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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第394話「ジョーカーの孤立」

アルカディア帝国が誇る、大陸最強の軍事集団「ジョーカー騎士団」。その第五席を務める剛腕の重騎士は、帝都の戦略室で、またしても届いた「待機命令」の書状を握り潰していた。


「なぜだ! 隣のグランヴェルドが動く兆候があるのだぞ! なぜ我らを出撃させん!」


戦略室の文官たちは、騎士の剣幕に怯えながらも、淡々と理由を述べた。


「現在、レグナス国境沿いの主要街道が、大規模な『荷馬車の輻輳』によって完全に麻痺しております。我が騎士団の巨躯と重装備を通せるだけの、迂回ルートが確保できておりません」


「荷馬車の輻輳だと? そんなものは蹴散らして進めばいい!」


「そうはいきません。あの馬車に乗っているのは、すべて帝都へ運ばれるはずの『冬の医療物資』です。万が一、騎士団の進軍によって物資が破損すれば、帝都市民の不満は暴動へと発展しかねません」


騎士は激しい足音を立てて部屋を退出した。


彼らジョーカー騎士団は、大陸のあらゆる戦況を一撃で覆す力を持っている。だが、その圧倒的な武力も、ただの「商人の馬車の渋滞」という、あまりにも俗世的な日常のトラブルの前に、完全に動きを封じられていた。


意図的な封鎖ではない。ただの物流の混乱だ。


しかし、その混乱の時期と場所を、完璧にコントロールしている存在がレグナスの奥底にいる。最強の騎士団は、その刃を一度も抜くことを許されぬまま、世界の均衡を維持するための、ただの置物として孤立させられていた。

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