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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
92/412

92二俣城落城(戦国、カケルのターン)

 ――二俣城。


 二俣城の後方の楼を上って乱入したカケルが、城主、中根正照と対峙している。


 中根正照が、カケルを睨みつけ、


「お主は、、一言坂の若造ではないか」


「あっ! 本多忠勝と一緒にいためっちゃ強いオジサン」


「お主が、城内に背後から攻め込んでくるということは、正面の寄せ手は、赤備え山県昌景が参戦したということか。こうしてはおれん、すぐさま、青木の救援に向かわねば」


 と、中根正照が、カケルを捨て置き、青木貞治の救援に駆け出そうとしたとき、


「待ってよ、中根さん!」


 と、カケルが大千鳥十文字槍を振るって、雑兵を打ち据えて、中根正照の大手門への道に立ち塞がった。


「若造、なんのつもりじゃ?」


「中根のオジサン、大手門へは行かさないよ」


「ほう、頭の悪い若造じゃ、黙って、ワシを通せば死なずにすんだものを」


「者ども、この若造を取り囲むのじゃ!」


 と、中根正照は雑兵たちへ号令をかけた。


「ええええええええーーーーーー、中根のオジサンズルいーーーーーー! 今の展開、一騎打ちの場面でしょうよ!」


「バカかお主は、今は戦の最中じゃ。城主であるワシが、そう簡単に一騎打ちなどするものか、しかも、お主は一人、袋のネズミじゃ」


 と、そこへ


「左近殿、我ら山家三方衆、長篠城の城主菅沼昌貞、満直が助太刀致しますぞ、雑兵の相手は我らにお任せあれ!」


「ええーーーーっ、長篠の菅沼さんたちは、田峯の大膳さんたちとちがって、一騎打ちを引き受けたりしないのね?」


 すかさず、当主、菅沼昌貞に成り代わり実権を握る大叔父の光直が、


「左近殿は知らぬやも知れぬが、われら山家三方衆は三位一体それぞれに役割がござってな、田峯城の菅沼親子は戦専門、作手亀山城の奥平は戦戦略専門、我ら、長篠の菅沼は平時の吏僚りりょう(事務など役人的な性質)外交戦略や使いにでるのが役割、戦には向きませぬ」


「どひゃーーーーー! 早く教えといてよ。だったら、水汲みろうの打ち壊しを長篠の菅沼さんにお願いして、城攻めは、田峯城の大膳さんたちにお願いするんだったよ」


「いや、左近殿、それも、違いますぞ。われら長篠の菅沼は、力仕事はまったく向きませぬ。自慢じゃありませぬが、普段から、箸より重いものは持ったことがありませぬぞ。その証拠に、今も、刀を持つ腕がプルプル震えておりますぞ。ここの戦は、左近殿におんぶに抱っこですぞ、うはははは~~~~!」


「いやいやいや、長篠の菅沼さん、自信満々に、そんなこと言われても困るよ」


 カケルと長篠の菅沼一家のやり取りを聞いていた中根正照が、しびれをきらして、


「ええい、話を聞けばお主たちは、木偶の棒の集まりではないか、多少、時間はかかるかも知れぬが、邪魔するならば、槍に血を吸わせるまで!」


 中根正照は、そういうと槍を小枝でも軽々振り回すように回し、カケルへ向かって槍をつけた。


「若造、まずは、一番厄介なお主が相手じゃ」


「ええっ、おれからーーー、やだよ。山家三方衆の時からずーーっと、一騎打ち負け続けてるもん」


「若造、怖じ気づいたか、しかし、ここは、戦場、立ち塞がるからには、手加減はしてやれぬ。さあ、かかってまいれ」


「しかたないな、じゃあ、こっそり練習していたアレをやるか」


「アレとはなんじゃ?」


 カケルは、新体操のバトンのように軽々と、大千鳥十文字槍を体躯からだのまわりでクルクル振り回しだした。


「我こそは、武田家先鋒衆、赤備え山県昌景の急先鋒をつとめる『期待の超新星』嶋左近! 愛槍あいそう大千鳥十文字槍を一刺しご覧にいれよう」


 カケルのパフォーマンスに年齢の近い長篠の当主、菅沼昌貞がポツリと、


「よっ、あっぱれ嶋左近日本一!」


 と、合いの手を入れる。


 それを聞いた大叔父の光直が、甥の昌貞が、


「お主が、こないだの温泉の折に、こっそり田峯の大膳と左近殿に呼ばれてこそこそ密談をしていると思ったら、こんなことを練習しておったのか、ワシは情けない」


「すみませぬ。これ以外にも、左近殿と菅沼大膳、ワタクシ、奥平信昌、さらに、まだ、話しては居りませぬが、山県虎様を加えて、なにやら、”戦隊もの”と、申す舞も練習しております」


「まったく、お主たちは何を考えておるのか」


 菅沼満直は呆れて頭を抱えた。


「ええい、何をバカバカしい舞を披露しておるのじゃ嶋左近、こけおどしはよいからかかって参れ」


「よ~し、行っちゃうよ中根のオジサン!」


 そういうとカケルは大千鳥十文字槍の突きを放つ。


 カケルの突きに応じて、中根正照が、槍を振るって受け止める。


「ほう、粗削りじゃが、なかなかの重い一撃を放ち夜わ」


「そうかな中根のオジサン、おれ、最近は毎晩、山県虎さんに稽古をつけてもらってるから、ちょっとは上達したんじゃないかな」


「ほう、では一言坂で本多平八郎殿とやりあった時は、天武の才でやりあったと申すのか、ならば、これ以上、成長されてはいずれ、徳川にとって厄介な敵になる。すまぬが若い芽は、若いうちに摘み取らしてもらうぞ」


 バチン!


 バチン!


 バチン!


 中根正照が、鋭い突きに、すべてをなぎ倒すような振り払いを放つが、カケルは小枝でも操るように、大千鳥十文字槍を振るって応じる。むしろ、


「中根のオジサン、手加減してるでしょう? ありがたいけど、もっと、本気だしていいよ」


「なにを、小癪な若造!」


 シュシュシュ!


 シュシュシュ!


 シュシュシュシュシュ!


 中根正照の乱れ突きだ。


 これにも、カケルは軽く応じる。


「中根のオジサン、槍遅くない?」


 今度は、こっちからいくよ。せーの!」


 ドスン!


 カケルは、大千鳥十文字槍を突くのではなく、大金づちのように、中根正照の脳天目掛けて振り下ろした。


 さしもの中根正照も両腕で支えて槍で防いだが、あわれ、カケルの、いや、嶋左近の体躯からだが持って生まれた膂力りょりょくで打ち下ろした一撃に、ぽっきりと折れ、頭の兜が大きく凹むくらいに打ち据えた。


「うおーーーー! 左近殿が敵城主中根正照を懲らしめたぞ! それ、嶋左近の初勝利じゃ、皆の者、勝鬨かちどきを上げろ、えい、えい、おーーーー!」


 と、同時に、二俣城の大手門が外から開き、騎馬に乗る赤備えの小男、山県昌景が二俣城の副将、青木貞治を縄で縛り引っ立てて入城してきた。


 山県昌景は、城内で城主中根正照を打ち据え、仲間の信頼を勝ち得たカケルを一目見るなり、まるで、我が子の成長を見守る父親のようなあたたかい目をして頷いた。




 つづく


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