に火球を飛ばし始めたし。


 意識を集中して、思考を引き延ばして考えを巡らせていく。精霊になった所で、結局あたしの最大の武器が、集中力だって言う事には変わりないからね~


 現状、十分危機的状況だけど、焦った所で良い案が出る訳無いし、努めて冷静を意識し続ける。勿論、思考にばかり集中して、他がおろそかになってたら意味が無いので、常に五感を研ぎ澄まして周囲の警戒も怠らない。


「優姫さん!!

「ッ!?」


 ちょうどその時だった。呼ばれた気がして視線をそっちに移すと、両手でメガホンを作るようにして、エイミーが何か叫んでいる様子だった。


 さすがにこの速度の中じゃ、五感が強化されているとは言っても、意識をそっちに向けないと気付かないのよね~って言うか、またさん付けで呼んだ?


 まぁ、ついさっき直してって言った位じゃ、急には無理よね~今はそれどころじゃ無いし。


「イフリータ様の戦い方をよく見て下さい!!同じ精霊なら優姫さんにも同じ事が出来る筈です!!

「んな事言われてもなぁ…」


 そうぼやきつつ、言われた通りイフリータに視線を向ける。彼女の言葉は、きっと正しいし、あたしもそこまでは気付いてるのよね~


 とは言っても、そろそろ何かしらアクションを起こさないと、後方の火の玉も迫っているし、サイドから狙い撃ちするように迫る火球も迫ってくる。


 ここは、一か八か双方をギリギリまで引きつけて、交わる接点で緊急離脱するくらいしか、手が思い浮かばないのよね~迎撃の為に斬撃飛ばすにしても、ある程度動きを止めないといけないし。


 そう考えながら、イフリータを観察していてふと思う。あれ?あたし飛べんじゃね?


 風の精霊なら、自由に空を飛んでいるイメージもあるけれど、じゃぁ炎の精霊はどうやって飛んでるの?上昇気流??


 それならなんとなく納得も出来るけど、微精霊とかも同じ原理なのかしら?地の微精霊は、地を這うように移動してる?それじゃ踏まれそうなものよね。


 精霊だから、浮いているって言う事に、何の疑問も持たなかったけれど、仮に精霊は飛べる物だと仮定するなら、じゃぁあたしも飛べるよねって事になるよね?


 そして、気が付いた事がもう1つ。炎の精霊が、炎を使って攻撃してくる…まぁ、当然よね?それは、他の属性の精霊達だって、それぞれ自分達が対応する属性を使って、攻撃手段に利用する筈よね。


 じゃぁ、そもそも()()()()()()()()()()イフリータの変わりに召喚されたんだから、あたしも炎属性なのかしら?


 いいえ、それは無いわ。そもそも、精霊として呼ばれた本体は、あたしじゃ無くてこの刀(九字兼定)なんだから。


 さぁ、答え合わせをしましょうか。なら、あたしの属性は…


 考え得る、導き出した答えを信じて、あるイメージを頭の中で想像する。それは、あたしにとって最も身近で、今のあたしに最も近しい物の形…


 そして、左手に生まれる確かな存在感…それはとても手になじみ、右手に在る物と同じ質感だった。


「フンッ、正解だ。ようやく答えにたどり着いたか。」


 イフリータに向けていた視界に、彼女が面白そうに笑って呟く姿が目に映る。それに向かって不敵に笑ってみせると、あたしは()()()()()()()急ブレーキを掛けて旋回する。


「ハアッ!」


 そしてそのまま、ギリギリまで接近していた背後の火球を、二刀を使って乱れ切りにして、爆炎と噴煙をわざと巻き起こして、イフリータから身を隠す。当然あたしも視界を覆われちゃうけど、意識を五感に集中させて、迫る第2波の気配を伺う。


 身を屈めて、サイドから迫る火球と、切り捨てた火球の後方から迫る、本命の群れをギリギリまで引きつけて…


 ダッ!!「シュッ!」ブンッ!!ドゴゴゴオオオォォォーンッ!!!!


 噴煙から一気に飛び出して、左手の兼定のコピーを投げつける。コピーを本命の一団にぶつけて爆ぜさせると、周り全てを一気に巻き込んで、想像以上の大爆発が巻き起こした。


「うわっ!きゃ~?!」


 予想外の爆発に、素っ頓狂な悲鳴を上げつつ、激しい爆風に煽られながら、なされるがまま吹っ飛ばされる。いやぁ~おっかないわぁ~


 いくら何でもあんなのくらったら死んじゃうわよ、全く…殺す気か!


「殺す気か!」


 余りの威力に、姿勢をくずしながらもなんとか着地したあたしは、ちょっと動揺してたから、思わずイフリータに心の声をそのまま出して抗議した。


「あん?死んでも再生するからへ~きへ~き

「いやそれ全然平気じゃ無いし!いろんな意味で!!」


 余りにも軽い感じで、ヘラヘラしながらそう言う彼女に、あたしは更に抗議を続ける。今サラッととんでもない事言ったわよね?


 それを更に追求している暇は無いんだけど、それにしたって、さっきまでとは考えられないくらい、和やかな雰囲気が流れていた。


 あたしは当然、()()()()()()()()()()()()()()()()()だけで、警戒も集中力も一切途切れさせていないわ。そうやって見せて、少しでも相手の油断を誘うのが、元々のあたしの狙いだし。


 けど、イフリータの場合は違う。観察を続けて、はっきりと解ったんだけれど、腹立たしいけれど()()()()()()()だけなのよ。


 勿論、100%遊んでるって訳じゃ無いんだろうけどさ、イリナスからどんな命を受けているのか知らないけれど、それを懸命に遂行しようって気は薄いんでしょうね。だから、追撃の手も緩いし、要所要所でこんな変な空気も流れているのよね。


 まぁでも、これでさっきエイミーを狙った攻撃も、あたしをその気にさせる為の物だったってのが、確信できたわね。もしも本気だったんなら、あんな低威力の攻撃なんかしないし、ホーミング出来たんなら、エイミーを狙わず直接あたしを攻撃だって出来たんだから。


 それでも、わざとでもエイミーを狙った事に関しては、絶対に許さないけどね~本気じゃ無かったんだったら、殺意は向けないでおいてあげましょうか。


「随分楽しそうよね?

「うん?そりゃ楽しいさ!数千年ぶりに後輩が出来るんだし、昔の自分を見ているみたいで、歯がゆかったり小っ恥ずかしかった事を思い出したりしてさ。なかなか新鮮な気分だよ。」


 あたしの不意の質問に、彼女は屈託なく笑いながらそう答えてくる。それを聞いて、あたしは1人納得していた。


 なるほどね、彼女にとってこれは、可愛い後輩に対する新人教育って訳ね。けれど、ちょっとやり過ぎよね~あの爆発の威力が新人教育の一環なら、相撲部屋のかわいがりなんて、字面通り可愛らしいもんじゃない。


 それがこの世界だと、生き返るからって理由で平気なんでしょ?恐っ!何その精霊に対する教育基準、マジ無いわ~


 う~ん、今更だけど若干早まったかしら?今から無かった事に出来ません?出来ませんね、はいサーセン。

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