第37話:歪んだ布陣
三日後。
平原。
だが。
「……なんだ、これ」
バルガスが低く呟く。
帝国軍。
並んでいる。
だが――
「……おかしいな」
小さく呟く。
整っていない。
いや。
整っているのに、歪んでいる。
「陣形が崩れてるのか?」
バルガスが言う。
「違う」
即答する。
「意図的だ」
間がある。
隙がある。
だが。
“誘い”ではない。
「……読めねぇ」
バルガスが呟く。
「そうだな」
珍しく、同意する。
これは。
今までの帝国ではない。
「学習している」
静かに言う。
「お前にか?」
「ああ」
短く答える。
戦わない相手。
合理を読む相手。
それに対する、答え。
「……面倒だな」
バルガスが苦笑する。
「どうする」
一拍。
「動かない」
「またかよ」
「今回は違う」
視線を固定する。
「動けない」
それが正しい。
不用意に動けば、読まれる。
時間が流れる。
帝国は動かない。
こちらも動かない。
「……何も起きねぇぞ」
バルガスが呟く。
「それが狙いだ」
静かな声。
「焦らせる」
「判断を狂わせる」
「……なるほどな」
バルガスが笑う。
「でもよ」
「お前には効かねぇだろ」
「効いている」
短く答える。
わからない。
それ自体が、圧になる。
「……まじかよ」
バルガスが目を細める。
「だが」
一拍。
「崩せないわけじゃない」
視線を動かす。
「見えてきた」
「何がだ」
「目的だ」
この歪み。
この配置。
すべては――
「分断だ」
確信する。
「こちらを分ける気だ」
「……なるほどな」
バルガスが頷く。
「じゃあどうする」
「分かれない」
即答。
「一つでいる」
それだけだ。
そして。
その瞬間。
帝国軍が、動いた。
一斉に。
「……来たぞ!」
バルガスが叫ぶ。
だが。
「想定内だ」
静かに言う。
崩されない。
分けられない。
それが、答えだ。
戦が、始まる。
だが。
これはまだ。
序章に過ぎなかった。




