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『顕現』

「ついに……ついに遊べるぜ!」

 

 ゲームショップEDENから出ると俺は、早速帰ろうと自転車に飛び乗る。


 夕焼けの空が、段々と薄暗くなっていく。俺は自転車を全力で漕ぎながら、鉄橋を渡る。


 自転車を漕ぎつつ、夕焼け空を横目に眺めると、不意に俺は、もうすぐ高校生活が終わることに気づく。


 橋の真ん中あたりで俺は自転車を停める。橋からは海に面した湾に繋がる川が見える。高鷲町を見下ろす山の背後に、日が沈んでいく。


「……彼女、つくれなかったな」

 

 自嘲しながら俺は呟く。


 高校では、学年全体でもトップクラスに可愛いギャルのクラスメイトや、部活で活躍する可愛いクラスメイトもいた。もしかしたら、頑張って仲良くなれば彼女ができるのではと、期待したりもした。

 

 けれど、俺には致命的な欠点があった。


「女の子と、面と向かって喋れねえんだよな」

 

 俺は授業の合間の休み時間や昼休み、気になる子と仲良くなるために、授業の内容や他愛もないことで話しかけようとしたが、緊張して固まってしまう。


 がんばろうとすればするほど、口が強力な接着剤で固められたかのように開かなくなり、喋れなくなる。


 部活もしてたこともあり、俺の身体がでかく威圧感を感じるのか、クラスの女の子からは全く話しかけてこない。


 せいぜい授業でプリントを渡したり、受け取ったりとした時くらいだ。


 部活のチームメイトやクラスの友達の中には、彼女ができて、グループデートをしたり、青春を謳歌してるやつらもいるが、俺には全く縁がなかった。


 そうして、いつの間にか高校生活最後の夏休みを迎えていた。

 

 そんな俺にとって、マンガ、ラノベ、そしてアニメだけが唯一女の子と触れ合える機会だった。

 

 例えフィクションであっても、主人公に自分を重ね合わせて、ヒロイン達と恋をする。物語の中でなら、俺は色んな女の子と恋をすることができた。


 物思いにふけりつつ、橋の中腹から見える美しい海を、俺は眺めていた。


 虚しさが、海からの風と共に俺の心に吹いてくる。エロゲを買った時の高揚感は、いつの間にか消え去っていた。


「帰るか……」


 俺は雑念を振り払い、再び自転車を漕ぎ出そうとすると、不意に、カチ、カチと時計の針の揺れる音が、辺り一帯に響く。


「何だ?」


 その時、世界に罅が入る。


 そう錯覚するかのような、生まれてから聞いたことのない、とてつもなく巨大な何かが砕けた音が鳴り響く。


 視線の先、空の彼方から、夜の闇雲を切り裂いて、光の奔流が滝のように流れ落ちる。町に向かって一直線に。


「はっ?」


 あまりの眩しさに意識が寸断される。


 そして意識を取り戻した俺の目に映っていたのは、摩天楼のごとく天に向かってそびえ立つ、輝く光の柱であった。


 

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