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自作の異世界の味はどうですか?  作者: ベータ版
              [現実世界2]

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12/21

11話 不穏

「オッス、潤」

 教室に入って、第一声。

 黒板とは一番距離のある居眠りには最適な席は残念ながら、朝だけはやたら騒がしい。

 おかげで最も睡眠欲求が高いこの時間に眠れないことは日々ストレスを蓄積させる原因だ。

「おはよぉ、西村」

 欠伸あくびと共に朝の恒例行事を反射的に口にする。

「ずいぶん、眠そうだな。また、夜遅くまでネットオークションサーフィンでもしてたのか?それとも...」

 西村は頬を緩め、少しニヤついて調子に乗ろうとしていたのを察し、目を細め静かな怒りをあらわにする。

「うっさいな。これ以上いったら皆にあの事ばらすからな!あと、今度からもっと、挨拶控えめにしろよな」

 睨みを利かせ、今の眠れない苛立ちを西村にぶつけた。

 西村はプッと小さく吹き出した。

「なんだよ」

 ムスッと口をへの字に曲げて、突然笑い出した西村を呆然と眺める。

「いや、挨拶遠慮しろとか、面白すぎだろ。もっと挨拶はするべきとか、議題に出るのが普通なのに潤の場合はその反対だもんな。おまえ本当(ほんと)面白いよ」

 彼は腹を抱えてそのまま窓際の席に向かって行った。

 何が可笑しくて彼が笑っていたのか、まるでわからなかったがこんなどうでも良いやりとりがいつもの僕の一日の始まりだ。


 ドアに近いせいでみんなからよく声がかかり、今のようにうっとおしく感じることがほとんどだが、そんなデメリットを一瞬にして払拭(ふっしょく)させる事が1つだけ存在した。


 それが何かというと.....。


「おはよう、天宮くん」


これである。

 優美でオルゴールを聞くような心地よい声がいつものように潤の耳を響かせる。

 曲がっていた腰は瞬く間にビシッとたち、黒板の上に目を向けた。

 もう、こんな時間か。

 時刻は8時20分。

 この時間は普通なら話すことすら躊躇われるクラスのヒロインが登校するロイヤルタイム。

「お、おはよう、黒崎さん」

 さっきの西村にした態度とは異なり、挨拶をされただけで緊張した僕はどうにかぎこちない笑顔を作り、挨拶を返した。


他の人ならこんなに緊張しないのにと、心の内で言い訳を呟いている間に、彼女は膝前にあるバッグを白くてか細い両手でしっかりと掴みながら、ゆっくりと教室に入った。


 黒くてサラサラの髪は1つに束ねられ、髪先を静かに揺らす紅一点のヒロインに、男女関係なく教室中の目は釘ずけだ。


 彼女の名前は黒崎くろさき りん


 吹奏楽部に入っているにも関わらず、運動神経は抜群で短距離走もさらには長距離走でさえも陸上部に劣らない成績を誇り、勉強においても学年で一番と噂される超がつくエリートお嬢様なのだ。

 潤が話しかけることなど恐れ多い黒崎さんに、挨拶をしてもらえることは不幸に囲まれた潤には学校生活の中で最大の幸せだった。

 頬のニヤニヤは止まらず、僕は寝たふりをして机に伏せる。

 明日も挨拶してもらえるかな、などと考えているといつの間にか意識に(もや)がかかり、ぐっすりと寝入ってしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー。


 あれからどれだけの時間が経ったのか、突然男の大きな罵声が教室に響かせた。


 「おいっ、黒崎。お前いつまで寝てるんだ、さっさと起ろ!」


 先生にどやされ潤は飛び起きる。

 黒.....崎?自分が言われているわけではないことに気づいた潤は周りに合わせ、まるで今まで眠っていなかったがごとく周囲に行動合わせてみたが、さすがにバレていたらしく追加の罵声が潤に飛んだ。

 「お前もだ、天宮。お前ら二人は放課後、生活指導室にこい」

 先生が声を荒げ、すぐに黒板に数式を書き始めた。

 「数学だ......」

 小さくそんなことを口にした潤は、この教科が4限目だったことを思い出し、自分の罪の重さに今更ながらに気づいた。


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