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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第3章 狂乱大阪編

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修学旅行19日目 午後0時05分

 

 午後0時05分……


 ドアが大爆発を起こし、少しだけ時間を過ごしてから、部下達は部屋へと突入をした。


「いない……」


 リビングへと侵入し、捜索するも由弘達の姿は見当たらなかった。

 部屋全体を隈なく探したが、誰もいなかった。


「脱出したのか?」

「隣の部屋も探せ!窓から移動したかもしれん!」


 隣の部屋、はたまたその階全域を探したがどこにもいなかった。

 全員で部屋をくまなく探す中、一人がバルコニーに出ると、何かに気づいた。


「おい!ガキどもこっから逃げたんじゃないのか!!」


 それは、バルコニーに設置してある避難用のハシゴだった。

 中を開けるとハシゴが下ろされており、一階まで開けられていた。


「まさかこれで逃げたって訳じゃ……」

「そのまさかだろ!誰も何で気づかなかったんだよ!!マンション住みの奴はいないのかよ!!」


 パーマ髪の男が声を荒げて言うも、その場の全員が首を横に振った。


「全く……今から追うのは無理だぞ」

「どうするよ。逃げたなんて言ったら大目玉どこじゃすまねぇぞ」

「まぁいい、疑われた時はどうにかして、乗り切ろう」


 逃したと報告すれば日吉に何されるか分からない。

 全員に緊張感が走った。


「日吉さんって高校からあんなんだったの?」

「そうだよ。キレたら何するか分からん。ムカついた先公にガスバーナーで火炙りにしたほどだからな。俺の髪も昔ガスバーナーにやられて、こんなチリッチリにされたんだからな」


 そう言ってパーマ頭の男はヘルメットを取って、チリチリの髪を全員に見せつけた。

 全員、「わーお」と引き気味な声を上げた。

 パーマ髪の男はヘルメットを被り直すと、話を続けた。


「飛悠雅さんと刃留斗さんは日吉さんの態度に快く思っていなかったけど、戦闘なら二人相手でもこちらがダメージを大きく受けると考えた飛悠雅さんらは巧みな話術で日吉さんを戦うことなく仲間に取り込んだとよ」

「無血開城だぁ」

「二人とも口だけは相当達者らしいからな」


 話していると外から一発の銃声が鳴り響いた。

 全員が逃した事がバレたと思い、すぐに外へと出た。


「敵はぶっ殺したか?遅すぎだぞ!!」


 銃声は日吉が外に撃ったものであり、単に催促する為の銃声だったようだ。

 ほっとした一同だが、ここからである。


「殺したか聞いてるんだよ!!」

「さっきの爆撃で死んだ見たいです!」

「殺したなら、さっさと降りてこい!!」

「は、はい!!」


 全員、胸を撫で下ろして、そそくさと一階に降りて日吉と合流をした。

 日吉と一部残っていた部下の周りには複数の感染者が脳天をぶち抜かれて倒れていた。

 近くでみると、少し服に浴びた血がとても不気味に見えて、まさに殺人鬼に見えた。


「よくやった……と言いたい所だが」

「な、なんですか?」


 日吉は銃口をパーマ髪の男の額に突きつけた。


「本当か?嘘ぉ、とかついてねぇよな?逃げられたとかじゃねぇよな。なぁ、和樹(かずき)。俺らに嘘は禁止だよな」


 パーマ髪の男こと和樹は、額に夥しい汗を掻いた。

 嘘がバレたら、横たわっている感染者と同じになる。本当のこと言っても同じことになるのは明白だろう。

 怯んだらだめだ。ここで後退したら後はない。なんとしてもここは嘘を貫き通すぞ。と決心した。


「ほ、本当ですよ!ならば、一緒に見に行きますか?5階ですけど……それに焼け焦げて臭いのなんのって」


 精一杯の抵抗。

 共に5階に行った仲間達もヤバいと感じた。こんなの怪しすぎると、あからさまに来るなと言っているようなものだと。

 だが、日吉は銃口を下げた。


「めんどくせぇからやだ。さっさと戻るぞ!!仕事終了!!」

「は、はい!!」


 和樹や仲間達は全身の力が抜け、猫背かなりながら日吉の後ろをついて行った。


「単純で助かった」

「全くだ」

 

 *


 その頃、由弘達は──

 ハシゴのお陰で、扉が爆発したと同時に降りて行ったのだった。

 そのまま現在、マンション付近を大きく迂回して、デパートへの帰還を目指していた。

 その道中、蒼一郎は由弘へと嬉しそうに語りかけていた。


「時には尻尾巻いて逃げるのも大事だよな。銃相手に帰るかっての」

「避難用のハシゴがあって助かったな。敵が発見に遅れたのも不幸中の幸いだな」

「でも、爆弾まで使ってくるってイカれてるぜ。そこまでして俺らを殺したかったのかよ」


 龍樹も同じように爆弾を使って来た奴らの事を言及する。


「銃に爆弾。まるで軍隊だ」

「俺達を殺しに来ているなら追手が来るやもしれん。木田さんらにも伝える為に急ごう」


 *


 更に同じ頃──

 飛悠雅は弟の台莪にプレゼントと言わんばかりにとある事を行っていた。

 学校より何発もの銃声と飛悠雅の笑い声が響いていた。


「さぁさぁ、頑張って生き残ってくれ!さっはー!!」


 校舎窓から飛悠雅の目に写っているのは、校庭の真ん中に数体の感染者から逃げている制服姿の茶髪の男子生徒だった。


「ゾンビよりも、やっぱり生身の人間って狙いづらいもんだね!」

「そりゃ、そうだろ。不規則に走るからな」


 飛悠雅の隣では弟の台莪がその男子生徒に狙いを定めて何発も銃弾を撃ち放っている。


「兄さんも趣味が悪いね。感染者と僕の銃から逃げ切ったら、僕にしたイジメを全て許すなんて」

「でも、今は気分がいいだろ?復讐できて」

「まぁね。気分は最高潮さ。カーストが逆転してるんだからね!」

「俺がこのタイミングで帰ってこなければ、お前終わっていたぜ」


 そう言いながら台莪の頭をわしゃわしゃと撫でながら掻き乱した。


「ちょっ、何して──」


 長い髪を掻き乱されて視界が遮られた時、引き金を引いてしまい狙いが定まってない状況で発砲した。


「無駄撃ちしちゃったじゃんかよ」

「そうか?見てみ」


 飛悠雅の手を払い、目視すると男子生徒の足の付け根を銃弾が貫通していたのだ。

 男子生徒は地面に倒れて、痛みからか足を手で抑えて苦痛の表情を浮かべていた。


「命中した!?」

「不規則な動きには不規則な対応をしなければ当たらないもんさ」

「ここぞとばかりに言っちゃって」


 男子生徒が台莪と目が合うと、血のついた手を見せつけながら両腕を上げた。

 その目には涙が浮かんでおり、もう対抗できないという意思を示していた。


「ゆっ、許してくれ!土下座でもする!下っ端としてでも働く。奴隷でもいいから、助けてくれ!!」

「……そこまで言うか。なら、そのままの状態で待っててゾンビ達が近くにいるから……」


 銃を再び構えてスコープを覗き、数秒静まり返った。

 そして、一発撃ち放った。


「……ねん!……逃したか」

「えっ……」


 銃から目を離した台莪は悔しそうな顔で、指をパチンとポーズを取るが音は出なかった。

 だが、変なことに台雅の声がまばらに聞こえ、片耳がずっとキーンとなっている。

 次第に右耳と右指から熱くなるような激しい痛みが襲いかかって来た。

 自分の指を見た男子生徒は絶叫した。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 先程まで身体に付いていた右手の中指と人差し指がなく、右耳を貫かれていた。血は止まることなく、大量に流れ続けて地面には小さな血の池が出来るほどだ。

 付近には微かに残った指の肉片や爪が散乱していた。

 流石の光景に飛悠雅も笑いながらも引き気味の笑顔になった。


「けっ、お前こそ趣味悪りぃじゃんかよ」

「ひひ、手が滑ったんだよ。たまたま」


 男子生徒は涙で目筋を真っ赤にし、無くなった指を抑えて声を荒げる。


「死ね!!お前は死ね!!お前の方がクズだ!死ね!」

「やっと本音が出たね。ところで僕を跪かせた時、僕が理由もなく君に謝った時に、君は僕になんて言ったか覚えてる?」


 台莪が感情のない声で言い、男子生徒は焦りの表情で答えた。


「し、知るかよ。そんなの……」

「……そっか。なら、その言葉をそっくりそのままお返しするよ」


 そう言って台莪は口角を上げて、不気味な笑みを浮かべながら引き金に指を置いた。


「生きてる価値のないお前に言われても、何の慈悲もない」


 台莪は引き金を引き、男子生徒へと銃を撃った。

 銃弾は男子生徒の撃たれていないもう片方の足をを貫いて、男子生徒はバランスを崩してその場に倒れ込んだ。


「うぎゃぁぁぁ!!痛い!!痛いぃぃ!!」

「大声を出しちゃダメだよ。周りを見てよ」

「……!?」


 男子生徒の周りには何十体もの感染者が囲んでいた。

 大声を出し続けて、その音に釣られて大量に集まって来たのだ。

 男子生徒は逃げようとするが両足を撃たれているため、まともに動く事が出来ず、感染者から逃げる事が出来ない。


「助けてくれ!!ごめんなさい!助けてください!」

「嫌だね。没落した君にはこれがお似合いだよ。せいぜい苦しんで死ねよ!」


 台莪は銃を引っ込めて、抵抗が出来ず、ジワジワと囲まれて感染者に覆い被されていく姿をジッと見つめた。


「痛い!やめろ!!うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 身体中を噛みちぎられ、生々しい肉を喰らう音に噴き出る血。生きていて聞いたことない悲痛な叫び声。

 人間はこんな風に死んでいくんだと、窓から身を乗り出して自分をいじめていた生徒が死んでいく様をこの目に焼き付ける。


「す、凄え迫力……映画以上だ。予想以上にグロテスクかも……でも、めっちゃ興奮する!」

「想像以上だな」


 飛悠雅でさえ目を逸らすが台莪は瞬きせずに目を見開いて、飛び散る肉片や血を見て興奮が止まらなかった。

 そして生徒の叫び声が聞こえなくなるまで笑って見ていた。


「ははは!!いい気味だ!!」


 感染者が何体かいなくなり、頭や腹の骨が丸見えになり、完全なる肉塊になった姿に興奮が絶頂に達した。

 身体の半分を窓から出して落ちそうになった時に飛悠雅に服を掴まれて戻された。


「お前、俺より十分やべぇじゃんかよ」

「ふぅ……ふぅ……はぁ」


 我を忘れたように声を荒げていたが、次第に興奮が治ったのかその場に腰をおろした。

 目は落ち着いたが、口角は上がりっぱなしで笑みを浮かべたままであった。


 この時、午後0時29分……

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