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郷
僕が鉄の窓際に潜んで静かに月を見上げる時、よく自分の故郷のことを思い出す。その度に灰の頬には時雨が流れて、故郷の空を恨めしく思う。
「街は死んでしまったのに、今なおその死骸が横たえている。黒葉はこの死骸を喜んで受け入れているのだろう、愚かな子供だ。」
黒い瞳に映る今の街。白と青と黄色の球がポツポツと鉄の世界で浮いている。生命の息吹は息をしない鉄によって隔てられ、温度のない時間が漂っている。
「死骸を受け入れることなんか僕には到底できない。鬱陶しいほどに躍動していた時を知る僕には余計に。」
死骸の上を飛行する鉄の飛行機が大きな音を立てている。鉄の窓で隔てられたこの部屋にもその轟音は届いている。そんな時、ふと水による旋律を聞いた。蛇口から落ちる水滴が奏でるメロディに僕の耳は盗まれる。
「生命の名残こそ美しい。なぜそんな生命を鉄の管で隠さなければならないのだ。あの日の街は生きていた。」
灰の頬は乾いていた。もう時雨も夕立ちも降ることはない。死骸を覆う雲は鉄の匂いがする。




