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復讐代行株式会社  作者: 結城 からく


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第1話

 夕方の駅構内。

 早足で進むその中年男は、すれ違う女性にわざとぶつかることが趣味だった。

 今日も目的もなく徘徊して、ちょうどいい相手を見つけては衝突する。

 そうして日頃の鬱憤を晴らしているのだった。


 愉悦に浸る男は、新たな獲物を見つけて微笑む。

 前方からうつむいて歩いてくるのは、セーラー服を着た眼鏡の少女だった。

 男は少し勢いをつけて少女を吹っ飛ばす。


「きゃっ」


「どこ見てんだこの野郎!」


「す、すみません……」


 尻餅をついた女はそそくさと逃げ去っていく。

 その姿を見届けた男は、意気揚々と歩き出そうとして、胸の違和感に気付いた。


「……ん?」


 胸に小さなナイフが刺さっていた。

 その直後、猛烈な痛みと吐き気に襲われた男は、泡を噴いてひっくり返る。

 通行人が騒然とする中、逃げ去る少女はスマートフォンで通話をしていた。


「……完了しました。入金お願いします」




 ◆




 月永陽子は全身がずぶ濡れだった。

 その状態でクラスメートの女子生徒から罵詈雑言を浴びせられる。


「死ねよブス!」


「お前みたいなのが学校来んじゃねえって!」


「さっさと帰れ!」


 悪意に晒された陽子は、泣きながら女子トイレを飛び出した。

 ケラケラという笑い声を聞こえてきて、陽子は耳を塞いで階段を駆け上がる。

 彼女が向かった先は学校の屋上だった。


「もう嫌だ……」


 絶望する陽子は地上へ飛び降りようとする。

 その瞬間、スマートフォンが通知音を鳴らした。

 紙一重で断念した陽子は通知を確認する。

 それはショートメッセージの広告だった。

 表示された文字を見た陽子は怪訝そうに呟く。


「復讐代行株式会社……?」


 メッセージには電話番号だけが記されていた。

 陽子は深く考えずにタップする。

 すぐに通話が繋がり、淡々とした口調の男の声が聞こえてきた。


「お電話ありがとうございます。復讐代行株式会社です」


「あの……これって本当にやってくれるんですか」


「はい。あなたの復讐を我々が代行させていただきます。対象の殺害が基本となりますが、ご要望によっては半殺しや四肢欠損等、様々な状態を選ぶことが可能です」


「えっと、じゃあ、殺してほしい人が、います。全部で三人です」


「かしこまりました。標的の情報を教えてください」


 湯子は求められるがままに自分をいじめる三人の女子生徒の個人情報を話した。

 フルネーム、年齢、高校名、住所、電話番号、SNSのアカウント等、知り得るものはすべて伝えた。

 電話の相手は淡々と話を進めていく。


「標的の情報を確認しました。あとはこちらで実行いたします。最速で翌日、遅くとも四日以内に復讐は完了する予定です。それまで少々お待ちください」


「あの、これって料金とかは……」


「すべて後払いとなります」


「でも私、学生で大金は払えなくて……今さらすみません……」


「問題ありません。弊社の報酬は金銭的な要求ではありませんので」


「え?」


「契約は成立しました。復讐の完了後、再度ご連絡させていただきます。それでは失礼します」


 そこで通話は切れた。

 陽子は不安な気持ちのままスマートフォンを仕舞う。

 彼女は飛び降り自殺を延期した。




 ◆




 翌朝、陽子が登校すると校庭に生徒が集まっていた。

 教師達が必死に食い止めているが効果は薄い。

 陽子も人だかりに紛れて様子を窺う。


 校庭に三人の女子生徒が倒れていた。

 陽子をいじめていた者達である。

 三人は大の字で仰向けになり、四肢と額に杭を打たれて固定されていた。

 いずれも壮絶な苦痛を訴える顔で血を吐いて絶命している。


 三つの死体を目撃した陽子は動揺する。

 すぐに昨日の電話を思い出した。


「ま、まさか……」


 狙い澄ましたかのようにスマートフォンが振動し、陽子は悲鳴を上げた。


「ひっ」


 着信は昨日のメッセージの番号からだった。

 陽子は恐る恐る応答する。


「もしもし……」


「現場を見ていただけましたね。復讐は無事に完了しました。殺害方法の指定がなかったので、実行者の趣味嗜好に合わせた処理となっております」


 相手の説明に陽子は吐きそうになる。

 しかし、次の言葉にはそれ以上の衝撃があった。


「報酬の件ですが……あなたには復讐代行株式会社に入社していただきます」

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