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毎日が日曜日・それが原始時代ってわけだ

 さて、新しく加わったサピエンスもようやく自力で食料を確保できる様になってきた。


 そうなれば皆に余裕が出てくる。


 なにせこの時代の労働は食料を確保することでそれ以外はあまりの時間だ。


 そしてフルーツと牡蠣があれば最低限の食料を得るのは容易い。


 一日一時間も食料の採取に時間を取ればあとは余暇の時間。


 要は毎日が日曜日なようなものだ。


 その代わり病院もなければ薬もないから衛生や怪我や病気には注意を払わなければならないけどな。


 余ってる時間はたくさんあるからそれを暇つぶしのものづくりに回したりするわけで、縄文の土器が弥生以降のものに比べて圧倒的に無駄な装飾などが多いのも縄文時代の土器づくりは実用だけでなく暇つぶしに出来栄えを競うものでもあったからだな農業が人間から余裕を奪っていき、工業はそれを更に推し進めたのは人類にとって不幸なことだろう、コンピューターやロボットが発展したところで人間は長時間労働から開放されなかったしな。


 閑話休題人が増えたことでやれることも増えてきた。


「よーし、大物が釣れたぞー」


「つれたぞー」


 今俺達は筏に乗って釣りをしている。


 釣りは食料を得る手段でもあるし良い暇つぶしでもある。


 確実に食料を得るだけではやはり退屈になってしまうからな。


 水鹿の角を削って返しの付いたJの字型の針を作るのに結構時間はかかったがやはりこの方が大物を釣るのにむいているな。


 そして木を削ってオールを作ることで竿では届かない沖に出ることも出来る様になった。


 最もっともあんまり離れると危ないので島が見える範囲からは離れないようにはしているが。


 魚を入れておく魚籠も竹を編んで作れるようになった。


 釣り上げた魚はナイフでさっさと活け〆してエラや内臓を取り除くようにしている。


 白身の魚でもほっとけば痛むからな。


 人数が増えれば当然必要な食料も増える。


 フローレス人とサピエンス合わせて30人ちょっとまで増えたがバナナと芋の焼き畑や豊富な岩牡蠣のお陰で食料は潤沢だ。


 腹が減ると人間どうしても気が立つものだが、逆に言えば食料が潤沢であれば争いもそうそう起こらない。


 そしてサピエンスたちは他人から攻撃されることの怖さを知っている。


 そしてそれが自分の生命に直結することもな。


「今日の食事が楽しみですねー」


 釣り上げた魚を前にニコニコしてるサピエンスたちを見れば、これを奪い合おうなどと考えるようにも見えないしな。


 食料が十分なら分け合うのが一番だ。


 食料の長期貯蔵と言うのは結果として貧富の差を生み出すのはあまりいいこととも思えんのだよな。


 もっとも狩猟民族は狩猟が出来なければ生きている価値が無いとされるわけでそれはそれで厳しいと思うが。


「おー、そうだよな。もうちっと味に変化はほしいけどな」


「そうですか?」


 そうか、そもそも飽きないように味に変化が必要だなんて考えるようになるのはもっともっとあとだもんな。


「今回はアラ汁にするか」


「あらじるー?」


「あらじるですか?」


「ああ、動物の骨を煮込むのもうまいが魚の骨もうまいからな」


 釣り上げた魚をナイフで三枚におろし、身は適当な大きさに切って、残りの骨をくわえてバナナと芋もくわえて水に入れて海水を少しくわえて煮込む。


 味噌とか大根があればもっといいがないものはしょうがない。


 魚が十分煮えて白くなり芋が柔らかくなれば出来上がり。


 竹ので作った柄杓で貝殻の皿に救ってみんなでわけて食べる。


「じゃあ、くおうぜ」


「たべるー」


「はい、食べましょう」


 一番最初に生まれた子供はもう歩けるくらいには大きくなったがまだ母乳で育てている。


 だから母親はいっぱい食べる必要があるが常に子供を抱えていたりするせいでだいぶたくましくなった。


 もりもり食べるのは見ていて気持ちが良いものだ。


「ん、これはこれでうまいな」


「うまー」


「おいしいですね」


 バナナを皮ごと煮込んで食べると睡眠もよく取れるようになったり、妊娠しやすくなったりもするらしい、タンパク質は魚や貝で補う必要はあるけどやはりバナナというのは素晴らしい食べ物だ。


 煮込んだバナナは里芋のような食感でこれはこれで悪くない。


 人間が神により楽園から追放されて食べることができなくなった禁断の果実がバナナだというのもあながち嘘じゃないかもな。

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