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何を募集するんでしょうか?

「求人広告?」


不思議そうに自分を見る二人の前を横切ると抱えていた書類を下ろし、手近にあった書き損じの紙を手に取る。


「こんな感じでしょうか?」


団長机の上に紙を広げ、ユークリッドはそこに簡単な例を記していく。


「まずは何の職種を募集するかを明示します」


「第5竜騎士団料理人?」


「料理を作る仕事と分かれば充分です」


サラサラと一番上に急募と書いて職種には“料理人”とする。


「勤務地は第5竜騎士団の食堂ですね」


勤務地は“第5竜騎士団”と書く。


「この様に仕事内容がよく分かるように情報をきちっと明記して人員を募集します」


そう口で説明しながらも簡単なイメージを記せばそれを覗き込んでいたレイが自分を見上げてくる。


「ギルド依頼と何が違うんだ?」


その言葉にユークリッドは少し考えると上司に視線を戻す。


「一番の違いはこちらが勝手に募集するのでギルド保証がないこと。ですが、貼る場所はこちらが選べるのでより多くの人に募集しているということが伝わると思いますが………」


「でも、平民は字なんて読めないぞ?」


ユークリッドの言葉にアルフレットも即座に異議を訴える。アルフレットの訴えにユークリッドも頷く。


「はい。なので、珍しければ内容を知る人間から身内に話題として話が行きますよね?口コミで広がれば第5竜騎士団が料理人を募集している事がより多くの人に伝わります」


「あ………そういう事か………」


「なら文字が読めなくても問題ないか」


「何より文字が読める方がいれば今の職場より待遇がいいと転職してくる方も見込めます」


ユークリッドの言葉に納得した二人は更に紙を覗き込むと質問を続ける。


「働く時間ってのは?」


「おおよその勤務時間ですね。こちら所属の団員達なら砦の警備もあるのでだいたい朝の1鐘から6鐘。日勤なら閉鎖鐘まで。時間の幅はありますが、何交代制なのかとか分かれば職場の仕事をよりイメージしやすくなるようにします」


「イメージ………」


ただ食事を作る仕事にイメージとか必要なんだろうか………。

ユークリッドの言葉に一抹の疑問は抱きつつも更に紙を見る。


「賃金?」


「はい。これだけ働いて頂ければこれだけの収入は保障するという約束ですね」


「そんな約束して大丈夫なのか?」


「働いてもらわないと人員の不足はどうにもなりませんからね」


前世から職場の人員不足に悩まされているユークリッドは強く主張する。


「料理人を募集しているので即戦力の筈です。面接では能力を試験し、第5竜騎士団の食堂で働けるかを見極めます」


『………はぁ………』


ユークリッドの強気発言にレイとアルフレットは曖昧に頷く。そんな二人を前にユークリッドは拳を握って訴える。


「ですが! まずは応募がなければ人は集まらない!まずは集めることが大切です!人員の不足は職場の士気を下げるんです!」


自分もかつて責任者であったが故に、人員不足を補うために長時間労働を強いられていた中間管理職であったユークリッドは高らかに叫ぶ。


「………とまぁ………熱くなってしまいましたが………これならギルドに貼らなくても大丈夫では?」


二人が自分のいつもと違う姿に唖然とする姿を視界にいれたユークリッドは“こほん………”と軽く咳払いをして戻ってくる。


「ま………確かに………な………」


普段からそう感情のままに訴えることのないユークリッドの豹変した姿にちょっと驚愕した事は言えないままにレイはユークリッドの書いた求人広告なるものに目を通す。ユークリッドの言うように先に支払う給金額を示せば後で揉めることもない。ギルド依頼で多いのは成功報酬で後は依頼人との交渉となってくる。ものによっては経費の方が高くつく時もある。暫しの間、考えてみたレイは“うん”と頷いて決断する。


「悪い考えじゃないし、やってみろよ。形式と内容はユークリッド。お前に任せる」


「ありがとうございます。やってみます」


異世界でも求人広告は通じるだろうかと上司の反応を伺っていたユークリッドはその言葉にやる気をみなぎらせて頷く。その反応を確認し、レイは更に具体的に案を詰める。


「料理人の基本報酬は後で確認するとして。で、どこに貼るつもりなんだ?」


求人広告の内容はだいたい分かったが後は人を集めるために効果的な場所に貼る必要があるだろう。時間を割くからにはそれなりの報酬は期待したい。上司の問いかけにユークリッドは唸る。


「そうですね………」


街の食堂や掲示板は必須だろう。後は………


「とりあえず、街の食堂や掲示板。後は………自警団や警備隊の詰所………あ、関所の掲示板とか見るかたが多くてよさそうですね」


ユークリッドの満足気な笑みと同時に放たれる一言にレイとアルフレットはもれなく沈黙する。


“なんでそんなコアな場所に貼るんだよ!!”


確かに街の食堂なら同じ料理人が読めなくても紹介してくれる可能性がある。街の掲示板も催し物の告知をしているのでまだ合格ラインだ。………でも………何故、自警団と警備隊の詰所にまで貼るのだろう。もれなく犯罪者の手配書や盗賊団などの注意書と一緒に貼られる求人広告。考えるだけで一際異彩を放っている。誰がそんなあやしい広告に応募してくるのだ。それとも………ユークリッドは犯罪者の更正を狙っているのだろうか。いつもながらに残念な副団長にちょっぴり涙が出そうになりながら第5竜騎士団団長レイ・アルフォードはしみじみと口を開く。


「ユークリッド」


「はい?」


一切、自分の発言がおかしい事に気づいていない副官は満足げだ。そんな相手にレイは遠い目をしながら問いかけた。


「悪いけどお前………誰を募集する気なの?」


-手配書の隣に貼られた求人広告-


誰を対象に募集するのか………真剣に教えて欲しいと思った。

いつもお読みいただきましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。交番の中に指名手配犯のチラシのよこにコンビニバイトの募集の紙とか貼られてても………嫌だなと思ってしまいました。

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