013 青田買い
家具の搬入は、あっさり終わった。
といっても、うちにある家具といえばベッドと行李ぐらいなので、大した量じゃなかったが。
そして翌日。
俺はホワイトキャッツのクラブハウスへ顔を出していた。
「今日は町に出ましょう」
リンチェが、ぱんっと手を叩きながら発案した。
「町に?」
「そうです。最近はギルドへ行っても依頼を回してもらえないことが多いので。だったら、自分たちで仕事を探した方が早いかなと」
なるほど。
ギルドの依頼というのは、基本的に上位クラブから優先的に持っていかれる。
人数も実績も乏しい弱小クラブには、まともな仕事なんてほとんど残らないことはザラだ。
だからこそ、俺たちみたいな零細が自分から町へ出て仕事を探すのは、むしろ理に適っているとも言えた。
「まあ、いいんじゃないか? ここで座ってても仕事が降ってくるわけじゃないしな」
「はいはいっ、私も賛成ー! 今日は天気もいいしね!」
さっきまで机へ突っ伏していたユルナが、元気よく手を上げる。
いつの間にか目も覚めたらしく、彼女らしいいつもの利発そうな目になっている。
「……別にいい」
マヤも、本から目を離さないまま小さく頷く。
こっちはこっちで通常運転だな。
そんなこんなで町の中心部に到着した。
昼前の大通りはかなり賑わっていた。
人通りが多い。
石畳の道を、荷車がガラガラと走っていく。
しばらくして、
「依頼の方はどうだ、見つかりそうか?」
「全然ダメです。仕事なんて何一つ落ちてないです」
俺たちは市場通りをぐるりと回っていたが、仕事の依頼は一向に見つからなかった。
荷運びの募集札なら何枚か見つけたものの、どれも「締切」の文字付き。
商工会が主催する魔物討伐依頼も、すでに他クラブが受注済みだった。
どうやら俺が思っていた以上に、仕事の奪い合いは激しいらしい。
「むぅ……しょうがないですね。かくなる上は私がマッチ売りの少女になって日銭を稼ぐしかありません」
リンチェが何かを覚悟したように言った。いや、なんでマッチ……?
その時だった。
広場の方から、わっと歓声が上がった。
なんだ?
視線を向けると、円い広場の周囲へ大勢の人だかりができていた。
「ありゃなんだ、祭りでもやってるのか?」
「違いますよ」
リンチェがそちらを見ながら説明する。
「あれは冒険者育成学校――いわゆるユースの採用試験ですね」
「ユース?」
聞き慣れない単語に首を傾げる。
「はい。将来有望な子供たちを早い段階で育成する制度です。有名クラブほど、優秀な若手を囲いたがりますから」
よく見ると、広場では、十歳くらいの少年少女たちが並ばされていた。
なんというか、遠目で見るだけで緊張してるのが伝わってくるな……
その前には、鎧を装備した剣士風の男や、試験官らしい大人たち。
胸元の紋章を見る限り、有名クラブの冒険者だろう。
「こうやって若い才能を引き抜くのが、有名クラブの常套手段なんです」
「へー。ライバルクラブ同士で、青田買いまでしてるわけか」
ここで才能を認められれば、有名クラブへの階段を登り、逆に結果を残せなければ、その時点で将来はかなり厳しくなる。
ニューカッスルの子供は、この齢の時点で厳しい競争の波にさらされているのだ。
そりゃ、クラブ戦国時代なんて言われるのも頷ける。




