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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
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60いざ!(戦国、カケルのターン)チェック済み

「急報でございます。武田家よりの使者で嶋左近と申す者が降伏勧告の使者として参っております」



 長篠城と作手亀山城で敵味方が疑心暗鬼に陥り二分されたところへ、武田家山県昌景からの文を携えた戦国武将、嶋左近と魂が入れ替わった現代の高校生、時生カケルが現れた。


「我が主、山県昌景は、ご城主様、菅沼正貞殿か作手亀山城の奥平定能殿どちらか一方の首を差し出せば、後の将兵の命は助けると申しております」


 この、ひとことで、長篠城は崩壊した。もともと、家を別々とする独立独歩の菅沼と奥平だ。ただでさえ、互いに疑心暗鬼に陥り結束が乱れたその時、もはや仲たがいは決定的だ。


「これは、われらを仲たがいさせる武田の策にございますお気をつけくださいませ」


「何を申すか武田と内通した奥平の子倅こせがれが」


 長篠菅沼家と、作手亀山奥平家は、互いに、一触即発、今にも刀を抜かんばかりに睨みあった。


 囚われの信昌は、武田の疾風と呼ばれる山県昌景はここまでするのかと痛感した。


 昌景は一兵も失わずに、長篠城中を混乱、崩壊させ、城主の首を取るのだ。



「もう一つ、山県昌景から降伏の提案があり申す」


 と、カケルが一触即発に睨みあう両家の間をついて話した。


 長篠、作手亀山、すべての視線がカケルへ集中する。


「この提案は、他でもござらん。長篠菅沼家、作手亀山奥平家ともに、無条件で降伏し城を明け渡し、さらに!」


「さらになんじゃ!」


「さらに、この、嶋左近の与力として麾下きかに組み入れるという申し出にございます」


「なに?!ワシらにお主の与力になれと言うのか!」


「はい、それだけで、誰一人の命を損なうことなく。主、山県昌景が本領安堵の証文を書くとのことにござります」


(してやられた!)


 奥平信昌は、山県昌景の手のひらでおどろらされていることに唸った。


(やはり、戦国最強を誇る武田四天王と呼ばれる男、山県昌景が、山家三方衆奥三河の田舎侍とは器量が違いすぎる。もはや、この上は無念であるが武田家山県昌景、嶋左近の麾下へ下るしかあるまい……)




 ――設楽原


 その日、帷幕を張った山県昌景の陣に、降伏した長篠城の城主、菅沼正貞、叔父で後見役の光直、作手亀山城の城主、奥平貞能と、嫡男、信昌が、嶋左近ことカケルに案内されて現れた。


「よく自己を捨てて参った。菅沼正貞、奥平貞能よ」


 と、帷幕の奥に座していた、居並ぶ強者たちを従える大将の小男、山県昌景が、満面の笑みで長篠城に立て籠こもっていた将兵を出迎えた。


(これが武田四天王の山県昌景という男の器量か……)


 と、長篠城崩壊のきっかけを作った奥平信昌は思った。


 山県昌景は、山家三方衆を従えた嶋左近を筆頭に、まずは、はじめに従った田峯城の菅沼定忠、大膳父子。次いで、作手亀山城の奥平貞能、信昌父子、長篠城の菅沼正貞と叔父の満直と一献ずつ酒を酌み交わした。


 最後に、嶋左近ことカケルへ酒を注ぎに来た山県昌景は、ニヤリと笑って。


「やはり、ワシの見込んだ漢だ」


 と、カケルの盃にトクトクトクと酒を注いで、一気に、注がれた酒をあおり顔を真っ赤にしたカケルを頼もしそうに見定めて、


「これで、お主の知行はワシの与えた四〇〇石、四〇〇に加え、田峯、作手亀山、長篠、それぞれ五〇〇づつ加えて、兵一九〇〇人の一団だ。これでようやくワシの風林火山の先鋒”風”の将を任せられるな」


「おれが風林火山ってマジっすか!」


「それから左近よ、徳川との戦が終わった暁には……」


 と、言いよどんで「ちょっと、これへ」と、帷幕へ控えた赤備えの武将を呼んだ。


「これ、兜を脱がぬか」


「はい、父上」


 兜の下から現れたのは女。先の奥平信昌を捕らえ、長篠城降伏に働きのあった山県虎だ。


「徳川との戦が終わった暁には、この虎をもろうてくれぬか?」


 と、山県昌景が切り出した。


「ええっ、マジっすか!」


「まあ、しばらくは左近、虎の兵一〇〇を加え嶋左近隊は二〇〇〇の精鋭部隊として働いてくれ、目付としてもちろん娘の虎も使わす、まずは、この虎の人成りを知ることだ」






 翌日――。


 カケルと虎との縁談の話は徳川との戦いが終わった後ということにして陣を引き払った。


 先頭を真新しい真紅の赤備えで固めた赤い一団が街道を行く。


 ”風”疾きこと風の如く。


 第一陣を二〇〇〇の兵を率いる山家三方衆と山県虎を目付に従えるおっちょこちょいの嶋左近ことカケル。


 ”林”ずかなること林の如く


 第二陣を”冷静沈着”山県昌景の兄、虎昌以来の家老、孕石源右衛門はらみいしげんうえもん


 ”火”侵略すること火の如く


 第三陣を”石火電光”昌景の娘婿の、三枝昌貞と、”紫電一閃”山県家の付家老、広瀬景房。


 不動うごかざること”山”のごとし


 本陣を、”疾風怒濤”武田信玄の薫陶を受けた武田四天王、山県昌景が務める。



「兵馬、兵糧、将兵の蓄えは充実した。これより、我ら三河方面軍、甲斐を出発れたお館様(武田信玄のこと)と挟撃して、遠江国、浜松の徳川家康を討つ!目指すは三方ヶ原よ、いざ、すすめ!」






ー第一章、奥三河攻略戦 (カケルのターン)ー了ー




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