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真代 未来3

こうしてあっという間に冬休みがやってきました。


わたしたちの学校の冬休みは、雪の降らない地域と比べると長いことが特徴です。

冷え冷えとした、沈み込むような重く澄んだ空気。どこを見ても雪景色。

山も、畑も、家も全部が全部。真っ白な世界。

長い冬が始まってしまいました。


冬休みに入ってすぐに、わたしは連理ちゃんとの約束を果たすことにしました。

改めてではありますが、スキーというスポーツは雪が降り積もる地域の住人にとってはとってはなじみのあるレジャーだと思います。

もちろんスケートのほうが好きだという人もいると思いますが、それは好みだったり、

小学校、中学校とかの体育の授業だったり、

そういった施設が近くにあるかなどの環境も影響していると思います。


わたしは小学校からスキー授業があったので、ほどほどにスキーはできると胸を張っていえます。

が、逆にスケートは2~3回くらいしか滑ったことがないので、

高校の冬の体育がスキーと聞いたときはとても安心しました。

ものすごく運動神経がいいほうではないので、

なれないスポーツよりは慣れているスポーツのほうが単位も取りやすいしという

下心があったとも言えます。

高校の成績はとても大切です。


そういえば泊りがけでスキーに来る人、というのが存在すると聞いたことがあります。

ですがわたしたちにとってスキーとはそこまでの、旅行といえるほどのものではありません。

今回行くスキー場は最寄駅からバスで10分ほどにあり、定期的にバスが運行しています。

わたしはバスの発着場所である駅までさらに電車で20分くらいかかりますが、

駅までの移動時間を加味してもトータルで片道1時間もかかりません。

連理ちゃんや阿坂君はご自宅がスキー場のある街に住んでいるので、

バスに乗るだけでつくことができるとのことなのでもっと手軽です。

たしか阿坂君は中学校ではスキー部に所属していたとのことですが、

スキーが得意といったところにはこういった事情があるのかもしれません。


そんなわけで、わたしたちにとってスキーとは、お手軽で手短で、雪に閉ざされた季節において、そこまでお小遣いの多くない、かつ田舎で娯楽のないわたしたちにとって格好のレジャーといえると思えます。

でも。スケートもいいかもしれません。

連理ちゃんと一緒なら何でも。どこでも。なんでも。


待ち合わせの駅につき、一両編成の短い列車を降りると連理ちゃんと阿坂くんがわたしを待っていてくれました。

阿坂くんは今回においても虫除けというか、いざという時の要員です。

わたしたちだけではどうにもならない時に阿坂くんが対応してくれるそうです。

男の人がいるだけで危険の回避率がかなり上がりますからね。

連理ちゃんは本当に一人でおいておくと誰か別の人に連れていかれそうだから、

阿坂君には気まずいかもしれないが、あきらめてついてきてもらうしかないです。

「お待たせしてしまいましたか?」

バス停で待っていてくれてよかったのに、わざわざ駅で待っててくれるなんて嬉しいです。

バス停だって駅の目の前から出るのだから迷ったりしないのに。

「ううん。時刻表通り。阿坂。荷物もって」

「気にしないで真代さん。前降りの列車から降りられない人もいるんだ。だから念のためね。」

連理ちゃんはわたしにだけにこやかに、

そして阿坂君を見もせず荷物持ちを命じました。いつも通りです。

阿坂君もいつも通りナチュラルにわたしたちの世話を焼いてくれます。申し訳ないです。

結局自分で運ぼうともしましたがいいからと言われて結局持たれてしまいました。

「ありがとうございます。」

せめてお礼だけは欠かさないようにしないと。


そうなのです。阿坂君は優しい人です。

その優しさが連理ちゃんだけに向かっていることは知っての通りです。

優しいからこそ、阿坂君もモテるようです。連理ちゃんに隠れていますが。

高校1年生後半ですでに何度か告白されて、そしてそれを振っているようです。

何でそんなことを知っているかというと、連理ちゃんがわたしに愚痴るからです。

阿坂がまた告白されている。と。


誤解を招くとよくないので弁明しますが、阿坂君が連理ちゃんに「女生徒に告白されたけど断った」と言っているわけではなく、

「ごめん。ちょっとよびだされてて。帰るの少し待ってくれる?」

と、たまに連理ちゃんに言ってくることがあり、

不審に思った連理ちゃんが後をつけて…そういう場面に遭遇し、判明したそうです。


そしてそれをわたしに報告するのです。

そういうやや天邪鬼っぽい態度をとるから、仲良し兄妹。反抗期()みたいに言われる要因です。


おそらくですが、告白された方は連理ちゃんに対する優しさを自分にも与えてくれる。

と思っての告白なんでしょうが、連理ちゃんと一緒にいればすぐにわかります。

阿坂君のあの優しさは連理ちゃんにだけ向けたものです。


そうこうしているうちにスキー場に向かうバスに乗り込むことになりました。

わたしは連理ちゃんをバスの窓側、奥の席に押し込みます。

通路側はよくない。いついかなる時も警戒を怠らない。

すっかり保護者のような気持になっています。


連理ちゃんはたった10分のバスの旅も雪景色を楽しんでいるようでした。

「あっ。みてみて未来。狐がいるよ」

信号で止まった時に、連理ちゃんがはしゃいでわたしに教えてくれます。

確かに狐です。狐がじっと道路の奥、畑からこちらを見ています。

わたしは田舎の学校出身なので冬になるとグラウンドとかに年1くらいで見かける厄介なお客様です。

かわいいとかそういった気持ちはみじんもわきません。

「本当ですね。念のためですが、狐には近づかないでくださいね。エキノコックスが怖いので。

足跡rとかも触っちゃダメですよ。」

「はーい。」


子供の頃から大人に口を酸っぱく言われていることですが、エキノコックスは感染、発症したら手術しか治療法がありません。

当然連理ちゃんも知っていることではあると思いますが、

連理ちゃんのこととなると言っておかないといけないような気になってしまいます。

ふと、阿坂君がこういったときに話しかけてこないのは違和感があり、彼のほうをみるとすぅすぅと寝息を立てて寝ていました。

さっき乗ったばかりだというのに。

なんとなく眉間にしわを寄せて苦しそうにも見えました。

いや、うなされているのかもしれません。

起こしてあげようとも思いましたけれど、変わらず窓の外を見ていた連理ちゃんに「最近ずっと寝不足みたいだから」と止められたのて、寝かせてあげることにしました。

あと少しで到着しそうですし。バスの中で寝ているから苦しそうに見えるだけなのかもしれません。


そして、わたしは心の隅にふっとよぎった何かを見なかったことにしました。

そうですとも。

けっして連理ちゃんが阿坂君を気にかけるようなことを言ったことに驚いたせいではないと思います。

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