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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
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78武田勝頼(戦国、カケルのターン)

楽しみにご覧くださる皆さま、お待たせ致しました。二週間ぶりの更新でございます。


死期迫る信玄と、血気にはやる武田勝頼、そして、山県昌景……。

これから、武田信玄のクライマックス三方ヶ原の戦いへと向けて、歴史は動きはじめます。

ご期待ください!

 奥三河、伊井谷を抑え三河からの徳川の援軍を遮断した山県昌景隊は、武田信玄本隊に合流した。


 武田信玄本隊は、徳川家康の居城浜松城を守る最後の城二俣城を睨んだまま、浜松から二俣城への補給路にあたる同じ北遠江(静岡県北東部)の要堅な支城只来城を、武田四天王の筆頭、”鬼美濃”こと馬場美濃守信春に五〇〇〇の兵をあずけ攻めさせた。



 さらに、信玄は、合流した山県昌景を、武田信玄の息子で最有力の跡継ぎ候補の武田勝頼の軍監としてつけ、残りの支城、天方城あまがたじょう一宮城いちのみやじょう飯田城いいだじょう格和城かくわじょう向笠城むさかじょう攻略へ向かわせる。


 この、五城は、今川氏から徳川家康が取り込んだ城主たちで、まだ、徳川譜代の家臣のような忠義心はない。


 第一の城、天方城の天方通興あまかたみちおきは、信玄本隊から五〇〇〇の兵をあずけられた武田勝頼と、軍監の山県昌景が嶋左近に伊井谷攻めにあずけた残りの二五〇〇を率いて取り囲んだ。



 ――勝頼の陣。


 天方城攻略へ向けて、絵図面を囲んで軍議を開く勝頼とその側近、跡部勝資あとべかつすけ土屋昌恒つちやまさつねを筆頭に、両翼に、安部貞村、小原広勝・忠国兄弟、温井景宗、河木道雅、秋山昌詮あきやままさのり勝頼志隊将八将が居並ぶ。


 指揮棒を振るう、跡部勝資が、


「それでは、軍議をはじめる!」


 すると、それを止めるように、秋山昌詮が制する。


「あいやまたれよ、跡部殿、ここに軍監の山県昌景殿が居られぬようだが」


 跡部勝資は、指揮棒を手で打って、長いアゴ髭をしゃくって、


「山県殿は必要ござらん」


 と、言い切った。


「御館様より直々に軍監として付けられた山県殿が必要ないとはどういう料簡にござろうか、お聞かせいただきたい」


 勝資は、御館様、武田信玄の言いつけを守り、軍議の席に、山県昌景が居ないことに異を唱えた秋山昌詮を見下すようにアゴをつきだして答えた。


「この陣には、御館様の後継者、勝頼殿がおわす。御館様は、山県殿の軍監は形だけ、全軍の指揮はこの勝頼様にお任せする心積もりとおみうけする。それに、遠江の五城など、山県殿の力がのうてもたわいもない」


 秋山昌詮は、膝をすすめて、


「やや、能吏のうり(事務処理にすぐれた役人)の跡部殿には分からぬやも知れぬが、戦人いくさにんは慢心は天敵にござる。そのような甘い心では、戦場でいつ命を危うくするかわからぬぞ」


 勝資は、秋山昌詮を、あざ笑うように薄く笑って、


「フフッ、秋山殿は、武骨者ゆへ兵站へいたん(後方で、戦の食糧や武器の補充をすること)にどれほど金がかかるかはご存じないやもしれぬが、此度の戦、京への上洛までの計画の物資不足は、日追うことに増えておる。ここで、山県殿の赤備えの兵馬が出陣となれば、莫大な金がかかるであろう。されば、此度は、我らだけで戦おうというのだ」


「されど……」


 と、秋山昌詮が、口を重ねようとすると、


「黙れ、秋山! 此度の戦に山県はいらんと申したわワシじゃ」


 と、ピシャリと、勝頼が制した。


「なんと! 」


「此度の戦は、山県の武勇はいらん。徳川を相手にワシが武勇を高めて、武田の代名詞”山県の赤備え”から、ワシの赤備えに塗り替える所存じゃ」


「なんと! 勝頼公は、山県から、その異名を乗っ取り、切り捨てる所存にあらせられますか! 」


 すると、勝頼は立ち上がって、跡部勝資から、指揮棒を受け取ると、秋山昌詮の前まで来て、シュッ! と、昌詮の首へあてがった。


「昌詮、不満か」


「いいえ、そのようなことは……、勝頼様に従います」


 と昌詮は、ぐぬぬと、思いを押し込めた。


「ならば、よし! 我ら信州諏訪大明神の旗を掲げ一気に、天方城を攻め上げよ! 」



 すると、そこへ、


「ご注進! ご注進!! にござる」


 足軽が駆け込んできた。


「なんじゃ、申せ」


「ハッ、ただいま、敵城天方城城主が、山県昌景が赤備えの進軍に恐れをなして、一戦も交えず降伏したとのことにございます」


「なに!? 山県めは、兵を動かしただけで、城を落としたというか! ぐぬぬ、おのれ山県め、ワシに従わず勝手なことをしおって、ええい、これ以上山県めに先を越されてはおれん、皆の者、残りの四城を一気に総攻めじゃ! 」



 この時、すでに、赤備えの山県昌景の参戦と、天方城降伏の知らせをうけた残りの、一宮城、飯田城、格和城、向笠城は、恐れをなして、皆、軍監の山県昌景に降伏の使者を送った。


 しかし、それを知った勝頼は怒り狂ったように、四城の降伏の使者を斬って捨てた。勝頼は、一宮城、飯田城、格和城、向笠城と、順番に、降伏を受け入れたフリをして開門させた。そうしておいて、勝頼は、一気に兵をなだれ込ませ、それぞれの城主とその家族を亡き者にした。


 天方城、一宮城、飯田城、格和城、向笠城は、五城は、わずか、一日にしてすべて落城した。


 その五城攻略の手柄は、軍監の山県昌景から、すべて勝頼の者として、信玄に報告された。



「父上、申し上げたき義がござる」


 と、二俣城を睨む武田信玄の陣中に、山県昌景の使い番につづいて、武田勝頼自ら息巻いてが現れた。


「どうした勝頼」


 と、信玄は静かに聞いた。


「こたび五城の手柄として、父上に代わって、二俣城攻めの指揮を任せていただきとうござる」


 信玄は、瞑目して、ふーっと、長い息を吐いた。


「わかった。二俣城攻略の采配は勝頼に任せるやってみよ」


 と、信玄は深い目をして、勝頼に采配を渡した。



 つづく





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