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第三話「ニア:子作りとは?」

 昨晩はクロちゃんと2人でしっぽり楽しんでいた。それは嘘じゃない。

 しかしその間中思わぬ相手からの妨害が入っていた。


 行為の最中システムメッセージ、ログウィンドウに出る例のSmesの黄文字。

 スメスさんとでも言おうか、あれがずっと荒ぶっていたのである。


 Smes:ヒロの体力スキルが0.2アップ!

 Smes:クロの体力スキルが0.3アップ!

 Smes:ヒロの体力スキルが0.1アップ!

 Smes:クロの性交スキルが0.1アップ!


 行為の間中コレである。なるべく意識しないように勤めているのだが、とにかくスゴイ勢いで流れる。

 しかしまだここらへんはマシな方だった。


 Smes:ヒロの精力スキルが0.3アップ!

 Smes:ヒロとクロの絆値が0.1アップ!


 これはなんというか、ただ流れたというならまだマシなのだが失敗時に流れたものなのである。

 うん、だってその後のログとの比較でそれがわかってしまったから。


 Smes:ヒロの精力スキルが0.3アップ!

 Smes:ヒロとクロの絆値が0.5アップ!

 Smes:クロの精力スキルが0.5アップ!

 Smes:ヒロとクロの絆値が0.5アップ!

 Smes:クロの愛がアップ!


 愛がアップ!なんだか懐かしいものを見た気がする。いやいや今はその話じゃない。

 つまり絆値というのはアレだ。プレイ内容まで評価されている状態だ。大成功だと二人分で0.5*2アップするのだ。

 某ゲームでもそうだったがスキルの一度の上昇値は最大0.5のようだった。


 しかしシステムメッセージで大成功がわかるというのもある意味助かるかもしれない。

 ちなみに大成功したのは4回目でもう二人ともヘトヘトだった。

 そのままクロちゃんと二人で心地よい眠りに落ちた。



 そして朝を迎える。

 可愛い新妻が左側にくっついて眠っていた。


 ログウィンドウにまた動きがあるので確認しておく。


 Smes:ヒロの睡眠スキルが0.2アップ

 Smes:ヒロの愛がアップ

 Smes:ヒロとクロの絆値が0.1アップ


 睡眠スキルとかあるのか、昨日起きた時はそんなもの出ていなかった気がするのだが。

 あとついでに語尾に「!」が何故かついていない。なんだかすごくわざとらしい気がする。

 絆値については、よくわからないけれど一緒に寝るだけでも上がるってことなのか。行為に比べれば微々たるものなんだろうけどな。


 やはりこのシステムメッセージ、スメスさんと呼ぶことにしよう。中の人がいるようにしか思えない。

 ログにまた動きがあった。これもまた黄文字だ。


 Smes:おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね。

 >>Smes :それほどでもある。


 お約束のセリフに対してささっとTellで返信。こうしてこの世界に来て3日目の朝が始まった。



 ---



「おはようございます。昨夜はお楽しみ頂けましたか?」


 朝起きた後クロちゃんと一緒にお風呂に入り身支度を整え、朝食をホテルで取った後チェックアウトする際に、例のホテルのフロントの狼さんが放ったセリフがコレである。

 狼さんの表情はよくわからないがたぶんすごく喜んでいるように見えた。イヤミで言ってるわけではない模様。


 昨日は左腕に掴まっていたクロちゃんは今日は胴体の方にくっついていた。俺は左腕をクロちゃんの腰に回している。

 傍目から見ても昨日よりもラブラブ度がアップしているのかもしれん。実際俺の心は既にクロちゃんにメロメロだった。

 とても素晴らしい。この猫娘は絶対に俺だけのものだ。


 朝の一連の流れでわかったことだが、クロちゃんの表情は昨日よりも更に良くなっていた。

 最初から可愛い顔をしていたがなんだろう、ラブラブオーラが凄く出ている気がする。

 黒い瞳でじっと見つめられる際に、愛してますっていう感情が直で流れてくる印象だ。

 前世でもここまで人に愛されたことはないだろう。

 何故出会ってまだ二日目だというのにここまで愛されているのだろうか。愛がアップ!の影響なのだろうか。


 狼さんはこちらが昨日よりもかなりラブラブになっている様子をとても喜んでいたらしい。うんうんと頷きながらこう続けた。


「実は当ホテルでは、新しく成婚された獣族の方達を数多くご案内しているのです。突然始まる夫婦生活ですからやはり最初の1日が大事です。私も獣族のはしくれ。同族が幸せに過ごしてくれることはとてもとても嬉しいことなのですよ」


 ふむ?そういうことなのか?

 昨日クロちゃんが最後にこのホテルに来たことも、このホテルのフロントで狼さんが受付をしていることも、全て繋がっているということか?


「奴隷商人のザンギ様には会われましたか?実はあの方は当ホテルのオーナーの親族にあたる方でして、当ホテルによくお客様を流してくださるのですよ」


 随分と直球な繋がりでしたね。



 ---



 UIで改めて時刻を確認する。UIの右上にいつもと変わらず時刻表示が出ていた。

 900/04/03/9:53


 昨日の昼前のことを思い出す。確か指定された時刻は10時だったか。

 それぐらいに着けば新居に連れていって貰えることになっている。

 普通に遅刻しそうな流れではあるが、ちょっとぐらいは許して欲しい。

 背の低い新妻と一緒にゆっくりペースで歩いているので。


 ゆっくり歩くついでに、周囲を眺めてみる。

 昨日も一昨日も、夜だったり買い物で忙しかったりで周囲を落ち着いて見る機会が無かった。


 このユーロ国首都の大通りにはたくさんの人々が歩いている。そのほとんどは一般人で、武器も防具も装備していない。

 そういえばこの世界ではPKが不可能なのだった。もしかして窃盗行為などもムリなのだろうか?

 犯罪が起きないのならば警察代わりの騎士が巡回する必要性も無くなるわけだ。事実周囲に一切騎士の類は見当たらなかった。


 代わりにわりとたくさん見かけたのが、猫族の女性達だった。

 一人でいる猫族女性はほとんどおらず、皆男連れだったりあるいは家族連れだったりした。

 皆相手の男性と手を繋いでいたり腕を組んだりしている。

 猫族は皆イチャイチャするのが好きなのだろうか。

 他に少し気になる点は、人族の父と猫族の母の子供は全て猫族の女の子だったことだ。

 人族の子供は一人もいなかったし、猫族の男の子もまったく見かけなかった。


 もちろん人族同士の親子ならば子供も人族ではあるのだが、人族同士の親子はあまり町では見かけなかった。

 いても手を繋いでいるケースさえ稀で、腕を組んでるカップルなどほぼ見かけない。コレはなんだろう、そんなことでは猫族女性に人気が偏るのではないだろうか。


 そんな街の様子を眺めながら首都教会を目指して歩いた。そういえばこの首都の名前なんだっけ?昨日何かの書類に出ていた気がする。

 パリ?…いや、パパリ?

 なんだろう、フランスのパリが元になっている気がしてならないが随分といい加減な名称な気がするぞ。



 ---



 首都教会についたのは10時20分を過ぎていた。いや別に時間厳守とか言われてないし10時頃としか言われてないからこれぐらい問題ないだろうたぶん。


 クロちゃんと一緒にエレベーターにのって4階へ。

 受付には昨日会った首都教会不動産部担当のリリーさんがいた。なんだかすごくこちらを睨まれている気がする。

 昨日座ってザンギさんを待っていた時の客用ソファーには大勢の人が座っていた。ざっと20人以上だろうか。

 皆こちらを見ていて、何か微かに期待の眼差しが混じっている気がする。


 受付に着いてリリーさんに挨拶をする。先ほどまですごく睨んでいた気がするが、業務用スマイルに戻っていた。


「リリーさん、おはようございます」

「おはようございます使徒様。そちらの女性は奥様でしょうか?」


 む?そこも確認しておくのか。クロちゃんが頭を下げる。


「このたびヒロの妻になったクロです。よろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしくお願いします、クロ様」


 そういってリリーさんも頭を下げる。

 昨日まで奴隷(という名の婚活女子だが)だったが、やはり扱いは奴隷ではなく普通の奥さん扱いらしい。

 リリーさんが続ける。


「使徒様、既に新居へのご案内の準備は整っています。そちらに既にお集まりになっている方々が今後使徒様とご家族の方のお世話をさせていただきます。どの方も教会側で資格等確認済の信頼出来る人材でございます」

「わかりました」


 とりあえずわかったことにする。

 正直な話少し謎ではある。一人や二人ならまだしも、確か昨日書類で25人以上と書いてなかったか?

 そんな人数が一日で集まるというのはコレは果たして正常なのかどうなのか。

 しかも資格持ち?資格持ちがそんなにフリーな状態で余っているものなのか?

 もしかしたらこの世界はとんでもない就職難なのではないだろうか。

 1階のハローワーク業務階の大混雑を思い出す。昨日もそうだが今日もすごいことになっていた。


「使徒様、後のことはそちらの筆頭執事のジェームズ氏に全てお任せしても宜しいでしょうか?」

「えーと、はい、わかりました」


 リリーさんはわりと素っ気無かった。なんだろう、元から仲が良かったとは思えないが怒らせるようなことをしただろうか。

 もしや昨日の今日で猫族の新妻と朝っぱらからイチャラブしてることで敵視されているのだろうか。

 いやしかしコレは仕方ない。クロちゃんはとても可愛い。ペロペロしたい、ペロペロ。


 そんなことを考えつつクロちゃんに目を移すと、目が合った瞬間突然キスされた。

 軽いキスではあったが。何これ可愛い。

 キスされた瞬間リリーさんにギロっと睨まれた気がするが。

 もうそんなこと気にならない。


 おっと、さすがにいつまでもこうしているわけにはいかないか。受付の椅子から立ち上がり、後ろを見る。

 ソファに座っていた人々が既に立っており、横三列に並んでいた。前から順に3,10,10で合計23人だろうか。

 正面の3人は凄く執事っぽい服装をしている

 中央の執事さんが頭を下げて自己紹介してくる


「ご紹介にあずかりました、筆頭執事のジェームズです。ヒロ様、クロ様、どうぞこれからよろしくお願い致します」

「よろしく」


 ジェームズ氏だったか。ジェームズ氏が頭を下げると、他の皆さんも一斉に頭を下げた。

 そして「よろしくお願いします!」と大きな声があがる。


 ……あれ?ソレだけ?

 一人ずつ自己紹介とかしないの?マジですか?ヤッター!


「それでは早速新居へとご案内しても宜しいでしょうか。既に表に馬車を待たせております」

「はい、大丈夫です」


 うん大丈夫。何故なら手荷物等はインベントリに全部放り込まれているからだ。


 従業員の皆さんと一緒にエレベーターで一階へ降りて首都教会の外に出る。そこでは見覚えのある馬車と待機している2名の御者さんがいた。

 挨拶の時23人だったのは、この御者の2名が抜けていたからだろう。

 御者さんがこちらに深々とお辞儀をする。軽く返しておいた。


 馬車は例の連絡馬車とほぼ同じものだった。最初のサーディン村からこの首都パパリに来た時に乗ったものに似ている。大型の六頭立ての巨大馬車である。

 今回運ぶ人数が多いので、確かにこのサイズじゃないと難しいかもしれない。


 馬車に全員乗り込んで、早速出発した。



 ---



 馬車の乗り心地は、最初と最後でとても落差が激しかった。


 最初の乗り心地は連絡馬車に乗っていた時と同じで一切揺れがなく高速だった。例の国道というやつだ。

 道が銀色に光っておりデコボコもなく一直線。幅も百メートルの左側通行だし走りたい放題。とてもスムーズに高速に移動していた。


「間も無く国道から逸れますので、お気をつけください」


 ジェームズ氏のそんな注意からしばらくして、今まで一切揺れなかったのが一転ガタンゴトンといった状態になる。

 国道以外は一般道とか県道とか言われているらしいが、整備の状態によりかなり質が違ってくるとのこと。

 建物の方は定期的に整備されていていつでも入居可能な状態が維持されているらしいが、さすがに道の整備まではされていなかったらしい。

 このガタンゴトン揺れるのはなかなか苦しいな。なるべく早めになんとかしておこう。


 ガタンゴトン揺れてる間クロちゃんはずっとこっちに抱きついていた。色々柔らかかった。

 いやしかし直さないわけにもいかないよな、うん。俺が硬くなりそうだからな。



 着いた先はそこそこの豪邸だった。豪邸といってもデカイのがひとつという状態では無かった。

 十分な大きさの家が、かなりの数並んでいた。

 ややしょぼい集合住宅もあったのだが、それは従業員用の家屋なのだそうだ。


 何故そんなことになってるのかというと、家ごとに一家族ずつ住む前提だからなのだそうだ。

 また、ムダに広いと逆に使いにくいし掃除の手間もヒドイということらしい。


 一応皆で住めるようなビッグサイズのおうちも一軒あった。でもそこに住もうとしたら従業員の皆様に止められた。

 今はまだクロちゃんだけなので、もっと慎ましやかに過ごして欲しいらしい。


 なんだろう、従業員さんもさぼりたいってことなのだろうか。給料貰っておいてそれは酷い気がするのだが。

 しかしそうだな。俺もムダに広いのは好きじゃないかもしれない。家が広いことよりもクロちゃんが近いことの方が大事ではなかろうか。


 ちなみにどこの家もガス、電気、水道等完備のようだった。とはいってもコレらが本当にガスや電気なのかはまだわからない。さすがに水道は水道なのだと思うのだが。


 デカイ家の最寄の小サイズの家に住むことにした。小サイズとはいっても十分な大きさ。

 中年おばさんなメイドさん二名が世話役としてついてくれた。この家の家事全般は全てこの二名がやってくれるとのこと。

 確かにこのサイズの家ならそれで必要十分な状態だった。


 クロちゃんはとても幸せそうな笑顔をこちらに向けてくれていた。

 うん、素晴らしい。もう当分この愛の巣に引き篭もろうと決心した。



 ---



 半月ほどが経過した。


 Smes:ヒロの精力スキルが0.2アップ!

 Smes:ヒロとクロの絆値が0.5アップ!

 Smes:ヒロの愛がアップ!

 Smes:クロの精力スキルが0.2アップ!

 Smes:ヒロとクロの絆値が0.5アップ!

 Smes:クロの愛がアップ!


 スメスさんは相変わらずすごい勢いでログを垂れ流していた。最近は大分大成功の率が上がった気がする。

 大成功時の絆値上昇はほぼ固定らしい。他の数値の上がり度合いはかなり下がってきているが。


 それにしてもこのスキル値は一体なんなのだろうか。

 こんな愛し合っているだけで成長していく世界だなんて聞いた覚えがない。

 この数値はどれぐらい信用に値するものなのだろうか。


 ただ体感として、もはや明らかな違いは感じていた。

 最初の頃はそこまで激しくプレイしていたわけでは無かった。

 しかし最近は色々とスゴイ。俺もクロちゃんも全然バテることが無いのだ。

 ほぼ一日中やっているような状態になっている。何故こんな性欲魔人になってしまっているのだろうか。


 前から感じていたクロちゃんのラブラブオーラだが、最近はもっとスゴイことになっている。

 何かもう慈愛の光すら感じそうだ。愛が眩しい。


 クロちゃんと一緒に寝て、小鳥の鳴き声で目を覚ます。

 まさに朝チュン状態。


 起きた時はいつもUIを確認している。まずは時刻の確認。それからクエストが出ていないか確認する。

 あれから結構な期間が経過しているというのに、なかなか次のクエストが発行されない。

 目標が無いと俺は動き辛いのだ。もっとも今はクロちゃんと愛し合うことで満足しているので問題無い。


 ふとUIの左側を見てみると何かちょっとだけ変化が起きている気がする。

 なんだろう。

 クロちゃんを買った日からずっと、クロちゃんと離れたことがない。

 一応TIPSで確認したが、家族が近距離にいる間は自動でパーティーが組まれるのだそうだ。


 クロちゃんのHP、MPゲージの右に小さなハートマークが出ていた。

 コレはなんだったかな。確かこの部分には、強化魔法の状態や状態異常のアイコンが並ぶのでは無かったかな。

 今まで一度もそんなものが表示されたことは無いが。


 UI上でマウスカーソルのイメージを動かす。そしてクロちゃんのステータスの横のアイコンにマウスカーソルを乗せた。

 1秒前後程度で、このハートマークのアイコンが何を意味しているのか説明文が出るはずなのだが、と思っていたら小さな吹き出しでアイコンの説明が出る。


「妊娠中」


 ん?なんだって?妊娠中?

 誰が?クロちゃんがか?俺の子をか?


 俺の隣で寝ていたクロちゃんが、んんっ、と声を上げて起きたみたいだ。いつもの習慣でおはようのキスをする。

 キスのあとクロちゃんはいつも呆けた顔で少し待機する。

 と、突然何かに気づいたようにガバッと起き上がった。

 クロちゃんがこっちを見ている。じっと見ている。そして、最高の笑顔でこう言った。


「妊娠、したみたいです」



 ---



 その日から生活が一変した。


 まずクロちゃんが一切の性交渉お断り状態になった。

 つい前日まで一日中愛し合っている状態だったのにすごい変わり身である。

 セックスレスどころの騒ぎではない。完全にノーセックス状態である。

「立派なお母さんになってみせますから応援してくださいね!ア・ナ・タ」

 とはクロちゃんの言。生む気満々らしい。すごく幸せそうな笑顔でそう言われると毒気を抜かれてしまう。

 なんだろう、俺の覚悟が足りてないだけなのか。

 この世界に来て一月もしないうちに父親になることが確定したのはさすがにショックだったのだが。


 それまで全ての家事をメイドさんに任せていたのに、クロちゃんが花嫁修業を開始した。

 既にお嫁さんなうえに妊娠までしてるというのに、今から花嫁修業である。

 一生懸命料理の修業をしているクロちゃんだが、料理経験がないらしくスゴイことになっていた。手の甲に包丁をおっことしたりしていたのだ。


 しかしそのことでこの世界のヤバさを改めて再確認することになった。クロちゃんはとんでもない不器用状態から開始したのに一切ケガをすることが無かったのである。

 例のPK禁止の延長らしい。

 俺がこの世界に来た初日、所持していた鉄の剣に指を押し当てても全く切れることが無かった。

 それと同じことが包丁など別のものにも適用されるのだ。

 クロちゃんはどんな酷い失敗をしても一切ケガをしないので、回数を重ねることでどんどん上達していった。



 クロちゃんが妊娠してしばらくすると新たなクエストが発行された。


 Smes:新たなクエストが発行されました。クエストリストよりご確認ください。

 早速確認してみる。



 クエスト:子作りについて学ぼう

 目的:子作りに関するTIPSを確認する


 詳細情報を表示する。


 クエスト:子作りについて学ぼう

 この世界の子作りについてTIPSで確認してください。

 TIPSは複数の項目に分かれています。

 子作り関連のTIPSを読んだ後は実践あるのみです。

 明るい家族計画、頑張ってくださいね。



 おいィ?

 お前コレ絶対、クロちゃんが妊娠するより先に発行されるべきクエストだろ?

 わざとクエスト発行が遅らされていたような悪意を感じるんだが?

 謀ったな?謀ったな、スメス!


 文句を言っても仕方が無い。さっさとTIPSを確認してしまおう。

 TIPSの子作りのタブを開くと、いくつか関連項目が出てきた。上から順に見ていくか。



 TIPS:子作りと種族

 この世界には四大陸、大陸ごとに3部族で合計12種類の人種が生活しています。

 どの種族の組み合わせでも♂と♀であれば子供を作ることが出来ます。

 組み合わせによる妊娠確率等への影響は一切ありません。


 この世界にはハーフは存在しません。生まれてくる子供は全て母方の種族になります。

 生まれてくる子供の男女比も母方の種族による影響のみを受けます。

 父方の種族の男女比は一切影響しません。


 これらの事情により女性から男性に向けての求婚は全面的に禁止されています。

 母方の種族の子供しか生まれてこない為、他種族の♀が国内に無制限に広がればその人種の危機になります。

 男性から女性へアプローチした場合のみ他種族の女性は他領で生活することが出来ます。



 最初のTIPSの時点で既にかなり驚いた。しかしそう言われてみればそうかもしれない。

 クロちゃんと半月子作りしていたせいですっかり記憶が吹っ飛んでいたが、そう、首都の街中で見かけたはずだ。

 人族の男性と猫族の女性の子供は全て猫族だった。しかし猫族なのはいいとして、何故猫族の女の子ばかりだったのか。

 次のTIPSを見てみる。



 TIPS:種族と男女比

 この世界の種族は種族ごとに男女比が異なります。

 全般的な傾向として、女性の比率が高いです。


 もっとも男性の比率が高いのはドワーフ全般です。

 人口100人中男女比が55対45程度です。


 次に男性の比率が高いのは人族全般です。

 人口100人中男女比が52対48程度です。


 それ以外の種族では♀の比率が高くなっています。

 もっとも顕著なのはウサギ族で男女比は10対90程度。

 次に酷いのは猫族で男女比は15対85程度になっています。

 同じ獣族の犬族は48対52程度で大きな開きがあります。


 ウサギ族と猫族では♀余りが酷く、貰い手のいないウサギ族や猫族の女性はハンターとして生きる者や軍人として生きる者以外は、内海貿易で愛玩奴隷として輸出されています。

 ウサギ族の女性はトルッコ国で人気が高く猫族の女性はユーロ国での人気が高いです。

 近年これらの国では人種汚染が問題視されています。


 ウサギ族や猫族の男性は希少ではありますが特に意味はありません。

 ウサギ族や猫族の男性は性欲が強く問題を引き起こしやすいので、獣大陸の本国で無償で引き取っています。

 その際の輸送費等は全て獣大陸側が負担しています。



 ちょっと頭がパンクしそうになる。なんだろう何かとんでもない話を聞いた気がする。

 ♀余り?15対85の男女比とかどういうことだ。男一人あたり女の子が五人以上いるってことか?

 それはもうなんというかウハウハのハーレムなのではなかろうか。


 TIPSにはあと1つ項目が残っているようだ。全て一気に読んで良いものだろうか。

 しかし途中で読むのをやめても色々ともやもやしそうだし頑張って読むか。



 TIPS:子作りによるスキルアップと避妊、堕胎について

 子作りを行うと色々なスキルがアップします。

 体力関連もそうですが夫婦の愛情と信頼を深める大事な絆値が高まります。

 絆値が高まった相手は最高のパートナーになりますので是非高めてください。


 この世界には避妊の概念はほぼありません。

 前述した子作り時のスキルアップ効果が避妊時には一切得られないからです。

 ハイリスクハイリターンだと考えてください。

 避妊具を使用すれば妊娠を避けることは確かに可能ですがそのうち天罰が下ることでしょう。


 最後に堕胎について。

 この世界において堕胎はほぼありません。

 PK阻止の効果は胎児にまで及び、母親は流産の危険を全力で回避しようとします。

 胎児に対する直接的な攻撃も全て無効化されます。

 せっかく生まれてくるあなたの子供なのですからしっかりと愛してあげてください。



 うん、大体なんとなくわかった。

 この世界が色々ととんでもない世界だってことがよーくわかった。


 クエストはクリアされたらしい。UI右側のクエストリスト表示部には何も残っていなかった。

 このとんでも世界において、俺は今後一体何を依頼されるのだろうか。

 これまではほぼ導入の説明ばかりだったが、次あたりからとんでもないことが起きる気がする。

 今回のクエストは故意に遅れて発行された可能性が高い。

 そう遠くないうちに次のクエストが発行されるのでは無いだろうか。


 今は考えても仕方がないか。可愛い新妻の料理の手伝いをしに、キッチンに向かうことにした。

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