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道化の僕が勇者の君を救いたい~追放された転生遊び人はゲーム知識で無双する~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 カスティーニャ編

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第60話 ソフィーと冒険


 次の日。

 僕は朝からソフィーと一緒に冒険者ギルドへ行った。

 カウンターに座るゲイルを連れて解体場に入る。

 僕は早速広いテーブル――作業台に倒した獲物を出した。


「これ全部、昨日狩りました。買い取ってください」


「イノシシにロングホーンディアー、ネズミもか。すごい量だな」


「全部ソフィーが狩りました。彼女に渡してください」


 僕の言葉にソフィーが慌てて言う。


「待ってください! イノシシはほとんどユートお兄ちゃんです! てか、他のだってお兄ちゃんが手助けしてくれましたから……」


「まあ、半分ずつにしときな」


「そうですね。それでお願いします」


「ええっ! ……半分」


 ソフィーだけが呆然としていたが、僕とゲイルは納得していた。

 それからカウンターへ戻って、買い取り料がそれぞれに支払われた。一人10万ゴート。

 僕はだいぶ金銭感覚が麻痺していたが、ソフィーは「こんなに……」と目を丸くして、手のひらに載る金貨10枚をじっと見つめていた。



 ゲイルが冒険者カードを渡しながら言う。


「ユート、見つけたダンジョンはどれぐらい攻略した? わかってることがあれば聞いておきたいんだが」


「あ、ボス部屋も突破してクリアしました」


「早いな!」「すごいです、ユートお兄ちゃん!」


「いやいや。地下三階しかない下級ダンジョンだから。あっという間でした」


 ゲイルが困り顔で頭を掻く。


「遊び人ってそんなに強い職だったかぁ? ――難易度決定の参考にならねぇなぁ。順路は一本道か? 複雑だったか?」


「少し迷いましたね。地図書きましょうか? 覚えていますので」


「そいつぁ、助かる! 頼むぜ。冒険者ポイントに色つけとくからよ」


「ありがとうございます」


「もうダンジョン攻略してたなんて、ユートお兄ちゃんはすごいです……」


「今日、行ってみる? 今のソフィーなら、敵の配置さえ気を付ければ余裕だと思う」


「え……? 大丈夫かな……?」


 ソフィーはゲイルを見た。

 ゲイルは、顔を大げさにしかめて唸った。


「う~ん! 初心者がダンジョンに挑むのは危険なんだが……ユートよ、もう危ねぇ場所はないんだよな?」


「はい。危険だったモンスターハウスもボス部屋も、普通に戻ったと思います。行くのは地下一階までですし」


「じゃあ、ソフィー。許可はするが、ポーションたくさん持っていきなよ」


「はい、わかりました!」



 それからソフィーが昨日取った薬草を売ったり、店に戻ってポーションを買ったり、ついでに薬草採集の依頼をクラリッサから貰ってきたりしていた。


 その間に僕はダンジョンのマップを四枚書いた。地上一階と地下三階まで。コロポックルのことは書かなかった。

 僕の箴言を聞いているなら、今頃は隠し部屋を作って逃げ込んでいるはず。


 ゲイルが依頼の処理をしていると、ソフィーが口をへの字に曲げて変な顔をしていた。

 気になったので僕は尋ねる。


「どうしたの、ソフィー?」


「この薬草の依頼、うちのお店が依頼出して、うちのお店が買い取って、わたしがポーション作るんですよね?」


「そうなるけど」


「わたしが受けるんですから、間にギルド挟んじゃったら、手数料の分だけ損なのでは?」


「まあ、そうなるけど。その代わりソフィーの冒険者ランクが上がるから」


「ああ、なるほど……なるほど?」


 納得したような、してないような、ソフィーは細い眉を寄せてうんうん唸っていた。

 僕はゲイルに言う。


「じゃあ今日はソフィーとパーティー組みます」


「ほいよ。二人ともカード出しな」


 僕とソフィーは冒険者カードを出した。昨日は組んでいなかったので。

 受け取ったゲイルは、二枚を重ねて穴開けパンチのような機械に挟んで、ガチャッとレバーを下ろした。

 これでパーティーに入ったことになる。経験値が分割される。昨日はソフィーに経験値を総取りしてもらうためにパーティーを組まなかったのだった。


「それじゃ、行ってきます」「行ってきます!」


「おう。気を付けてな」


 挨拶を交わしつつ僕らはギルドを出た。

 外は暖かな朝日が眩しいぐらいに降り注いでいた。



 村を出て魔物を倒しながら森を目指す。

 僕は口笛で敵を呼びつつ、毒竜の蛇剣を振るって敵を倒す。

 ミツコが辺りを警戒するように、上空を飛ぶ。


 ソフィーは僕らの後を着いてくるだけ。

 亡霊を使った戦い方は、見た人がドン引きすると思うから。

 ――呪術師とバレると迫害対象になるというデメリットさえなければ、下級職最強なんだけどなぁ。


 しだいにソフィーのレベルとスキルLvが上がっていく。

 僕は微笑んで言う。


「いい調子だね」


「……いいんですか? なんだか役に立ててないような……」


「今は人目があるかも知れないから。森へ入ったらお願い」


「はい、頑張りますっ」


 ソフィーは勢い込んでいった。目が真剣だった。



 それから森へ入ると僕はソフィーとバトンタッチした。


 僕が口笛を吹いて魔物を呼び寄せ、ソフィーが怨霊で縛って幽霊で倒す。

 安全に、さくさくと倒していく。

 ソフィーのレベルも10に上がっていた。僕はもうこの辺りではまったく上がらないけど。


 そして薬草も採集しながら森を歩いた。

 しばらくしてネズミダンジョンへ着く。

 その頃には、ソフィーが次のスキルが取れるようになっていた。

 その名も『毒舌攻撃インベクティブ』。敵の行動速度を下げて、HPとMPにダメージを与える。声が聞こえる範囲。中距離攻撃。


 僕はソフィーに言う。


「ソフィー、次のスキルだ。相手を馬鹿にするんだ」


「ええっ!? そんなスキルだったんですか!?」


「うん、毒舌攻撃と言ってね。概要は――」


 僕はスキルの説明した。

 ソフィーは半信半疑のようで、口をへの字を曲げて嫌そうな顔をした。


「ほんとですかぁ……?」


「まあ、やってみたらわかるよ。行ってみよう!」



 僕らは洞窟のようなダンジョンへ入っていった。

 一階は外から魔物が入り込んでいて、複雑な生態系を組んでいる。


 前はムカデが多かったけど、コロポックルたちに僕の意見が通ったからか、巨大なヤスデとダンゴムシがいた。

 ――普通のネズミじゃなく、ファットマウスを出すように言っておいた。

 太って動きが遅いネズミなので、動きの遅い魔物の餌になる。だからムカデ以外が増えたようだった。



 ソフィーが前に出つつ杖を振る。

 まずは怨霊呪縛《ファントムバインド》だ。黒いオーラと嘆く亡霊がヤスデの下から吹き上がって長い体を絡め取る。


 僕は蛇剣を構えながら指示を出す。


「次、毒舌攻撃!」


「え、えっと――あほー、ばかー、長いのー!」


 洞窟の岩肌やゴツゴツした高い天井に、ソフィーの可愛らしい声が響いた。

 こんな可愛くて大丈夫かなと思ったけど、ヤスデの長い体に黒い霧がまとわりついた。


「――お! 一発で発動した! ソフィー、いいね!」


「は、はい――ほんとに出た……」


 僕はダンゴムシを蛇剣で切り捨てつつ、叫ぶ。


「続いて、幽霊攻撃だよ!」


「あっ! はい! ――ゴーストバレット!」


 ソフィーが少し焦りつつも、叫びながら杖を振った。

 幽霊が身もだえしながら飛んでいき、ヤスデに当たった。

 毒舌攻撃でHPを減らしていたので、一撃で地面に沈める。


 僕は残りの魔物を倒しながらソフィーを褒めた。


「いいね! どんどん毒舌を吐きながら倒していこう!」


「ふぇぇ……頑張りますっ」


 ソフィーは杖を両腕で抱えつつ、困った顔で答えた。


 そして魔物を順調に倒しつつ、一階を突破した。


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