46話 村でへこむ! (ユウタ、セリア、モニカ、アル、シグルス、イープル、アーティー、ロイ、アーティ母、ドス、スール、クー、ルイム、ゴブリン)
某日某時刻 森の中
「皆、逃げろ! はやく」
「こんなやつらまで用意してたのかよコボルト共」
「ゴフッフッフ・・・。ギャガギャ!」
「ナル・・・逃げ切れる?」
「クーの阿呆、逃げきれんと食われるで!」
「そうはいっても、できるだけ時間稼ぎしてながらです。・・・分散は期待できそうもありませんよ?」
「ん・・サワオだけでもいけるでしょ。」
「こんな時だからの冗談はやめてください。ルイム捨てますよ?」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「こんな時に恋人同士で痴話喧嘩してんじゃねえよ。まったく走れってぇ」
「むん! その通りだ、急ぐぞ。・・・森の外まで逃げるぞ、逃げながら攻撃だ。だが・・それまでに覚悟を決めろ」
「おおー!」
◆
村から空を見上げる。と、雲一つありはしなかった。
再建されて白い土壁は明るい未来だと信じたい村人の気持ちか。
だとすると暗いのは俺の気持ちか。
本当に村経営とか出来るのか?
スタッフというか私兵とかもいるんだろうか。
まあなるようになれで放り投げる・・・。
というのもありなんだけどさすがに無責任だ。
村長の屋敷を出ると窯はこっちだったっけ、てくてくと歩いていく。
窯で付近でイチャつく男女が二人。
誰だよまだ昼だぞ! 叱りつけてやるべきか。
アーティとロイが接吻していました。
・・・トホホ。俺は一体何の為に誰の為に戦っていたのかわかんねえよ。
もう邸宅に帰るか?
しょうがないのでそっと離れると木を置きに木材生産兼置き場に移動する。
気分が落ち込む俺は、トボトボと資材置き場でイベントリを開いてどんどん木を置いていく。
気分と気持ちは最悪だ。
が、天気は清々しいくらいに晴れている。
ふー、やれやれだ。報われねえ。タバコが欲しい。未成年だけど。
側によってくる村人がいる。スールさんアンタもか。
今は、そんな気分じゃない。邪魔なんだ。話しかけないでくれ。
いまなら魔王、神だろうがなんだろうが殺れる気がするぜ。
くっそ。やけくそになってグレてやろうか。
頭の中はぐちゃぐちゃだが話しかけてくる。やけ酒でも煽るか?
そういえば麦酒作りも進めないといけないのに。
ゴメスさんはいないそうだ。どうする。
「よう、ユウタ。見てたぜ代官に任命されたとこよ。お前さんもこれから大変だな」
「スールさんありがとうございます。・・・そこで相談なのですが、スールさん冒険者と掛け持ちでペダ村警備員でもどうですか? 期間限定でもいいので考えて見てください」
この村に兵隊がいないからなあ。自警団レベルなわけで。
なんというか都合よく人材集めしていかないと。
はあ、頭が痛くなってきたが立ち止まる訳にもいかない。
人と関わるって大変だ。
「そうだな。けど此処に腰を落ち着けるにしてもなあ。王都のほうがずっと便利なんだよな色々とな。ヒロさん達に自重しろっていわれてるけどよ、故郷で結婚式を挙げたらまた冒険者稼業再開するしな。考えとくけど今すぐに返事はできねえ。わりいな」
「そうですよね。我ながら面倒なこと引き受けたなと思います」
実際めんどくさいことばかりなんだろうな。
定期的に、チラッと来てくれるだけでもいいんだけどな。
お金はない。兵隊もいない。土地もない。権利もないような・・・。
当面見えているのは税金集めの義務だけかよ。
面倒だ。一人の女性が話に割り込んでくる。
「あのー。お話中よろしいでしょうか」
「おっと悪い。おやアーティのお母さんかどうしたんだ?」
「あのこれをウチの子から預かって来てまして」
なんと山盛りになったパンがバスケットに入っている。いい匂いをさせている。
アーティが焼いてくれたのだろうか。
嬉しいような、悲しいような複雑な気分だ。
アーティが歳をとったらこんな感じになるのだろうか。
赤毛にポニーテールしているスラリとした30代かな。
美人さんだ。
もうちょっと若ければ・・・十分射程圏内だ。
ロクドさんもよくこんな奥さん捕まえたよな。
突き出されたバスケットの手は農民とは思えないような。
艷やかな手をしている。人妻でなければ・・・。
なあおい。
イベントリを開くとバスケットのパンを詰め込んでいく。
いい出来じゃないか畜生。
「ありがとうございます」
「あの子ったら自分で渡さないといけないのにほったらかしにして。それでは失礼します」
「アーティのお母さんまたなあ。んっとまあなんか落ち込んでいるみたいだけどよ。元気だせよな、村の税金集めが仕事になるんだろうけど色々やれることは多いんだぜ? 気楽にいこうぜ」
いやまあ当たっているようなあたっていないような。
励ましてくれてんのかなあ。スールさんありがとうございます。
きっと頼りなさそうで右も左もわからない小僧を励ましてくれているんだろう。
「ところで、スールさん達は警備の合間何をされているんですか?」
「そうだな、薬草取りやら森からはぐれでた奴を狩ったり道具の修理したりだな。あとゴメスさんの送迎なんかもだ。そこでついでにクランの連中と連絡や相談したりだな。結構退屈しなくて済んでるぜ」
やっぱクランとかレギオンとかギルドがあるといいなあ。
根なし草の無いものねだりだろうか。
退屈ではないと言っているが、しきりに腰に下げる剣の柄をいじっている。
もっとモンスターと戦いたいという感じだ。
「えっとそれでこれ今日の依頼料なんですが・・・」
「お・・・。おー、ああ。それな、もういいんだわ。昨日からなんだが急にクランを指名で依頼が来てよ。ちょうど6人、つーまあ数もぴったしなのが来てな。連絡に相談とったっつったのもそれがあったんだよな。そんなわけでもう依頼料もらうわけにゃいかねえ。気持ちはありがたくもらっとくけどよ、二重取りになっちまうからな」
「はあ。でもどこの誰が、こんな何もなさそうな村に警備依頼を出したんでしょう」
「そりゃおめえ。んーほらお前んとこの王族様じゃねーの? まあ推測でしかねーけどな。でもそれくらいしか見当たらねーよな」
「確かに」
二人して頭抱える不思議な光景だ。
んーむ、まあアル様がゴリ押しでもしたんだろうか。それともなにか俺の知らないところでいろんなことでもおこっているとか。判断がつかない。色々考えられるけどどれもこれもありすぎて考えがまとまらない。
そういえば、そろそろ赤毛ポニーテールな美女がやってくるんじゃないだろうか。タイミング的に。
黒髪の角刈りに顎が割れた筋骨隆々な190cm越え。だが、色々残念な兄貴でガチムチマッチョなのに。ちょっと頼りないようなスールさんがよくあんな出るとこ出て引っ込むとこはひっこんだ美人を捕まえたもんだと思う。
「スールさんそろそろカスミさんの所に戻ったほうが良くないですか。また勘違いされるかも」
見てたら、色々勘ぐられそうだ。
「お! おおお! そうだった悪いなユウタ。またなー!」
スールさんはすごい勢いで駆け出した。ちょ危ない!
人と当たるって! アッー!
出会い頭に村の女の子を盛大に押し倒したスールさん。
・・・もうお馴染みの光景がその後繰り返されたことは言うまでもなかった。
スールさん、南無・・・合掌しました。ご愁傷様です。
なんか既視感を覚えるんだよな不思議だ。もやもやするな。
なんか忘れているような・・・。ああ肉屋だ。
モンスターの肉を解体して精肉する店が必要なんだった。
ま・・ゴメスさんは居ないし、また今度だ。ロクドさんには会いづらい。ここは男の複雑な感情ということで。
ふー。全然やる気は出ない。が、アル様の所にこっちも戻ろうそろそろ出発しないと時間切れになる。
屋敷に戻ると丁度よく皆が待っていた。
「遅いぞ、ユウタ。いつまで待たせる気だ」
「申し訳ありませんアル様。手間取りました」
「まあまあ、アル様補給は重要です。ここは多目にみましょう」
憤然とした様子で責めるアル様。止めるのは黒髪の騎士。
時間が掛かったの確かで弁解しようもない。そして、衆人環視の中で殿下に責められる。
「シグルスよ、主を待たせるなど言語道断である。正さねばならぬそうではないのか?」
「・・・はあ」
「アル様。ユウタくんも都合があるんすよ。何かあったんじゃないっすか~」
「ささ、ユウタ殿。アル様に構わず先に進みましょう。私達はゴブリン退治に参りましょう」
「まて・・・。モガぁ・・・」
そこまで言われると臣下でもへこむんですが・・・。
アル様。川で石でも投げ込んで傷心したっていいだろ?
・・・普通ならちゃぶ台返して暴れるところだ。
ふう・・・。
王族相手に喧嘩したらどうなるのか馬鹿でも予想がつくし我慢だ。
もうなんもかんもぶん投げてどっかに引きこもってもいいはずだ。
夢も希望もありゃしないぜ。
この糞ガキいつかぶん殴る。・・・いや言ってみただけです。
気を取り直してシグルス様に言われるがまま。
【ゲート】で移動しようとした。
村外れで【ゲート】を開くと、森の前まで移動しようとしたのだが・・・。
なんだ?
【ゲート】を開いた瞬間。
いきなりゲートの門からブラウンベアが入ってきた。
とっさに閉じると迎撃した。
一匹だけだったのでいきなりの熊さん解体ショーになってしまった。
熊肉に熊皮ゲットだ。
「どういうことだ、ユウタ」
「アル様、わかりません。いきなり森の前に開いたハズのゲートからブラウンベアが入ってきたのでとっさに閉じたわけなんです。何か森に異変でもあったんでしょうか。原因とか何が起きているのかわかりません」
「ユウタ殿、取り合えず森に接近してみましょう」
「ならば連続テレポートだご主人様。いけるか?」
「ああ、了解だ。村の入口から見えるとこまで移動してからだな」
今まで口を開かなかったセリアが・・・。急かしているのか??
何が起きているのか・・・。
さっぱりだがどうもモンスターが森の外まで出てきているのか?
正直気分が乗らないのだが、一人PTで浮かない顔をするわけにもいかない。
村の入口が見えるとそこからテレポートを開始する。
森近くの街道まで移動するとそこには。
回れ右したくなるような声が聞こえてくる。
「ギャオオオオー」
耳を切り裂くような叫びが聞こえる。トカゲ? ・・・違う。
なんだありゃ恐竜?
ま、まてそんなのいるのかよ。難易度上がりすぎだろ。
戦っているのは・・・ドスさん達だ。
周囲には大量のトカゲ共の死体がある。
パーティーメンバーにフルにバフ魔術を掛けていく。
掛け終わってもいないのに走り出すのはセリアだった。
セリア最優先なんだけどな。
「先に行かせてもらうご主人様」
「ずるいぞセリア。ユウタ早くせよ」
アル様。アンタは一番最後でいいよな?
とは言えないので2番なんだし我慢してくれ。
俺は出撃用カタパルトなのか。バフ機械なのか!
「うむ。先に行くぞシグルス、イープル」
「・・・強化をお願いするユウタ殿」
「同じくオネガイシマス」
順番待ちする騎士二人。
あー、はいはい。あんたらもかよ。
MP回復POTを飲み始める。回復しつつ魔術を使わないとまずい。
薬はくっそ不味いしやる気はさらに低下した。
「ご主人様頑張りましょう」
「ああ」
心配そうにこちらを見るドワッ子。
やる気なさそうにしているのも見苦しいよな。
いつまでも落ち込んでいてもしょうがない。
あれはあれこれはこれだ。
モニカに浮かない顔を心配されるのがちょっと男らしくないと感じるし。
女に心配されてこんなんでいいのかよ俺。
恐竜だろうがなんだろうがかかってこいや!
くっそ。恋に愛に・・・。敗れた男に怖いモンなんてもうねえよ!
色々あったけど振り払う。
乱戦しているドスさん達と冒険者達に加勢に走りだした。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 ミスリルの剣 ハーフプレート チェイングリーブ プレートヘルム 硬い皮のブーツ 対魔術の盾 銅の篭手 オークの弓 オークのワンド
邸宅有り セリア 人狼 モニカ 鍛冶士
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
固有能力( 人形使役、人形化 、幽体離脱、生命操作、力吸収)
▽
[冒険者LV55]市民60村人59戦士 59剣士 59弓士 59勇者 60狩人 60魔術士 58商人 55薬剤士 55騎兵 55弓騎兵55格闘士 55英雄 55治癒士 55料理人 54魔獣使い 52付与術士 52錬金術士 52木こり44下忍 44神官40人形使い40死霊王5生命王5闘技士3騎士1槍士1 村主1
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