■第86話:接触⑧
中央の崩れは。
広がっていた。
ゆっくりと。
確実に。
だが。
終わらない。
ヴァルハイン軍は。
まだ戦っている。
■前線(中央崩壊後)
「穴、拡大!」
「埋めきれません!」
叫びが重なる。
中央は戻らない。
左右も噛み合わない。
「右で押せ!」
命令が飛ぶ。
だが。
半拍遅れる。
それだけで。
進まない。
「……くそ」
■レオナルト
「……全体を捨てるな」
低く言う。
「局地でいい」
一拍。
「削り続けろ」
勝ち筋を。
無理やり残す。
■観測(レグナス側)
「中央崩壊、継続」
ミレアが言う。
「波及、緩やか」
一拍。
「全体崩壊には至らず」
ガイラスが肩をすくめる。
「しぶといな」
カイルが地図を見る。
「でも……これ」
「もう負けに近くないですか?」
ヴェルドが即答する。
「近いだけだ」
■分析
「まだ折れていない」
ヴェルドが続ける。
「だから続く」
一拍。
「続く限り削れる」
■他国視点(中規模国家ガルディウス領)
「……で?」
将が鼻で笑う。
「まだやってんのか、あいつら」
副官が頷く。
「はい。レグナス相手に――」
「レグナス?」
一拍。
将が肩をすくめる。
「小国だろ?」
「何に手間取ってんだ」
軽い言い方。
理解は浅い。
「宰相がどうとか聞いたが」
笑う。
「元は冒険者崩れだろ?」
「そんなやつに何ができる」
副官も苦笑する。
「噂が大きくなりすぎてますな」
「所詮は小国です」
その認識。
間違っている。
だが。
まだ。
誰も知らない。
■他国視点(バルザーン帝国・外務)
「ヴァルハインは粘っているか」
官僚が資料を閉じる。
「はい。決定打は出ておりません」
一拍。
「やはりレグナスは厄介か」
だが。
表情は軽い。
「とはいえ」
「所詮は宰相一人の話だ」
「国家としての地力は低い」
断定。
「崩すなら時間の問題だろう」
■ルナたち
「……舐めてるね」
ルナが言う。
レオンが笑う。
「まあ普通だ」
「見えねぇもんは分からねぇ」
エリナが不安そうに言う。
「でも……このまま続いたら」
一拍。
ルナは答える。
「気づくよ」
一拍。
「嫌でも」
■レグナス
「報告」
「ヴァルハイン、戦闘継続」
一拍。
「問題ない」
それだけ。
戦いは。
まだ終わらない。
外は。
まだ舐めている。
見えていない。
だが。
削りは続く。
確実に。
逃げ場なく。
気づくその時まで。




