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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
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50企みの裏道(戦国、カケルのターン)チェック済み

 作手亀山城の米蔵ごとの調略を命じられた戦国武将、嶋左近清興と魂の入れ替わった現代の高校生、時生カケルは、武田忍、くノ一の望月(もちづき)千代女(ちよじょ)の案内で抜け道の古寺へきた。


「この古井戸が城への抜け道になってるんだね」


「さようにございます。ただ……」


「ただ、なんなの?」


「ただ、この井戸はまだ水脈が生きております」


「え? え? どういうこと?」


「井戸へ入る時間を誤れば抜け道になっている水路が塞がってしまいます」


「うん。ぜんぜん話が呑み込めないけど、簡単に言うとどういうこと?」


「この抜け道を使うと窒息死する可能性があります」


「え~! やっぱり、簡単な抜け道ってないのね」


 カケルがブツブツ不満を言ってると、千代女は、ザブンと井戸へ飛び込んだ。仕方なく、カケルも井戸へ飛び込んだ。



 井戸は、直径1メートルほどしかない。体格の差異のある男と女であってもこの古井戸へ2人で入るには窮屈だ。


 千代女は、くっつかんばかりに、顔を近づけて、


「左近殿、泳ぎは得意であらせられますか?」


「うん。小学生の頃はスイミングへ通っていたから多少は自信ある」


「それはよかった。わたしが先行しますのでついてきてください」


「え? ちょっとタンマ! 泳ぐって、さっきから不安に思っていたけど、この井戸、石を積み上げた壁ばっかりでどこかへ繋がりそうな抜け道らしいところないじゃん?」


「ええ、ここから呼吸を止めて潜って抜け道へまいります。では」


 と、千代女はカケルの心の準備も待たずに潜ってしまった。


「マジかよ。マジかよ。戦国の人って、みんなムチャクチャな人ばっかりだよ」


 仕方なくカケルもついていくことにした。




 ――作手亀山城城中。


 城主、奥平定能が、嫡男、信昌以下家臣たちを集めて、来たる武田の赤備えこと山県昌景隊の脅威に備えて軍議を開いている。


 見るからに理知に勝った青白い顔をした定能が、暑くもないのに神経質に扇子をパタパタと、顔に風でもあてないと落ち着かないのか、しきりに仰いでいる。定能はキリっとヒステリックな視線を噛みつくように家老の小幡次郎兵衛へ向けて、


「次郎兵衛、そちに言い渡した徳川の援軍要請はまだか!」


「はい、確かに殿の仰せにしたがって酒井忠次殿を仲立ちに、徳川の殿へ間違いなく援軍要請は致しております」


「徳川殿は何をグズグズしておるのじゃ。田峯城は武田の赤備え山県昌景に落とされ、菅沼親子は武田へ下ったというぞ。次は、ここ作手亀山じゃ、一刻を争う緊急事態にグズグズ、グズグズ……」


「あとしばらく、あと、しばらくの辛抱にござりますぞ」


 イラつく定能のやり取りを冷静に見ていた嫡男の信昌が静かに口を開いた。


「父上、田峯城へ忍ばせていた間者の報告では、山県昌景は、行軍の兵糧をすべて田峯の城兵に食わしてしまい兵糧は残り僅かであると報告が参りました。幸い、我が作手亀山には父上がコツコツ蓄えた兵糧が5年分もあります。敵の狙いはこの兵糧、きっと、烈火の如く城を攻めて参りましょう。ここは、山県昌景隊が迫る前に、おっと、もしやするとこの評定にも武田とすでに内通しておるものがおるやも知れません。父上、少しお耳を拝借……」


 信昌の耳打ちを聞いた奥平定能は、一瞬、眉を曇らせたが、


「籠城だけが策ではないの、信昌が申す一計、考えて見ても、よいかもしれぬな」


 と、奥平定能はウンウン頷いた。



 ――水路。


 長い長い水路を、息を1分余り止めて泳いだ先に、ようやく息継ぎができるひょっこり頭を出せる空気溜まりがあった。


「ブッは! もう少しで窒息死するとこだったよ」


 先についていた千代女に、カケルは不満を漏らした。


「左近殿、この水路をあと三度潜り抜けねば作手亀山城へは達しません。呼吸が整ったら再び参りましょう」



「ちょっと、待って! あと三回も息を止めて潜らなきゃならないの?」


「そのようにございます」


「そのようにございますって、千代女さん。もしかして、この抜け道へ来るの初めてじゃないよね?」


「はじめてではございません。ただ、この先は先ほどより、息を止める時間が行けば行くほど長くなって行きます」


「え?マジで?」


「では、先へ参りますぞ」


 と、千代女は行ってしまった。


「戦国の人は、どうして誰もかれもムチャぶりばっかり、うんもーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 カケルも後へつづいた。




 1つ、2つ、3つの水路を越えようやく作手亀山城内の井戸へとついた。


「左近殿、ほれ、手を貸しますぞ」


 井戸の底へついたカケルへ千代女が手を伸ばす。


 城内へ上がったカケルは、城内に違和感を感じた。


「千代女さん、なにかこの城静かすぎないかい?」


「確かにここは城中でも、人影の少ないところだと思っておりましたが、人の呼吸すら聞こえませぬな」


「もしや!」


 カケルは、そう言って駆け出した。


「ああああああああ! 城がもぬけの殻だ!」


「左近殿、蔵へ来てくださいませ!」


 カケルが、蔵へ駆けつけると、四つある蔵を一つづつ確かめてみると、米粒一つ落ちていないもぬけの殻、蔵へ住まうネズミの影すら見えなかった。


「奥平の策士にしてやられた。米が作手亀山城に無いとなれば、我が山県昌景隊の行軍もままなりませぬ。すぐさま、作手亀山城のコメの足取りを追わねばなりませぬ。わたしは、足取りを追います。左近殿は、スグに山県殿へ報告を!」




 つづく

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