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影に残る約束  作者: 静かな影


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6/6

侵蝕

街が生まれるずっと前……

世界に名が与えられるよりも、ずっと前のこと。

静寂は……決して「空虚」ではなかった。

何かが動いていた。

生命としてではない。物質としてでもない。

ただ、「気配」として。

……

彼らに決まった形はなかった。

ある時は煙のように見え、またある時は空間そのものの欠落のように見えた。

まるで世界が、彼らをどこに配置すべきか測りかねているかのように。

……

それなのに――彼らはそこにいた。

……

彼らがどこから来たのか、誰も知らない。

知る術もなかった。

記録はなく、起源もなく、説明すら存在しない。

ただ……現れるのだ。

一瞬だけ世界が口を開き、何かが零れ落ちたかのように。

……

最初は、何もしなかった。

感じず、考えず、望みもしなかった。

ただ……そこに存在していた。

……

やがて世界が変わり、人間が現れた。

最初は遠くから、理解も干渉もせず、ただ眺めているだけだった。

だが、その脆き生身の存在には、決定的な「違い」があった。

かつて存在しなかったもの。

彼らを惹きつける、何か。

「魂」だ。

……

ある魂は弱く、ほとんど感知できないほどだった。

だが別の魂は、あまりに濃密で、重く……

己の存在以上の何かを背負っているかのようだった。

……

彼らの一人が、それに「触れよう」とした時――すべてが変わった。

光もなく、音もなかった。

だが、「亀裂」が生じた。

エコーはただ触れただけではない。彼は「吸収」したのだ。

……

そしてその瞬間――彼は「感じた」。

痛み。恐怖。絶望。

彼のものではない感覚。彼の中に存在するはずのない感情。

それが彼を破壊し……同時に、創り上げた。

形は安定を失い、捻じ曲がり、肥大し、歪んでいった。

そして――初めて世界は耳にしたのだ。

「叫び」を。

人間のものではない。だが、完全に空虚でもない叫び。

その瞬間から、彼らは変貌した。

……

彼らはそれを求めるようになった。

より濃密で、強く、生気に満ちた魂を。

だが、誰もがそれに耐えられるわけではなかった。誰もが同じように進化できるわけでもなかった。

やがて、時間の経過とともに「格付け」が生まれた。

公式なものでも、完全なものでもない。だが、伝説として語り継がれるほどの分類。

断片体フラグメント

最も一般的で、不安定な存在。

決まった形を持たず、ほとんど空っぽに近い。

彼らは選ばない。ただ、反応するだけだ。

弱き感情――恐怖、不安、絶望に寄り添う。

数は多いが、長くは持たない。

捕食体デバウアー

完全な魂を喰らうことに成功した個体。

より巨大で、攻撃的で、暴力的。

彼らはもはや彷徨わない。「狩り」をするのだ。

だが、限界はある。喰らえば喰らうほど、不安定さは増していく。

内側から、魂が抗うのだ。

それが彼らを、さらなる異形へと変えていく。

そして……存在するはずのない者たち。

残滓レムナント

稀少であり、確認されることはほとんどない。

記録においてすら忌避される存在。

なぜなら、彼らの中には「何か」が留まっているからだ。

断片。壊れた記憶。不完全な意志。

本能に従わない動き。

まるで内側の何かが、まだ戻ろうともがいているかのように。

だが、それもまた、証明されたことはない。

強大すぎる個体は姿を消すか、消去されるか……あるいは、見つからない術を学んだからだ。

……

いつしか、彼らを阻む者がいない時代は終わった。

彼らが肥大し、喰らい、進化した時間は過ぎ去った。

なぜなら、ある魂たちは――喰らわれなかったからだ。

それらは反抗した。

消えるはずだった人間が、留まった。

それどころか、彼らは「視る」力を得た。

感じ、やがて、戦う力を。

……

なぜかは分からない。どうやってかも不明だ。

だが、濃密すぎる魂は、容易には砕けなかった。

そうして――計画もなく、意図もなく、説明もなく、最初の「彼ら」が現れた。

時を経て、彼らは組織化され、鍛錬を積み、より大きな存在となった。

星響機関せいきょうきかん」。

英雄としてではなく、ただの「結果」として生まれた組織。

それ以来、世界は再び変わった。

エコーは減り、弱い個体はすぐに消された。

強い個体は稀少となった。

もはや、容易に食える時代ではなくなったのだ。

彼らはもはや、どんな魂でもいいわけではない。

弱い魂では、もはや満たされない。

彼らは「密度」を、強き「力」を、リスクに見合う「何か」を求めるようになった。

……

だからこそ、記録は破綻し始めた。

残された個体はもはやパターンに従わず、現れるものは既知の枠に収まらない。

今、目の前にいる「これ」のように。

これは断片体ではない。

捕食体でもない。

ましてや、残滓などでは到底ない。

魂を喰らうだけではない。

肉体を喰らい、蓄積している。

あらゆる限界を、同時に踏み越えようとしているかのように。

間違い。不完全。

あるいは――進化しすぎた「何か」。

……

静寂が流れる。

分類などどうでもいい。起源など知ったことではない。

これは、存在してはならないものだ。

そして、今そこに、いる。

影浩かげひろの目が動いた。本能的に。

たった一つの、一点に向かって。

星奈ほしな

思考は、単純。冷徹。そして、明快だった。

「貴様が何者かは関係ない」

彼の気配が、さらに深く沈み込む。

「彼女に仇なすというのなら……」

……

「俺が、貴様を終わらせる」

「ようやく『エコー』の正体について少し触れることができました。しかし、影浩の前にいる個体は記録にない異質な存在のようです。本当の戦いはここから始まります!物語の世界観を楽しんでいただけたら嬉しいです。」

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