表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第一章 召喚編
15/398

各々方討ち入りでござる〜バナナはおやつに入ります?(1)

 それからどしたん?という事で、はい!今あたし達は朝食なぅ、ハッシュタグは朝食、飯テロ、異世界メシ、でっかい芋虫なんて食べれません!でオネシャース。


 貴様また出てきたのか…そしてそこのアマゾネス、躊躇なくいかないで!や〜め〜て〜!あたしの価値観を壊さないで〜!


「…なんだい?こっちをじっと見て。こいつが欲しいんだったら、ほら

「い、いえ。結構です。」


 そう言って、差し出された芋虫を、苦笑いしながら両手を振って断った。折角の好意でも、こればっかりは無理っス、サーセン。


 現在あたし達は、さっきの集会場を離れ、あたしが昨夜泊まった場所の、1階部分の大きなテーブルに、料理を広げて朝食を摂っていた。用意された椅子は5つで、取り皿も5枚だけど、今このテーブルに着いているのは3名だった。


 あたしとジョンとそしてもう1人は、あの時集会場に現れた大女の戦士で、名前はリンダと言うそうだ。


「このガザ虫は、見た目はともかく、味は良いんだよ?異世界人はみんな最初は目を丸くするけどね、こっちじゃ割とポピュラーな食材さね。」


 そう言って、あたしに向けていたガザ虫を引っ込めて、自分でかぶりつくリンダ。ガザ虫って言うのか…知りたくも無かったわ。


 そしてポピュラーな食材って事は、エルフの里でだけで食べられている訳じゃないと言う事。うん、無理。もしもこの世界、動物性タンパク質が、このガザ虫だけだったとしたら、あたしゃ今日からベジタリアンになるわ。


「しっかし、さっきの啖呵はなかなか面白かったわね!あんたなかなか見所ありそうね、ねぇ?

「全然面白く無かったですよ〜もぅ!こっちはずっと肝が冷えっぱなしでしたよ!あんなにみんなを怒らせて…

「てへぺろ☆

「もぅ!」


 か〜わ〜い〜い〜!あたしが茶目っ気タップリで返すと、怒った様に頬を膨らませ、そっぽを向いてしまうジョンきゅんハァハァ…そ、その仕草、堪らんばい。


 まぁそれはさて置き、さっきの集会場での雰囲気とは打って変わって、びっくりする位穏やかな空気が流れている。久しぶりにおこだったあたしも、あまりの落差にちょっとテンション高めだったりする。


 なんで急にそんな和やかやねんゴラァ〜と、思う人も居るだろうし(むしろ、しか居ないだろうけど)あの後の事を順を追って説明しようと思う。


 あの時登場した2人、リンダとエイミーにシフォンと呼ばれた彼女達は、前々からエイミーが冒険者ギルドに、依頼を出していたのを見て、請け負ってやってきた冒険者だった。


 リンダは、身の丈程の大きな戦斧を扱う、見た目通りの重戦士で、冒険者としての階級は銀だそうだ。どうでも良いけど、よく食うわねこの人…


 そしてもう1人の、シフォンと呼ばれていた銀髪に暗色の肌の女性は、まさかと思ってたけどダークエルフの魔剣士で、冒険者としての階級は、なんとエイミーと同じく金だそうだ。元々はエイミーと共に、千年前の邪神戦争で死線をくぐり抜けた、生きた英雄の1人なんだそうだ。


 その後もエイミーとは、よくパーティーを組んでいたらしい。そしてリンダは、現在のシフォンの相棒なんだそうだ。


 それはまぁ一旦置いといて、話を元に戻すと…彼女達の登場で、話の流れはガラッと変わった。実力は申し分無い冒険者2人に、この里1番の実力者エイミーのお墨付きともなれば、まぁ当然だろう。


 ただ問題が無い訳でも無かった。その問題って言うのは、やっぱりベルトハルトなのよね〜


 何があったかなんてあたしは興味も無いんだけど、古いエルフの考え方では、ダークエルフは穢れた存在で裏切り者なんだそうだ。元々エルフ達は、精霊神クロノスとイリナスによって産み出されたと言い伝えられているそうだ。


 そして、そんなエルフ達の一部の氏族が、魔神デモニアを奉るようになり、エルフとダークエルフが分かたれたそうです。byジョン先生


 そういった経緯から、ベルトハルトの様な当時の経緯を体験したエルフ(奴は一体何世紀越えですかと)は、今でもダークエルフを毛嫌いする傾向があるんだとか。逆に、エイミーの様な若い(12世紀越えで若いとか無いわ〜)エルフ達は、教わりはしたけど、そこまで意識していないそうだ。


 なんか要約すると『だってうちらの共通の敵って邪神じゃん?互いの宗教の違いで、世界危機に晒すとか馬鹿じゃん。』って話らしい。神魔教が2つに別れた際、別にエルフ達だけじゃなくて、他の種族からも他の宗教に移ったから、別に珍しい事でも無いらしいんだよね〜


 ま、要するに、当時のエルフ達は心が狭かったって事なのかしらね。あの時のベルトハルトを見たら納得だわ。


 そう思い、1人思い出してほくそ笑む。あの時、2人の冒険者が現れて、真っ先に出たベルトハルトの言葉が『この忌々しい裏切り者め!何しに現れた!!去れ黒耳の女狐!』でした。


 それにいよいよブチキレたのがエイミーたん!『我が友人達を侮辱するのもいい加減にしろ!去るのはあなたの方だ!!』ですって。いやぁ、達って事はあたしも含まれてるのかしらね?そうだとしたら本当にお人良しよね〜


 ムッとして何か言おうとしたシフォンも、そのエイミーの姿は初めて見たのか、キョトンとした顔で目をパチクリさせてたわ。


 その後は、滅多に無いだろうエイミーのマジおこに、周りのエルフ達は沈黙。それでも1人、自分達で盗賊団のアジトに乗り込むのだと、主張し続けていたベルトハルトだったけど、ほとんどのエルフがその気を削がれて、逆にあたしやリンダとシフォンに、協力を求めようと説得されまた激怒。


 結果ベルトハルトは、同じ意見の部下達数名を引き連れて、集会場から出ていったのだった。ちゃんちゃん。


「所で、何故リンダさん達の様な、高位の冒険者さんが、こんな辺境の地に居られるのですか?

「ん?辺境なの?ここ

「はい。この里が位置するのは、ダリア大陸の南方寄りなんですが、この大陸は邪神兵がほとんど出現しないし、強い害獣もあまり居ないので、高位の冒険者の方は、手柄を求めて軍国バージナルのあるルアナ大陸や、ライン大陸で強い害獣を求めたりするのが一般的ですね

「ふ〜ん

「別に不思議な話でも無いさね。」


 そう言われ、改めてリンダを振り返ると、彼女は快活そうな笑みを浮かべて、あたし達に視線を向ける。


「ダリア大陸にゃダリア大陸特有の問題事は多いんだよ。小国が多いこの大陸にゃ、それに纏わり付く政治やら金やらの陰謀が多いし、小国が多いって事は、商人の往来も多いって事さね。そうなりゃ、おたくんとこの同胞を、拐った様な連中もボウフラみたいに沸いてくるって寸法さね

「では、リンダさん達はそういう関係専門の方々なんですか?」


 リンダの説明を聞いて、ジョンが素直過ぎる位真っ直ぐに、目をキラキラさせて疑問を彼女にぶつけた。彼にとっては、自分が憧れる職業の、現役のトップクラスの偉人みたいな人達なんだから、憧れの眼差しを向けるのも当然だろう。


 そんな彼の質問に、しかしリンダは、どこか面白そうに苦笑していた。


「まぁね。うちの大将の方針で、この近隣の街を拠点にやってるよ。基本はギルド所属の商人の護衛や盗賊退治。大将の顔が広いんで、たまにゃ国の要人警護だの厄ネタだのもするけどね

「へぇ〜!」


 と、これは目をキラキラさせたジョンきゅんの、隠すことの無い感嘆の声です。見た目子供だから、冒険譚えお聞かされて、嬉々としている子供にしか見えない件。


「シフォンさんの方針?何か理由でもあるんですか?」


 あたしがそう聞くと、どこか面白そうだった顔は、明らかに人の悪い笑顔へと変わった。


「なんだい、聞きたいのかい?

「え、えぇ

「フッフッフッ…実はね。」


 そう言いながら、悪い笑顔を浮かべる彼女を見て、この時あたしは『あ、この人あたしとおんなじ人種だわ』と、悟りました。


「うちの大将はね、金色の精霊姫と昔パーティーを組んでいたんだけどね、ある日この里の連中に頼み込まれて、この里付きの用心棒になっちまったのさ。なんでも、この里の若い衆が、1人前の狩人になる迄でいいからってね。その時、喧嘩別れみたいな感じになったのを、うちの大将は今でも気にしていてね、以来この里の近くを拠点にする様になったのさ

「ほうほう。って、それあたし達に教えちゃって良いの?

「言いさね。酔うたんびに聞かされてるんだから。大将なら、ルアナやラインでも十分功績を挙げられるのに、金色の精霊姫が心配で心配で、この近くから離れられないんだと

「リンダ!」


 その時、部屋に大きく響いた声を聞き、リンダはニヤニヤしながら振り返る。あたしもそれにならって視線を移すと、そこには耳まで真っ赤にしたシフォンと、驚いた様な表情でシフォンを見つめるエイミーが居た。


 あ〜あ。やっぱり気づいてて、わざとやったんか、あたし知ーらないっと。


 実はあたしは、この部屋に近付いて来る2人の存在に気が付いていた。だから今その話しちゃっていいのかって、意味で聞いたんだけどね。


 まぁ、リンダには何か思惑もあるんだろうし、あたしゃ傍観に徹しますかね。


「あ!貴女!!(わたくし)が居ない間に、なんて話をしていらっしゃるの!

「うん?話ちゃ駄目だったの?毎度毎度大将が酒に酔うたんびに『エイミ〜エイミ〜』って、あたいに泣き付いて来るもんだから、てっきり本人に聞いて欲しいものかと思ってたんだけどね

「なっ!?」


 ブフォ!ちょっ!!その辺もうちょっとKWSK!


 あまりの衝撃発言に、思わず吹きそうになった。マジか〜第一印象じゃ、そんなキャラに見えんかったのに…これは彼女も『たん』付け決定か!


 改めてシフォンを見てみよう。キラめく長い銀髪に、浅黒いと言うよは仄暗い肌のダークエルフの女性で、背は低く150cmあるかどうかと言う所かな。


 体型は、悔しい事に割と出る所は出て、締まる所は締まっている感じ。今は胸当てと剣を外しているので、体型がより良く解るようになっていた。


 顔は…今は見る影も無いけど、最初に見た時は、切れ長の目が印象的な、エイミーとは真逆のクールビューティーに見えた。んだけどなぁ〜そういうキャラか〜


「シフォン…今の話は本当なのですか?

「べ、別にエイミーの為じゃありません!勘違いしないで下さい!」


 ツンデレテンプレキター!!エイミーの言葉に、そっぽを向いて答えるシフォン。


 けど直ぐに、顔を赤らめて何やらモジモジし始める。なんだろうねこの世界、あたしを萌死にでもさせたいんかね?ちくしょうハグしてぇ!


「…大将。謝りたいってのは本音なんだろ?良い機会だから素直になっちまいなよ

「べ、別に(わたくし)は…

「あたいは大将にゃ感謝してるんだ。駆け出しの雌ガキだったあたいを、一端の冒険者にまで育ててくれたんだ

「リンダ…

「それも金色の精霊姫との、パーティーがあったからこそさね。だから、あたいはエイミーさんにも感謝してるんだ。そんな2人が、仲直りしてくれたら、あたいも嬉しいのさね

「べ、別に喧嘩している訳では…

「それに。」


 そこでリンダは、真顔になって話を区切る。その瞬間あたしは『あ、やりやがんなこいつ』と、直感で察した。


「毎度毎度強くも無いくせに酒呑んで『エイミ〜エイミ〜(わたくし)が悪かったんですのぉ〜戻って来て〜』って、絡まれるのも大概にして欲しいんさね。」


 ほらね?爆弾ぶっ込んだ。ウェ〜イ!


「あ、あああああ!貴女!!

「大将。言いたい事があるのは、あたいじゃないっしょ?

「グッ!ッ〜!」


 再び顔を真っ先にして、リンダに詰め寄ろうとするシフォンは、しかし真顔の彼女にそう言われて、ぎゅっと何かを堪える様に、言いたい事を飲み込んだ。そして意を決してエイミーに振り返る。


「エイミー…その、100年前は(わたくし)も言い過ぎましたわ。ごめんなさい。」

 どこかぶっきらぼうに、シフォンがそう言うと、エイミーは優しく微笑み、彼女の頭にそっと手えお載せる。

「シフォン。あの時は私もいけなかったのです。もっと貴女とよく話あっていればと、ずっと思っていたのですよ?だから、謝るなら私の方です、ごめんなさい

「そんな!(わたくし)がもっと貴女の気持ちを考えていれば…

「クスッもうお互いに謝りあったんですし、この話はお終いにしましょう?それに、先程リンダさんが言った様に、私達が別れたから、貴女はこんな素敵なパートナーに出会えたんですよ?」


 そう言って、エイミーは視線をリンダに移し、シフォンもつられてそっちを向いた。殺意を込めた視線で。


「…貴女、後で覚えておきないよ?

「へいへい、モチのロンで。次酒呑んだ時にゃ、どんな惚気話が聞けるのか、精々楽しみにしときますよ。」


 殺意のこもった視線を、リンダは飄々とした様子でそう答えて、更にシフォンを煽ろうとする。そんな2人のやり取りを、楽しそうに眺めながら、未だにシフォンの頭を撫で続けるエイミーだった。


 いやぁ〜良い話だなぁ〜エイミーとシフォンが、どう見ても姉妹にしか見えないんですが、仕様ですねきっと。


 とりあえず、あたしの中の萌えメモフォルダに、シフォン=ツンデレ若干百合と、赤字で書き込んだのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ