人が増えたとしても最優先が食料の確保なのは変わらない
さて、今回サピエンスの集団から放逐された男女は合わせて10名程度で前回と同じくらい。
一年以内に子供が出来ない確率は50組で5人程度とは言えあくまでもそれは現代で栄養や性的行為の回数などが十分な状況での話だから実際はそれよりも多かったりするのだろう。
だとしても向こうは集団全部で100人位はいるんだろうけど、同じ集団での婚姻を延々と行うのはまずいということはこの時代でもすでに理解されていたようだから、おそらくもう1つか2つくらいの同程度の人数の集団は存在するだろう。
中東のギョベクリ・テペやインドネシアのジャワグヌング・パダンのような旧石器時代に含まれる時代の神殿と思われる巨石遺構はおそらく狩猟集団が他の集団と婚姻をむすぶ際に一時的に集まる場所としてそういった集団が協力して作られたのではないだろうかと俺は思ってる。
百人の集団であれば成人する者のなかで10人も追い出されるのはおかしいだろうが合わせて200人100組か300人150組の子作りが可能な成人男女がいるなら話は別だ。
よく縄文人の平均寿命は17歳程度と言われるがこれは人口ピラミッドが富士山型と呼ばれる生まれる新生児が多くても年をとるに連れて数が大幅に減少していく形だ。
だからみんな17歳までしか生きられないわけでは当然ないし、2倍の34歳までしか生きられないわけでもない。
15才まで生きのび成人の通過儀礼を達成できた狩猟採集民は、病気や大怪我などがなければ70才くらいまで生き延びられる者も多い。
もちろん女性は出産できる年齢は40代くらいまでではあるし、出産時に母体が死亡する例も少なくはないが。
100人の集団2つで出産可能な人口がその半分だと50組のカップルが出来るから普通なら40人位は子供が生まれてくるはずだ、一年で子供が生まれない女を追放すればその後の出産は安定するだろうしな。
その中で成人出来るのが半分でも20人位はいるはずでその半分が成人の通過儀礼を達成出来なくてもおかしくはない。
通過儀礼というのは成人したものが穀潰しでない集団の一員として認められるための最低限のハードルであって、狩猟集団では当然だが狩猟がうまいものが自分が好んだ異性を夜の相手にすることが多い。
そうなると相手としてあぶれる女性も出てくるわけなのだろう。
狩猟採集集団は基本的にリーダー集中婚かつ下部総偶婚となるので中途半端な能力の男性や中途半端な魅力の女性の方が子供が出来ない可能性が高かったりする微妙な時代なのだ。
一方農耕や貝などの採取で食料を獲得するのに身体能力の高さ、例えば象や鹿を石槍で仕留めることが出来なければ食べ物にありつけない、などということがなくなると総偶婚に移行してゆくわけだが。
「とにかく食べ物を自分で得られるようにするのが先だな。
あと尿や便をする場所をちゃんと決めていこうか。
木の根元に穴をほってそこに埋めるようにするとか」
フローレス人が両手を上げて答える。
「わかったー」
「いや、お前さん達が食べ物を得ることに関しては心配してないけどな。
糞尿処理だけはちゃんとしてくれな」
「わかったー」
植物の栄養の少ない熱帯では動物の糞尿は植物にとって重要な窒素肥料なのだ。
そしてフローレス人は体は小さいが身体能力は全体的に高いからな。
頭も決して悪くはない、言語能力はまああれだが。
「そうしたら先ずは自分で貝を取ることからでしょうか?」
サピエンスがそう聞いてくるので俺はうなずく。
「ああ、履物などを貸してやって貝を取るのが一番じゃないか。
ちゃんと焼くことも教えてやってくれな」
「はい、分かりました」
前からいたサピエンスが新しく加わったサピエンスを連れて海岸に向かっている。
ああ、石器とかバナナの葉っぱの衣装などもちゃんと分け与えてるよ。
そして産んだ子供がいない時点では男女の性差は特に関係なく食料集めは行わせるべきだな。
ただ出産時や育児をしている時は当然分けるべきだが。
生活空間などを分けるためにもそろそろ木材を用いた高床式住宅なども建築する必要もあるかもしれないがそうなるとまた大変なのだよな木材の加工というのが。
高床住居はスンダランド付近の東南アジアやメラネシア、ニューギニアなどでは一般的な居住形態で通風性に優れ、雨季のスコール等による多雨による地表の洪水の影響も受けにくく、地面から離れているため蛇などの害獣や蚊などの害虫などの侵入を防ぐ事もできる。
まあ、洞窟も通風性はともかく洪水の影響を受けにくかったり害獣などが入ってきにくかったりするメリットは同じようにあるのだが。
木の上に家を作る樹上家屋や川や海の上に家を建てる水上住宅もあるな。
ただ、もうちょっと余裕ができてきたら取り掛かったほうがいいかもしれんけど。




