■第79話:接触①
ヴァルハインは。
動いた。
判断は速かった。
理由も明確。
確かめるため。
レグナスが。
本当に原因なのか。
■ヴァルハイン軍
「進軍開始!」
号令が響く。
兵が動く。
迷いはない。
目的も単純。
レグナスへ。
それだけだった。
■レグナス側 前線
「……来たな」
ガイラスが呟く。
「早くないですか?」
カイルが戸惑う。
「判断が速い」
ミレアが地図を見る。
一拍。
「……想定通り?」
ヴェルドが首を振る。
「違う」
一拍。
「想定に合わせて動いている」
カイルが息を呑む。
「それって……」
答えは出ない。
だが。
全員が同じ方向を見る。
カイン。
■レグナス内部
「報告」
「ヴァルハイン、接近」
一拍。
「問題ない」
それだけ。
指示もない。
説明もない。
ただ。
変わらない。
■ヴァルハイン軍 進軍中
「速度を上げろ!」
レオナルトが叫ぶ。
兵が応じる。
進む。
だが。
一瞬。
隊列が乱れる。
「……整えろ!」
すぐ戻る。
だが。
また。
わずかにズレる。
「……気のせいか」
そう思うしかない。
だが。
違う。
ズレは。
確実に増えていた。
■接触前
「距離、残りわずか!」
報告が飛ぶ。
レオナルトが前を見る。
レグナスの防衛線。
整っている。
完璧に。
「……迎撃準備か」
一拍。
だが。
何も来ない。
矢も。
魔術も。
何も。
「……?」
違和感。
静かすぎる。
■レグナス側
「……撃たないんですか?」
カイルが戸惑う。
ガイラスが笑う。
「いらねぇんだろ」
「え?」
ミレアが小さく言う。
「もう始まってるから」
一拍。
カイルが振り向く。
「何が……」
ルナが答える。
「終わり」
■ヴァルハイン軍
「……止まれ」
レオナルトが言う。
兵が止まる。
おかしい。
距離は詰めた。
準備も整っている。
だが。
踏み込めない。
「なぜだ」
一歩。
出ようとする。
だが。
出ない。
「……足が」
一瞬。
遅れる。
それだけで。
動きが崩れる。
隊列が。
呼吸が。
すべてが。
噛み合わない。
「……これは」
理解する。
遅すぎたが。
「戦えない」
■レグナス
「報告」
「ヴァルハイン、停止」
一拍。
「問題ない」
それだけ。
カインは。
何もしていない。
そう見える。
だが。
すべては。
想定の中にある。
そして。
触れた者から。
理解する。
これは。
戦いではない。
触れてはいけないものだ。




