第53話:止められない進軍
進んでいた。
正しく。
完璧に。
「進軍速度、維持」
バルザーン本陣。
「補給、再計算完了」
「通信、部分回復」
すべてが動いている。
「……いい」
指揮官が頷く。
「収束している」
誤差はある。
だが。
「制御下だ」
合理的な結論。
「進軍継続」
命令は、揺らがない。
一方。
レグナス。
「……加速してるな」
バルガスが呟く。
「ああ」
短く答える。
「修正が追いついてきてる」
「……まずくねぇか?」
一拍。
「問題ない」
静かに言う。
「……ほんとかよ」
「ああ」
視線は動かない。
「予定通りだ」
一方。
バルザーン本陣。
「……次の補正」
「完了」
「射線、再調整」
無駄がない。
完璧。
「……これで終わる」
指揮官が呟く。
すべてが整った。
合理は、戻った。
その時だった。
「……報告」
「何だ」
「補給、再遅延」
一拍。
「……どこだ」
「三箇所」
沈黙。
「修正は」
「実行中」
「……遅いな」
小さく呟く。
一つ、修正する。
別がズレる。
さらに修正する。
別がズレる。
連鎖。
「……効率、低下」
副官が呟く。
「何?」
指揮官が眉をひそめる。
「全体効率、微低下しています」
あり得ない。
最適化されているはずだ。
「……再計算」
「即時」
命令が飛ぶ。
一方。
レグナス。
「……来たな」
小さく呟く。
「何がだ」
「加速だ」
一拍。
「止まれないまま」
「加速する」
それが。
崩壊の前兆。
「……怖ぇなそれ」
バルガスが笑う。
「ああ」
頷く。
「止められないからな」
合理は。
正しい。
だから。
「止まらない」
その言葉。
静かに響いた。
戦は。
加速している。
だが。
それは。
終わりへ向かう加速だった。




