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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第3章 狂乱大阪編

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修学旅行20日目 午前8時48分

 午前8時48分……


 色塗りを赤松と須絵の二人は騙し絵を作るように命令されて、二人悩んでいた。

 互いのノートに色々と案を出し合い──


「勢いよく承諾したのは良いんだけど……」

「現実は中々難しいものですねぇ」


 ノートを睨み合う事約一時間、二人は体勢を変えずにネタが浮かばなかった。

 下書きを書いてはバツを描き、下書きを書いてはバツをつけていく。


「可愛い絵を描いて来た身としては、ホラーは管轄外だからな」

「同じくファンタジーや青春物は得意ですが、ホラーは得意じゃないんですよね」

「うーむ」


 二人を同じように腕を組んで悩み、長い沈黙が続く。

 浮かぶ時は一瞬で浮かぶ。でも、浮かばない時はとことん浮かばない。

 閃きと言うのは、簡単には来ないものである。


 更に二〇分後──

 同じ体勢で二人はノートに向かい合っていた。

 あれから更に案を出したのか。

 須絵は可愛い女の子のキョンシーや、包帯ぐるぐる巻きの女の子ゾンビなどを描いた。

 イラストとして可愛さは100点満点。でも、このイラストが敵に通じるかと言われた正直微妙の一言だ。


「可愛いですね。これなら、ヒロインとして映えますよ」

「そうではあるけど──うーん」


 赤松は言葉には出さないだけで、その顔からは焦りが見えていた。

 須絵自身も分かっている。こんなんじゃ、敵の妨げにもならいと。

 可愛い絵は今まで嫌と言うほど描いていた。

 でも、このようなホラーテイストの作品は描いた事が無い──と言うよりも避けて来た。

 数多のホラー漫画の巨匠たちはどうやって、迫力があり、子供たちを恐怖させたのか。

 頭の中で張り巡らせた──

 そんな二人の前に──


「何をしているのー?」


 突然、何の事情も知らない結衣が暗闇より覗いて来た。


「うわっ!」


 二人は声を上げ、お化けを見るように驚いて体勢を崩した。


「そんなに驚かなくても良いじゃない? お化けじゃないんだから」

「こんな暗闇の中でいきなり現れたら誰だって驚くよ……」

「二人は何してるの?」

「やはりマイペースな子だな」


 マイページな結衣に二人は心は一旦安らぎつつ、内緒話と釘を刺して今の状況を説明した。


「他の人には話しちゃダメだからね」

「私は口固いから大丈夫! 任せなさい!」


 鼻息荒く、冒険に出発する主人公のように胸を叩く結衣。

 二人は本当に大丈夫か? と不安になりながらも、何か良い案が浮かばないか聞いた。


「怖い人をこわがらせる絵? ってことだよね」

「まぁ、そんなところだね。でも我々にはどうも良い案が浮かばなくてね。子供の君にも何か意見が欲しいんだ」


 子供と言う言葉に反応したのか、結衣は頬を膨らませてそっぽを向いた。


「結衣は見た目は子供でも心は大人ですよーだ!」


 二人は地雷を踏んでしまったか──めんどくさいとわずかに思いながらも、宥めるながら謝った。

 何とか機嫌を治してもらい、結衣にも何か案が無いかもう一度頼み込んだ。


「ごめんごめん。君は心は大人だから」

「そんな広い心を持った君にも考えて欲しんだよ」


 媚びへつらうように頭を下げて、案を頼み込む。

 大人、広い心などのワードに笑みがこぼれた。


「そんなに私の意見が欲しい?」

「うんうん!」


 二人が重なるように頷き、結衣も単純なのか簡単にその気になった。


「しょうがない! 私も手伝ってやるか!」

「ありがとうございます!」


 主従関係のような構図が出来上がったところで、三人で話し合う事にした。

 その前に赤松が結衣に疑問を問いかけた。


「そんなノリノリだけど、怖くないの?」

「う~ん。怖くないかな。幸久もおじいちゃんもいるから!」


 満面の笑みで答え、本当に無邪気な子だなと、改めてまだまだ子供だなと感じた二人。

 口に出すとまた面倒になるので須絵が話を切り出す。


「じゃあ結衣ちゃん。君が怖いと思うモノは何かな?」

「う~ん。パパとママと三人でお化け屋敷に入ったけど──」

「うんうん」


 二人は重なるように頷いた。


「ミイラとか白い顔をお姉ちゃんとか!」

「うんうん、それでそれでどうだった?」


 二人はどう怖かったのか、どんな風な恐怖を感じたのか──期待に胸を膨らませた。


「ママが叫んでばっかりだったかなぁ?」

「結衣ちゃ自身は?」

「大人だから怖くなかった!」


 自信満々に答えられ、二人は後ろにひっくり返った。


「それじゃあ、回答になっていないよ! 一個くらいビックリしたのあるでしょうに」

「一個くらいぃ……? あ、そうだ!」


 なにか思い出し、手をポンと叩いた。


「いきなりドアから出てきたのはびっくりしたよ!」

「ありきたりなやつだな」

「でも結衣よりもママの方がびっくりしていたよ!」

「お化け屋敷なんだから、それくらい身構えていたら怖くないだろ」

「結衣は少しきゃ! って言っただけ!」


 ──ッ!?

 二人の押し問答を見て、須絵はピンと閃か、無意識にペンでノートに書き出した。

 今の結衣と赤松のやりとりに、ヒントがある。

 お化け屋敷──

 いきなり現れる──

 そうか! 須絵は二つのワードから一つの案が閃いた。

 漫画の案が浮かんだ以上に、良い案だと声を上げた。


「こ、これだ!」

「な、何?」


 須絵は驚いた二人に描いたノートを突きつけた。

 そこにはお化け屋敷の構造のような絵が記されていた。

 回転ドアからお化けを出現させたり、上からミイラを落としたり──お化け屋敷の定番とも言える仕掛けの絵が書かれていた。


「お化け屋敷ですよ、お化け屋敷!」

「お化け屋敷──か。なるほど」


 この絵にある仕掛けに赤松も結衣も頷いた。


「ただ絵で脅かすんじゃなくて、そこに仕掛けを加えるって訳か」

「本物のお化け屋敷みたい! これなら、みんなびっくりするよ!」


 これなら、敵を驚かす事も仕掛けによる警戒など、様々なアドバンテージがある。

 ドン! といきなり脅かすにも、種類は沢山ある。

 それはお化け屋敷にある。

 そう考えた須絵に、赤松が一言──


「だが、仕掛けたとは言え、後は絵だ。可愛いミイラとかキョンシーじゃ、すぐに敵は順応してしまうな」

「それが難点ですねぇ」


 仕掛けを作って怖いのは出て来たその瞬間のみ、恐怖を感じる。

 でも二人が想像するのは、次なる仕掛けに相手はどんなお化けが出て来るかオドオドする光景である。

 だからこそ、もっと怖い絵にしたい、考えたい。

 一番の手詰まりだと、二人は悩んでいると──


「皆んなでこれ読もう!」


 結依が何冊か本を抱えて持って来た。

 怖い話が載っている本やおすすめのホラー映画特集の雑誌など、沢山のホラー関連の本であった。

 本には押絵がいっぱいあり、


「これなら、良い絵描けるでしょ! 結依、もっと探せしてくる!」


 結依の危機感が伝わっているのか、分からないが一生懸命手伝ってくれている姿に二人は互いの顔を見合った。


「結依ちゃんのように元気よく頑張りましょうか須絵さん!」

「はい!」


 二人もやる気を出して、本を読み漁りながら様々な絵を書き記した。

 そんな結衣を含めた三人が盛り上がっている近くを幸久と雅宗が通りがかった。


「どうやら、向こうも上手く進んでいるようだな」

「あぁ、俺らは入らない方がいいな」

「結衣がいるのが気になるが──まぁ、あのお二人に任せればいいか」


 結依はどうせ気まぐれだろうと、幸久はあまり気にしていなかった。

 二人とも休憩したいが為、あまり結衣の相手はしたくない。

 そっとその場から離れようとした──


「お二人さん、お疲れやで!」

「うわっ!」


 秀光がいきなり二人の前に懐中電灯を自分の顔に当てて現れ、脅かして来た。

 二人はビックリしてその場に尻もちをついた。


「こんな時ばっかり、突然現れやがって!」

「ごめんて、驚かせて!」


 そう言って手と手を擦り合わせて、へらへらと浅い謝罪をして来た。


「いいよ、少しは楽な気分になったから」

「あんがとやで、ほんま!」


 暗く、寒い空間の中で誰よりも明るく、声の大きな秀光。

 そんな彼の振る舞いに、雅宗は表情が柔らかくなり、少し緊張が緩和した。

 正直──気が楽になった。

 反対に幸久は数歩後ろへと下がって険しい顔のまま聞く。


「で、いきなり何で俺らの前に現れた」

「そんな雷親父のような顔をしなさんなって! 近くで聞いてだぇ! マジモンのドンパチをヤル気やってな!」

「隠れて聞いていたのか……」

「ごめんやて。興味深~い話やったから」


 話を聞いていたと言って、めんどくさい奴に聞かれたなと思う幸久。

 だが様宗は──


「どうせ、お前話を聞いても、何もせんだろ」

「ちっちっちっち」


 人差し指を振りながら言い、キラッとした目で言い返した。


「俺も手伝うで。ほんの少しな」

「どういう吹き回し?」


 この時午前9時02分……

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