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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
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90二俣城攻略戦(カケルのターン)

 二俣川を、いかだに乗った赤備えの山県昌景の先鋒隊大将のカケル(嶋左近)以下、寄騎の山家三方衆が、二俣城の背後にある水汲みろうへ向かって、急流を下ってくる。


「みんな、水汲み楼の打ち壊しだ。かかれ~!」


 カケルが、号令をかけると、大斧を担いだ田峯たで城の赤鬼、青鬼、と渾名あだなされる菅沼定忠、大膳親子が筏から飛び降りて、二俣城の水汲み楼へ取りついた。


 両腕でぐるっと腕をまわしても掴みきれない水汲み楼の柱へ、大斧を振るう菅沼親子。


「左近殿、長篠城の菅沼昌貞殿と、満直殿とともに兵を率いて、城へ攻め込み、時間を稼いで下され」


 作手亀山城の策士、奥平定能の作戦で、楼を駆け上がるカケルと長篠城の菅沼昌貞、満直。


「左近殿、兼ねてから山県昌景殿との手筈通り、我らが背後を急襲したのと時を同じくして、正面から、山県殿の赤備えが攻めかかり、こちらへ城主の中根正照を、あちらで二俣城の怪物、青木貞治を分断する手筈です」


「まかせといて~、ドカンと、暴れちゃうよ」




 ――時を同じく、二俣城正門。


 城と川をつなぐ橋の上で武田勝頼の兵を散々に打ちのめし奮戦する怪物、青木貞治。


「おりゃ、おりゃ、おりゃ~、武田の兵どもは腰抜けばかりか、さあさ、命の惜しゅうない者は、かかって参れ」


 武田勝頼の兵たちは、怪物のように次元を超えた奮戦をみせる副将の青木貞治にもはやなすすべはない。


「なんとかいたせ、勝資かつすけ(跡部)!」


 敵将、青木貞治になすすべのない兵たちにしびれを切らした勝頼がジレテ、跡部勝資をムチで打ち据える。


「勝頼様、お許し下され。あの青木と申す者なかなかの戦上手。我が志隊八将ではもはや太刀打ちできるものがございません。ここは、お館様へおすがりあそばして、四天王の出座を願わねば我らはじり貧にございます」


「何を、勝資、ワシに父上、いや、四天王へ頭を下げよと申すか!」


「もはや、ここに至りましては」


「イヤじゃ、イヤじゃ、今、父上に頭を下げれば、きっと、あの山県が出て来おるはうけあい。ワシは、兄(武田義信)を死に追いやった、あやつにだけは何が何でも頭を下げるのはイヤじゃ」


「とは、申されても義信様は、お館様を追いやろうと画策されたやのよし、むしろ、山県昌景殿が、その兄、飯富虎昌殿をも諸共に、謀反を未然に防いだは忠臣の鑑。勝頼様は、何をもって、あの山県殿をさように憎まれます」


「あやつは、いつも父上の側について、ワシを見下しおる」


「山県殿に限って、そのようなことはございますまい」


「いいや、あやつは、ワシを見下しておる」


「さように申すからには何か理由がござりますので?」


「あやつは、武田家の後継者が兄、義信に決まり、ワシが、諏訪家へ養子に出されるとき、笑いおった」


「笑った?」


「そうじゃ、あやつは武田本家を去ることに決まったワシを見下すように笑いおった」


「しかし、笑ったぐらいで、山県殿をお憎みあそばすのは早計かと」


「いや、ワシはあやつが気に入らん。あやつと共にした戦場ではワシはいつも、あやつの後塵こうじんをなめる。ワシは、あやつの忠臣の鑑のような生き方も、戦の器量も、何より、父上に見込まれて居るのが気にくわん」



 と、そこへ、


「殿、急報にございます!」


 と、急を伝える速足の足軽が、陣中に駆けつけた。


 勝資が、目配せして、


「なんじゃ、手短に申せ」


「はっ、ただいま、二俣城正門に”風の将”赤備えの山県隊が、布陣致したとのことでございます」


「なに、お館様より二俣城の攻略の任を任された、ワシらに断りなく山県隊が現れたじゃと、スグに行って後方に控えて居るように伝えるのじゃ!」


「いや、しかし……」


「いや、しかしなんじゃ」


「山県殿の布陣は、お館様からの命令にござる。それに、山県殿からこれを……」


 と、伝令は、懐から、文を取り出して、勝資へ渡した。


「貸せい!」


 勝資は、伝令から文を受け取ると、目を見開いた。


「これは?!」


「どうしたのじゃ勝資?」


「これは、我らが、これより後は山県殿の命令に従うように命ずる。お館様からの命令書にございます」


「なんじゃと! 貸せい!!」


 勝頼は、文を鬼の形相で目を通すなり握り潰した。


「おのれ、憎っくきはやはり山県。いずれ、いずれ……」


 そう言うと、勝頼は立ち上がって、文をバラバラに千切り捨て陣を後にした。



 ――二俣城正門。


 赤備えの騎馬隊が凸山型に兵を配置する魚鱗の陣で、出番を待つ勝頼の兵を真っ二つに掻き分けて現れた。


 先頭の山県昌景が、副将の三枝昌貞を呼び、耳打ちする。


「お任せ下され」


 昌貞は、そう言うと、一騎、駒を進めて正門前の橋の上で奮戦する青木貞治目掛けて駆け出した。


「そこに、おわすは二俣城の怪物、青木貞治と見た。我は山県昌景が家臣、三枝昌貞。一手ご教授願いたい!」


「なに、山県の三枝昌貞じゃと、これは、相手にとって不足なし、どこからでもかかって来られよ」


「ならば、よし!」


 そう言うと、三枝昌貞は、「せいや!」”石火電光”の如く馬を駆った。


 青木貞治と、三枝昌貞の駆ける槍がすれ違った。


 ドサリ!


 そこには、横たわった青木貞治。


「二俣城の怪物は、この山県隊の三枝昌貞が懲らしめたぞ。さあ、皆の者、城門を打ち壊せ!!」




 ――二俣城。


 二俣城の後方の楼を上って乱入したカケルが、城主、中根正照と対峙している。


 中根正照が、カケルを睨みつけ、


「お主は、、一言坂の若造……」



 つづく



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