エピローグ──決戦前夜(後編)
「…………エマ。……エマ、」
肩を揺さぶるクロードの声で目を覚ました。
リビドの郊外にある酒場だった。カウンターのロックグラスの氷はとっくに溶けて、色の薄い液体になっている。隣にいたはずの商人は、もうどこにもいなかった。
クロードはさらさらとした銀髪の下、むっと眉根を寄せた。
「こんなところで酔いつぶれるなんて不用心な……」
「ク、クロード様!? いつからここに……ア、アスター・バルドワルトと一緒にいたんじゃ?」
「夜中に抜け出してきた。おまえがいつまで経っても宿に戻る気配がなかったから」
らしくないな……と眉をひそめる。その様子に、エマの胸が小さく鼓動を打った。
こんなとき、エマは秘かに錯覚したくなる。クロードが自分を本気で心配してくれているのではないかと。
ともに過ごした二年間──クロードは、エマの中の何かを変えた。
「報告を聞こうか」
「は、はい」
隣に座ったクロードにエマは慌てて居住まいを正した。
そうして足枷付きの少女に関するエマの報告を聞き終わると、クロードは宿に戻ると言って席を立った。エマも影のように付き従う。
夜明けを待って凍える石畳をふたりで歩く。空は早くも朝の訪れを予感させて白み始めていた。
ふと、エマはクロードの背中に声をかけた。
「……クロード様、」
「うん?」
「私は確かにルリアのためにここまで来たけど、でも、今はそれだけではありません。……あなたとは運命共同体だと思ってますから」
──それがエマにとってどんなに大切な言葉か、クロードはきっと一生知ることはないだろう。
それでも、振り返ったクロードはふっと笑った。
「…………そうか」
その表情が満足げに映ったのは、エマの気のせいかもしれなかったけど。
リビドの町に、朝が訪れる。
それが最期の日になろうと、エマはきっと後悔しない。
ルリアとクロード──
自分の大切なもののために過ごす一日なのだから。
(『葬送のレクイエム(外伝)』──完)
(※『葬送のレクイエムⅡ──不死鳥の巫女と殲滅のつるぎ』へ続く)
※※作者より※※
ご愛読、本当にありがとうございました(*´ω`*)
明日(元旦)から
「第Ⅱ部──不死鳥の巫女と殲滅のつるぎ」を開幕します。
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みなさまにとって、
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