第3話
蹴られた陽子は派手に転倒した。
頭を打った彼女は体を丸めて悶絶している。
一方、混乱しながらも激昂する英子は、陽子に罵詈雑言を浴びせた。
「いきなり何すんだよ! 頭おかしいんじゃねえの!?」
英子は踵を返し、玄関扉を閉めようとする。
そこに跳ね起きた陽子が手を伸ばし、指を割り込ませた。
勢いよく閉まった扉に指を挟まれた陽子は絶叫する。
「痛いいいいいぃぃっ!」
涙を流す陽子だったが、隙間に身体を滑り込ませて家の中に侵入する。
そして、驚く英子の胸をいきなり切りつけた。
出血した英子は目を剥いて怒鳴る。
「このっ、ふざけんな! サイコ女!」
靴ベラのフルスイングが陽子の頬を強打した。
しかし今度は怯まず、カッターナイフが英子の腹に突き刺さる。
英子は傷口を押さえて崩れ落ちた。
「うぅ……」
動けない英子を置いて、陽子は台所へと向かう。
腫れた指を庇う陽子は焦燥感に苛まれていた。
「は、早く、どうにかしなきゃ……」
包丁を掴み取った陽子は素早く玄関に戻る。
そして振りかぶった切っ先を英子に向けて突き立てた。
肉を抉り裂く感覚を味わいながら、何度も腕を上下させる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
陽子は謝りながら英子を滅多刺しにした。
我に返った時、英子は死んでいた。
呆然とする陽子だったが、震える手でスマートフォンを操作し、唯一登録された番号に連絡する。
「えっと、仕事終わりました……」
「後ほど確認します。お疲れ様でした。現場を離れて結構です」
通話はそれだけで切れた。
立ち上がった陽子は、姿見に映る返り血まみれの自分に気付く。
彼女はリビングに干してあった上着を羽織ると、包丁を隠し持って家を出た。
そしてぎょっとする。
インターホンの前には若い男性警察官が立っていた。
「ちょっとよろしいですか」
警官は陽子に声をかけた。




