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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
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47見張りの糸(現代、左近のターン)チェック済み

「これはアカン! 完全に浮気の予兆や、ほっといたら大変なことになる。いいかカケル、これからオレたちは月代とあいつが不純異性交遊しないように尾行するぞ!」


 と、親友の右近は、左近の腕を引いて、月代と男の後を尾行した。



 月代と大学生ぐらいの男は、近鉄奈良を降りた興福寺へ向かうコジャレた商店街を肩を寄せあい仲睦まじく行く。

 時折、互いの肩と肩がぶつからんばかりだ。


「おい、カケル。あの二人の様子はただならぬ仲だぞ」


「右近殿、いくら月代殿が仲睦まじく男と密会しているとはいえ、まだ、二人の仲が、男女の深い仲へ発展しているとは限らぬではござらぬか。尾行などよそう。やめにせぬか」


「アッ! あの野郎月代のほっぺをどさくさに紛れてつつきやがった!」


 そういうと、右近は、左近の控え目で冷静な大人の思考を、首根っこを脇抱えにして引っ張って連れて行く。


(月代殿にも、この現代の世の中においては男も溢れておることだし、自由恋愛と申すのか、出会いも自由、恋しさも、愛しさも自由というもの……)



 やがて月代と大学生は奈良商店街の大通りを一本外れた裏路地へ曲がって、コンクリートむき出しのコジャレたビルの2階の店へ入って行った。


 尾行する右近と左近は、店先まで来ると、


「カフェ・バー『イエローローズ』」


 と、立て看板へ店名を書いた黒い和紙を張り付けて、本日のランチメニュー、「鶏白レバームース 980円」、「馬肉のカルパッチョ粒マスタードソース 1280円」、「鹿肉の炙り味噌漬けクリームチーズ 1890円」と、白文字で書いている。


「カケル、ここはオレたち高校生には敷居が高い店だな」


 と、右近がさみしい財布と相談しながら、ひらひらと1000円札を風にかざした。月代を追いかけて2人で店へ飛び込むのは躊躇しているようだ。


 左近も、自分の財布を開いて見た。


「1500円しか有り申さん」


「帰りの交通費をのぞいたら、二人合わせて軍資金は2000円か」


 右近は、左近へ1000円をおもいきって突き出して、


「カケル、行ってこい!」


 渋る左近へムリから掴ませて、”グッジョブ”と、親指を突き立てて送り出した。



 左近は、白のマスクに、ゴリラシルエットのローキャップを目深にかぶって、プチ変装をして店内へ忍び込む。


 店内は落ち着いている。白壁と木目で統一したテーブルとイスを配したモダンな装いだ。


「いらっしゃいませ!」


 カウンターテーブルに囲まれたキッチンで、シェフが鉄板で香ばしい肉を焼き、香り付けに赤ワインを注ぎ火柱を立てている。


 左近は、


「なんじゃこれは台所から天井まで火柱が上がっておるではないか、これは一大事! 」


 左近は、機転を働かせ、ナイフやフォーク、キッチンペーパーを置いていているテーブルに一緒に置かれたレモンのスライスを浮かべたピッチャーの水を引っ掴むと、すぐさま鉄板の火柱へ向かってぶちまけた。


 ジュジュジュジュジュ……。


 料理へ水をぶっかけられたシェフも、入店と同時に暴挙に出た左近を見送った店員も、店の客も皆の目が左近へ向いている。


 何事が起ったかと、一瞬、何が何だかわからなかったシェフも店員も我に返って左近を取り押さえた。


 しかし、ここは戦国一のおとこ左近、取り押さえようとしたシェフと店員を合気道のような所作で転がした。


「誰か、警察、警察を呼んでくれ!」


 と、転がされたシェフは客へ助けを求めた。


 騒ぎを聞きつけたのか、奥の個室へ入っていた月代と大学生が顔を出して、左近の立ち回りを見守っている。


 左近へ2人、3人で何とか組み付いたシェフが、左近の帽子とマスクを剥ぎ取った。


「カケル君、どうしてここへ!」




 奥の個室でテーブルを囲む月代と大学生と左近。


 大学生が、左近を叱るように、


「君が月代ちゃんの幼馴染みじゃなかったら、いくらボクがオーナーの知り合いでも穏便にはすまなかったんだからね」


 左近は、悪びれもせず頭を下げて、


「すまぬ大学生殿」


 と、頭を下げた。


「でも、どうして月代ちゃんの幼馴染みの君がここへ」


 左近は、尚、堂々と襟を正して胸をはり、


「月代殿と、大学生殿が仲睦まじく街を歩く様子を偶然見かけて、ただならぬ仲ではないかと訝しんだからにござる」


 クソまじめに堂々と、申し開きをする左近の様に、話を聞いていた月代はおかしくなって、微笑みに小悪魔のようないたずら心を含みながら、


「カケルくん、ヤキモチ焼いたんだ」


「そのようにござるな」


「ウフフ、かわいい」


 左近と月代の会話を聞いていた大学生もようやく2人の関係を飲み込んで、


「ああ、月代ちゃんが一緒に東京の大学へ進学する時に誘った相手は彼だね?」


 月代は、笑顔でコクリと頷いて、


「おもしろい人でしょう?」


 大学生は、左近の人と成りを上から下まで見定めて、


「一見すると、どこにでもいる平凡な高校生みたいだけど、話す言葉、戦う姿、立ち居振る舞いは戦国時代からタイムスリップでもしてきたかのようなサムライでユニークな男だね」


 月代は、親しげに大学生に、


「そうなの昔は今と変わらずかわいらしい人だったけど、最近は、性格に一本筋が入ったみたいにたくましく成って魅力的になったの」


「どおりで、彼に会って、月代ちゃんが言っていた、魅力がわかったよ。そうだ、月代ちゃんの幼馴染みで、彼を東京へ連れて行くなら、自己紹介しておかなくっちゃね」


 と、大学生は、姿勢を正して、


「ボクは月代ちゃんの叔父の北庵春陽ほくあんしゅんよう、君たちが東京の大学へ入ったら2人の先輩ってことになるかな。よろしくたのむよ」






 つづく

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