強敵多数出現!
そろそろ終わりにしたい。
(アイーデ視点)
ウィルメシアスがこの世界に死の宣告を受けてから半日が経つと街は火の海になり、沢山の命が失われました。
ウィルメシアスの構成員は一人一人が上級ウィザードほどの力を所持しており異質な強化までされています。
私達は冒険で鍛え上げられた経験値とレベルで何とか戦えていますが、ダメージも疲労も残っています。
「ムーンドライブ!」
赤い水の月がウィルメシアスを包み込み気絶させ、何とかこの場を凌ぐことはできました。
「はぁ……二人は大丈夫?」
「えぇ、女王を舐めないでもらえる?」
「私は大丈夫」
二人はまだまだ戦える。しかしやはり私だけは少し魔力が尽きてきた感じがします。
だけど、キリングさんが帰ってくるまでは私は……
「行きましょう!」
~~~
再び俺は目を覚まし昨日のことを思い出した。
「……はぁ、飲みすぎた」
そういえば、剣の男に突然斬られたんだった。背中の血は止まっているので何とかセーフ。
危ない危ない。
人生初めての二日酔いで俺はさらなる地獄を味わおうとしていた。
「うえ……」
酒場の水を勝手に飲みなんとかリバースを抑える。
俺は一人だ。にぎやかだった酒場にも誰もいない。
外に出よう。
だけど……
「嘘だろ」
今まで賑やかだった街は炎に包まれている。
「……殺せ! 人間を殺せ!」
人ではない何か骸骨がいる。
「ライジン何をやって!」
しかし、よく見るとライジンではない。ライジンは人を殺すようなやつではないからだ。
それに意志を持たない、何か別の違った何かだ。
その骸骨の群れは俺を見つけると一気に殺意が集まる。
「人間を殺せ!」
周囲から魔法が飛んでくる。
「危な!」
全ての攻撃をかわしながら骸骨を蹴散らしていく。
「おら! おら!」
砂のように骸骨は倒れていく。しばらく同じことを繰り返せば全滅する。
「大した事ないガムのような雑魚だ」
手を払い背中の傷が痛みだす。
「……本当に怪我した」
どうしてこんなことになっているのか誰かに事情を聴こうとするも、周辺に人という存在は全くと言っていいほどない。
「誰もいないか」
俺は進む場所なんて分からないけど歩き続けた。時たま邪魔が入るもその度に蹴散らしていく。
みんなは無事かな。
あの三人は強くて魔法の才能は俺よりある。でもあの剣の男は危険だ。
相当の達人で背中を斬られるなんて失態を晒すくらいだ。
あんな奴野放しにしていたら流石に死人が出てしまう。
でも俺は、どうしてこんなにやる気が、エンジンが掛からないのだろうか。
普通なら命の危機に抗おうとするのが人間の本能だ。
でも、やはり斬られたとき俺は死を受け入れようとしてしまった。そういう考えになってしまったのだ。
俺は立ち止まらずに一人歩く。
やはり、中途半端だと俺でも思うよ。
~~~(アイーデの視点)
翌日も戦い続き。何度も何度も命の危険に遭遇します。
子供を助けたり、相手の行動を予測したり……だけど、ウィルメシアスの力は強大で恐ろしいものでした。
私は傷を負い、肩に治癒魔法をしますが痛みはなくなりません。
「アイーデ大丈夫なの! あなたは下がっていなさい!」
カナディリアちゃんが私を庇い攻撃の手を強める。
「私もサポートをするから! くっ!」
強化魔法をかけようにも痛みで動けなくなります。
「アイーデさんは傷の手当てを先にして……シャドーレイン」
そのままユーディストちゃんは敵を一掃しました。
「……はぁ」
連戦連戦。私達のスタミナも限界に近く、単純なミスが目立ち始めます。
そんな時に一際異色な魔力を放った騎士が現れます。
「ずいぶん抵抗が続いている所に来れば確かスペリオルグの娘といったか」
正体も分からない謎の騎士。ですが先日のジュニルバと同じかそれ以上に強い魔力を放っています。
「……あなたは」
「俺の名前はザヴィード。ウィルメシアスの中間管理職の一人とでも思ってくれ……これから死ぬ奴に名乗っても意味はないが」
剣を抜いた瞬間。以上に空間が歪むような魔力を感じ、そして剣先が私の首に近付きました。
あぁ、これが私の……
しかし、その剣はまた違った剣で防がれました。
「中間管理職という言葉に導かれるように来てしまった」
懐かしく感じる気高さと強さを誇る黄金の鎧。
そう、彼は……
「ゲトラ!」
「え……アイーデ? アイーデではないか!」
まさか、こんな形でもう一度彼を見ることになるとは思っていませんでした。
「アイーデがいる、だが今はそんなことはどうでもいい……中間管理職!」
「騎士か!」
ゲトラは剣でザウィードと交戦。以外にも善戦しています。
「どうだ。どうだ! 私の美しい剣技!」
「……なかなか剣の腕は確かなようだな」
「……あの人全然本気出していない。むしろ実力を測っているだけ」
ユーディストちゃんは冷静に分析していた。
「ゲトラ! 逃げて!」
「何を言う! 私は……負けたくないのだ! もうmあの男に負けてから、キングファンガーズの手下に泣かせられるほど私は落ちぶれてしまった」
彼は誇り高い人物ですから、プライドはそれでも折れなかったのでしょうか。
「だが、それでも一度くらい勝利を掴めば私はまたあの時のように輝ける。その勝利は貴様から勝ち取るだけだ!」
魔法の色が金色に輝きだす。魔力をため込み隙を見計らい完璧なタイミングでザウィードに一撃を叩き込む。
「真剣星流星剣真!」
「ヒドゥンゲート・ブレードウィンド」
「え」
しかし、ザウィードに彼の剣は届かず、気付けば彼の背中から血が溢れていた。
「ゲトラ!」
「貴様の気高さは確かに素晴らしいものだ。だが相手が悪かったな……剣の実力だけでなら俺を凌駕していたのかもしれない」
ザウィードはゲトラに敬意を払います。
「空間を歪めて、さらに鎧の中から攻撃をした」
「……だから、せめてもの救いだ一撃で」
剣を首に振りかざされました。止めに入ろうにも身体は恐怖で動きません。
「ゲトラ!!!!!!」
しかし、ゲトラの首は結果として落とされることはありませんでした。
一瞬の閃光がザウィードに突撃し免れました。
「不意打ちか、命拾いしたな」
そしてその光からは謎の赤いオーラを放った。あの人が……あの人が!
「キリングさん!」
「ナイト!」
「あなた……」
~~~
激しい戦闘音に気付き走って駆け付けた。
その時あの金髪が首を刎ねられようとしているのを目撃する。
あんな奴でも死んだら寝起きが悪い、みんなのことを守るために戦ってくれていた。
それにあの剣の男に隙がないのは分かる、相当の手練れだ。
だから迷わずに俺は使うことにした。
「ステイ」
身体が焼けるように熱くなり、全てが燃え滾る。
一歩で飛ぶように素早い動きで男に突撃。もちろん読まれ反撃を喰らうが一番の目的は達成した。
「不意打ちか、命拾いしたな」
昨日俺の背中を斬ったあいつでやはり間違いない。
「キリングさん!」
「ナイト!」
「あなた……」
三人は多少傷を負っているが命に別状はないだろう、それよりこの金髪は……
「大丈夫なのか」
「……まだ、戦える。私は勝利を絶対に勝って!」
「勝ったさ、今この瞬間アイーデを守れたのはお前だけだ。俺じゃ守れなかった」
そういうと金髪は安堵の表情を浮かべる。
「なら……あとで一発殴らせろ」
「五発までならいいぞ」
金髪は安らかに意識を失った。
剣の男の前に立つとものすごい威圧を放っている。
「貴様は昨晩切った男……生きていたとはな」
「酔い潰れただけだ。この辺にストロングがないと思って油断してた」
「ストロング、強化魔法の一種か、貴様かなりの腕前だな隙が全くない」
強炭酸のあれのことだが、飲んだことないけど。
「とりあえず、みんなは下がってろ」
言えた立場じゃないし、相手の実力は異常なほど高いことぐらいは分かる。
「無理。あの人はさっきまでずっと手加減していた、私でも無理だからあなたでも無理」
ユーディストでも敵わないというと相当の実力者だ。
「お話は終わりか、ザウィード。今度こそ貴様の首を刎ねる!」
戦闘が始まると、やはりザウィードは強い。その素早く重い剣筋は躱すので精一杯だった。
「ちぃ」
反撃ができないというよりも与える隙がない。少し気を抜けばこちらがやられる。
「どうした! 貴様はこんな実力はそんなものか!」
まだ半分の実力も出していないはずだ。
「ブレードウィンド!」
背中を一度もう一度何度も切られる。
「っぐ!」
思い切り地面に叩きつけられる。
「キリングさん!」
「……斬れない。切断した手ごたえはあったはずだ」
背中から血が溢れ出しているが気にしない。
「自分で考えろ、お前が本気を出していないからだ」
「……そういうことか、貴様!」
その瞬間今までの動作とは全く違う動きをした。
「スキル! ブレードゲート!」
周囲に斬撃一気に来る。ユーディストの使う空間系の魔法であり、その斬撃のみを具現化しているものだ。
つまり攻撃を身体で防げば空間ごと斬られ、流石に皮が切れる。ならば
「ステイ」
赤い光を纏い、全てが加速し斬撃を受け流した。
「……躱した? 貴様ぁ!」
地面に安全に着地する。後はもう、簡単だ。
「俺の最終奥義を受けておいて無傷で立っていられるものがいるはずがない! 何をした」
力強く拳を握り締める。
「それも自分で考えろ」
ステイを発動し、力が沸き上がる。
「お前が何をしようとしているなんてものは関係ない。関係ないんだ……だから俺もお前も関係ない」
空間からの連撃を最低限だけ躱しザウィードに近付く。
「神技……デストライクパニッシュ!」
高速の剣を受け止める。
「とどめだ」
拳で一撃。ザウィードの鎧を砕け散る。
「何……」
生身になったザウィードの顔に重たい張り手を食らわせる。
「なっ」
50メートルぐらい飛んでいき、戦闘不能になっただろう。
「終わったな」
ステイを解除し血の気が収まる。
「キリングさん。大丈夫ですか」
「平気だ」
ザウィードは立ち上がらないだろう。
「状況が全く理解できてない。一体どうしてこんな物騒なことになってる」
アイーデは俺に説明をした。
ウィルメシアスという組織が知性を持つ生物全ての命を奪うと、その原因もよく分かっていないが、デスラドルガスという男の仕業らしい。
「なら、デスラドルガスというやつを倒せばいいんだな」
「そうですが……」
アイーデは目をそらす。そうか、俺の力を見たから距離を置くんだな。
「ユーディスト。ゲートでそいつの所には行けないのか?」
「無理、複数の魔法が邪魔していて場所すらつかめない。つかめても妨害される」
ならば答えは一つしかない、デスラドルガスというやつを見つけて倒すだけだ。
~~~(ウィルメシアスの基地)
一方、無数の結果に覆われたウィルメシアスの拠点。
ジョルニバの報告によりデスラドルガスはザウィードが敗れたことを知る。
「ザウィードが敗れたか。そんな相手がそうそういるものではない相手は誰だ……いや、まあいい」
興味を示すことなくデスラドルガスはただ世界が滅びるのを待っていた。
「……確かあやつは元マルクコロンブル王国の最強の騎士だったな」
「権力者によって人殺しの冤罪を掛けられ国を追放。デスラドルガス様と同じ志を目指すようになりました」
「ウィルメシアスは例え一人が欠けようが計画に何の支障もない。先に素晴らしい死を受け入れただけだ。やがて私達もそこへ向かう」
乱暴に扉が開かれる。銀髪の美少女。しかしその半分は血の赤で染まっている。
「ねぇねぇ、早く人を殺させてよ!」
何人かの死体を持ってくる。そのすべての手にナイフが刺さっている。
「次はだれをころそっかな? 指をころそっかな。殺し合いコロシアム! 早くやりたいよ!」
「スペイルド。好きにすればいい」
「分かった! じゃあ。もっと沢山コロッセオ!」
スキップをしながらスペイルドは人を殺しに行く。