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【第一話】:迷子

 はじめまして、弐梨メカです。

 BLです。

 だんだん18禁モノになります。

 警告終了。

 疲れた。

 まずは読んでみてください。

 込野羽琉(こみの はる)は盛大に困っていた。

 天然の茶色の髪を乱しながら、走ったり、立ち止まって辺りを見回したり。

 そう、いわゆる迷子というものだ。

「あー、どうしよ…体育館どこー」

 ひとり虚しくつぶやきながら、若干タレ目の甘い瞳を潤ませていた。

 先ほど全力疾走したせいで、頬も紅潮しフェロモンも全開である。

 着崩した――というより、きちんと着れるほどの器用さを持ち合わせていない――制服からのぞく肌は真っ白で、とても綺麗だ。

 なぜ、羽琉がこんなにも疲労困憊する羽目になったのかは、一ヶ月前の会話が原因だといえる。

 ―― 一ヶ月前の羽琉の自宅にて。

「羽琉、あんたどうせまだ高校決まってないんでしょ?」

 そう、母に尋ねられた。

 羽琉はバツの悪い顔をしながら、唇を尖らせ、頷いた。

「なら、私のお兄ちゃんの高校に行きなさい」

 羽琉はきょとんとした。

 母はさもめんどくさそうに続けた。

「どうしては分かんないんだけど、私の兄ちゃん私立の男子高の理事長なんだって」

「えっ、マジ!?」

 羽琉が大声を上げた。

 母が片耳に指をつっこみ、うるさい、と意思表示をした。

 羽琉が慌てて口に手を当てる。

 母を怒らせるとひどい目見るのは経験済みだ。

「あいつ、あんたにベタ惚れでしょ? だから、ぜひここに来させろだって。学費はあいつが出すって言ってるから、そうしなさい」

「い、良いのかよ。そんな簡単に決めて」

 ベタ惚れ、というワンフレーズは総無視で羽琉が聞いた。

 学費一つで自分の進路が決められても良いのだろうか。

 多少の疑問は飲み込んだ。

 あまり質問が多いと本当に生命に危機が迫る。

「何、文句?」

 母のどすの効いた一声。

「滅相もございません」

 ――という一連の出来事のあと、羽琉は入学試験に受かり、朱宮(あかみや)学園への入学が正式に決定した。

 実はかなりIQが高いという事実は、周囲、本人ですら知らない。

『つけあがるネタを与えるものか』

 という、母の考えがあったとかなかったとか。

 とにもかくにも、頭のいい羽琉はトップの成績で、朱宮学園の試験に合格した。

 全寮制、という生活力の欠片もない羽琉には喜ばしいオプションがついていたため、合格通知が届いてからすぐ、羽琉は荷造りをした。

 私立の高校ということで、制服もさもご立派だった。

 凝ったデザインに肌触りの良い生地。

 しかもブレザーにネクタイと、ビジュアル的にも完璧だ。

 はじめは乗り気でなかった今回の話も、単純な羽琉は、だんだんと入学式を心待ちにするようになった。

 それとは逆に、母に少しずつある不安が芽生えていた。

 百六十センチ弱の身長に、四十五キロ前後の体重。

 小柄で、華奢な体型だといえる。

 亡くなった羽琉の父親譲りの色白な肌と――溢れんばかりのフェロモン。

 少しタレ目の甘いマスクに、自分に似た天然の茶色の髪。

「・・・・・・食われるわね」

 それが、母の唯一の心配事だった。

 羽琉は成長するにつれ、父親譲りのフェロモンが目立つようになってきた。

 そっと目を細めて微笑む時の色っぽさや、その体からにじみ出る色気に、中学時代は男女構わず虜にしてきた。

 主に男を。

 それでも今まで食われずにいられたのは、一概に羽琉の兄のおかげだ。

 羽琉の兄、秋良(あきら)は羽琉とは違い、とてもいい体格をしている。

 サッカーをやっていたため、小麦色に焼けた健康そうな肌。

 ワイルドな顔立ちは母親のシャープさを受け継いだと言える。

 喧嘩もめっぽう強く、強姦されかけた――本人は気づいていない――羽琉を何度も救い、悪い虫はつかないようにしてきた。

 そんなこんなで、羽琉は今も純情を保っている。

「まぁ・・・羽琉ならなんとかなりそうね」

 結局、さほど心配した様子もなく、さっぱりとした顔で、母は羽琉の入学式前日に就寝した。

 ――入学式当日。

 玄関口での親子の会話。

「母さん、行ってくる」

「はいはい、行ってらっしゃい。夏休みには一応帰ってきなさいよ」

「い、一応って・・・」

「何」

「行ってきます」

 それから、バスを乗り継ぎ、タクシーに乗り換え、とかれこれ数時間後にようやく、羽琉は目的地についた。

「でか。パンフで見たのとは大違いだな」

 門の前で独り言をつぶやき、羽琉は朱宮学園への一歩を踏み出した。

 校庭は新入生であふれかえっていた。

 ほとんどが親と共に入学式に参加するようで、羽琉のようにひとりで立ちすくんでいる生徒はなかなか見当たらなかった。

 内心不安になりながらも、朱宮学園の地図を握りしめて、一年生の教室に向かった。

「おはようございます、新一年生の皆さん、そして保護者の皆様。私は、一年生の副担任の小川梨音(おがわ りおと)と申します。担任の教師は、体育館で待機しています。・・・・・・それでは早速ですが、入学式での、入退場の説明と各自の席の確認をします。まず、入場ですが――」

 羽琉はほっと一息ついた。

 副担任の小川は見るからに人あたりの良さそうな顔をしている。

 爽やかな好青年といった感じだ。

 安心すると同時に羽琉のなけなしの集中力はすぐに切れた。

 小川はご丁寧に、校舎から体育館につながる通路を説明し、それが面倒ならば、校庭から直接体育館に行っても構わないとまで言っていた。

 それを聞き逃したばかりに――小川が話しているあいだ、始終外の風景を眺めていた――羽琉は数十分後、泣きを見ることになるのだ。

 小川のしっかりとした説明により、どの生徒もたいして迷うことなく体育館についた。

 しかし、ほとんどの生徒が移動している最中、羽琉はウトウトと睡魔に襲われていた。

 必死にまぶたを持ち上げ、ひとつ伸びをする。

「眠いー。でも遅刻したらまずいしな。今は我慢して・・・・・・ん? なんでおれ一人なんだ?」

 羽琉の問いに答える者は誰もいなかった。

 まずい。

 かなりまずい。

 半端じゃなくまずい。

 羽琉の顔が真っ青になる。

 自分が方向音痴で、迷子になった件数は両手の指じゃたりないことは自覚している。

 それなのに、体育館に行く道順がわからないときた。

「ど、どうしよ。誰かに聞くか・・・って、全員体育館だよな・・・・・・やば・・・・・・くないかもしれないぞ、おれ」

 突然羽琉の顔が明るくなった。 

 教室までの道のりを地図を見て来たことを思い出したのだ。

 実のところ、本人は地図など全く読めておらず、地図を文字通り『見ながら』歩き、角に突き当たっては曲がり、階段に突き当たっては上がり、を繰り返しただけなのだが。

「地図があれば、体育館まで行ける! ナイスおれ!」

 的はずれな希望を見出した羽琉は、入学式開始十五分前になりようやく、教室を出た。

 そして、冒頭に至る。

「マジでどうしよう・・・あと五分しかないのに・・・」

 だんだん涙まで浮かんできた。

 羽琉はその場にしゃがみこみ、涙を袖で拭った。

 その時。

「何してんの、お前」

 背後で、低い、ハスキーボイスが聞こえた。

 羽琉は女の子座りをしたまま、首だけ振り返った。

 そして、思わず目の前の男に見惚れた。

 漆黒の艶やかな髪。

 少し長めだが、決して不潔には見えない。

 前髪から覗く、切れ長の瞳。

 おそらく百九十近くある長身に、スラリと伸びた長い脚。

 形の良い唇が、再度動いた。

「お前、新入生?」

 羽琉はなぜかドキリとして、慌てて立ち上がった。

 心臓がバクバクしている。

 頬がかっと熱くなる。

「そう、です」

 震えた小さな声になってしまった。

「迷子か」

 幾分か柔らかくなった声色。

 羽琉は嬉しくなって、顔を上げた。

 気の抜けた笑みを見せる。

「はい」

「・・・そうか」

 不覚にもときめいた。

 男は口元に手を当てて、赤くなった顔を隠そうとした。

 羽琉のあんな無防備な顔を見たのだ、無理もない。

「先輩、ですよね」

 羽琉がそっと近づいて、上目遣いに――身長的に――男を見た。

 男は抱きしめたくなる衝動をこらえて、返事をした。

「そうだ」

 そっけない返事に、羽琉がしゅんとなる。

 桜色の唇をかんで、男の目を覗き込む。

 ――おれ、馴れ馴れしかったかな・・・・・・? 怒らせちゃった?

 あからさまに態度が変わった羽琉を見て、男が焦ったように続けた。

「お、おれは三年の東雲涼牙(しののめ りょうが)。風紀委員の仕事で校内の見回りをしていたんだ」

 少し早口ではあったが、名前を教えてもらい、羽琉はにこりと微笑んだ。

 無邪気な笑顔。

 男がさらにうろたえた。

「東雲先輩って呼んでも、いいですか?」 

 東雲の服の端をつかみ、また、上目遣いに言った。

「・・・っ」

 東雲がきゅんと鳴った胸を抑えて、羽琉から目をそらした。

 羽琉がこてん、と首をかしげた。

「東雲先輩・・・・・・?」

「お前が、悪いんだからなっ・・・――」

「へ・・・・・・んっ」

 唇を塞がれた。

 柔らかい東雲の唇が、押し当てられている。

 気づいた瞬間、羽琉は真っ赤になった。

 ――なんでっ? 東雲先輩が、おれに――。

 答えを見つける暇などなかった。

 生暖かいものが唇に触れる。

 羽琉は驚いて僅かに口を開けた。

 その隙間に東雲の舌が入り込む。

 ――うそ・・・・・・! し、舌がっ。

 舌が絡み、裏側を舐められる。 

 きつく舌を吸われて、体がはねた。

「あっ・・・ふ、んっ」

 歯をなぞるように舐められて、その度に東雲の唾液が移される。

 飲み下せなくて、口の端からこぼれた。

 腰が抜けたようになって、膝が折れた。

 ――も、立てないよ・・・。

 羽琉がよろめいた。

 東雲がしっかりと腰を抱く。

 引き寄せて、さらに口内を味わった。

 くちゅり、ちゅ、ぴちゃ。

 水音が大きくなる。

 羽琉は恥ずかしくなり、弱々しく首を振った。

「んっ、あ、ん・・・ふ」

 ようやく東雲が口を離した。

 お互いの唾液が混じりあった糸が伸び、切れた。

 東雲の唇が艶めかしく濡れている。

 東雲がキスを終えて、羽琉を見つめ――欲情した。

「はぁ、ぁ、はぁ・・・んっ、ふ」

 羽琉は長いキスで、呼吸の仕方がわからず、必死に酸素を求めている。

 目は生理的な涙で潤んでおり、目のふちはほんのりと色づいている。

 桃色に染まった頬に、濡れた唇。

 ――やば・・・勢いでキスしちまったけど・・・こいつすっげーエロい・・・・・・。

 東雲は今、半勃ち状態だ。

 羽琉が潤んだ瞳で、東雲を睨む。

 全く効果はないのだが。

「ふ、ぅ・・・東雲、せんぱぃ、のっ、ばか・・・っ」

 ――可愛いぃっ! ばか、とか可愛すぎるだろっ。

 東雲、完勃ち。

 それでも、一応謝罪の言葉を告げる。

「・・・悪かった。いきなりキスして」

 羽琉が唇を尖らせ、恥ずかしそうにうつむいた。

 キスしている間中、ずっと握っていた東雲のシャツはシワになっている。

 さらに力を入れて、シャツを握る。

 なかなか顔を上げない羽琉に、東雲は声をかけた。

「どうした? 大丈夫かお前」

 羽琉が小さな声でなにかつぶやく。

 聞き取れなくて、東雲がもう一度聞き返した。

「なんて言って――」

「せ、先輩がえっちなキスするからっ、おれ、た、勃っちゃった、んですっ」

 第一章は終了しました。

 第二章から、エロ入ります。

 初めてBL書いたんでわけわかんなくて窒息しそうです。

 エロ書いたら死ぬかも。

 なんてね。

 では、失礼します。

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