無事に子供が生まれたのはめでたいことだ
さて、ココナッツファイバー製の繊維や土器と磨製石器が揃った結果として意外と俺達の生活の衛生レベルは上がったと思う。
繊維を編むことで縄を造り、その縄とバナナの葉っぱを組み合わせて身体を覆うことでちょっとしたことで怪我をして破傷風になるような可能性も減ったし、草履や草鞋を使うことで足の裏を怪我する可能性も減った。
「足が痛くないのはいいけど、結構すぐ履きつぶしちまうのは問題だけどな。
まあ、しょうがないよな」
フローレス人達は後追いで頷く。
「しょうがないー」
「しょうがないー」
でもサピエンスたちはフォローしてくれる。
「でも、これがあるだけで随分助かりますよ」
「そうですそうです」
ココナッツファイバーはかなり丈夫な繊維ではあるのだが、やはり履きながら歩いていると擦りつぶれていってしまう
最終的には火をおこす時に焚付に使ったりできるから無駄はない。
「そう言ってくれるとありがたいよ」
そして一番最初に妊娠したサピエンスの女性はもうすぐ子供が生まれそうだが、このあたりは温かいから特段産湯とかそういったものは用意する必要はない。
産湯で体を温める必要性がないのだな。
「どうか無事に産まれてくれよ」
問題なのはこのサピエンスの集団には出産経験のある女はいないということだ。
無論世界的に見ると出産は母親になる女が単独で行う例も少なくはないが、できれば出産経験のある女がそばにいて助言をしたり手助けをした方がいいのだが……。
いないものはどうしようもないから男は無事に自然出産がすんで母子共に元気であってくれるのを祈ることしかできない。
不安そうにしている俺をみてフローレス人の女がニパッと笑っていった。
「だいじょうぶー」
ん、そうか、サピエンスには確かに出産経験者はいないけどフローレス人にはいるはずなんだな。
「そうか、なら子供を産むのを手伝ってあげてくれるか?」
「まかせてー」
出産を間近に控えたサピエンス女性は奥に隔離されてるが、ココナッツファイバーの床敷マットや煮沸した飲水などは用意してある、そして後はフローレス人の出産経験のある者に任せるしかないな。
”ああああああああああああー”
洞窟内に響き渡る絶叫の後に産声が響いた。
”おぎゃー、おぎゃー”
俺たちはたまらず洞窟の奥へと向かう。
「親子とも無事か?」
フローレス人がニパッと笑っていう。
「だいじょー」
母親になったサピエンスの女性はそれは嬉しそうに子供を抱いていた。
「よかった、本当に良かった」
こうして新たに生まれた命が俺たちの集団に加わったのだった。
そしてそれはサピエンスたちにとっては輝く希望そのものだっただろう。




