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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第430話「ジョーカーの足枷」

アルカディア帝国が誇る、大陸最強の軍事集団「ジョーカー騎士団」。その第七席を務める老装騎士のヴァルムは、帝都の戦略室で、またしても突き返された出撃申請書を睨みつけていた。


「なぜだ! 国境沿いの小国が、我が国の関税措置に不満を示しているのだぞ! なぜ我らを出撃させて一喝せん!」


戦略室の文官たちは、騎士の威圧感に冷や汗を流しながらも、淡々と理由の書類を読み上げた。


「現在、レグナス国境からその小国へ続く主要街道において、大規模な荷馬車の車軸の破損事故が多発しており、道路が完全に寸断されております。騎士団の重装備を通過させるための、安全な迂回ルートが確保できません」


「事故だと? そんなものは人足を注ぎ込んで数日で片付けさせろ!」


「それが、その事故を起こした馬車に乗っているのは、すべて帝都へ運ばれるはずの冬の医療物資なのです。万が一、騎士団の進軍によって物資が破損すれば、帝都市民の暴動へと発展しかねません」


ヴァルムは激しく拳を壁に叩きつけた。


彼らジョーカー騎士団は、その名前だけで大陸の勢力図を塗り替える力を持っている。だが、その圧倒的な武力も、ただの車軸の破損という、あまりにも俗世的な日常のトラブルの前に、完全に動きを封じられていた。


意図的な封鎖ではない。ただの物流の混乱だ。


しかし、その混乱の時期と場所を、完璧にコントロールしている存在がレグナスの奥底にいる。最強の騎士団は、その刃を一度も抜くことを許されぬまま、世界の均衡を維持するための、ただの置物として焦燥に焼かれていた。

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