第36話:再来
報告は、静かに届いた。
「帝国軍、動きあり」
それだけ。
だが。
「……来たな」
小さく呟く。
空気が変わる。
これまでとは違う。
「どの規模だ」
バルガスが問う。
「少数」
「だが」
一拍。
「質が違う」
それだけで十分だった。
「……本命か」
「ああ」
否定しない。
そして。
「今回は」
「終わらせに来ている」
静かな断定。
その時だった。
「宰相様!」
兵が駆け込む。
「帝国より使者!」
来た。
「通せ」
謁見の間。
扉が開く。
入ってきたのは、一人。
装飾はない。
武装も最低限。
だが。
“圧”がある。
「……久しいな」
男が言う。
その声。
聞き覚えがあった。
「……ああ」
短く返す。
「久しぶりだな」
沈黙。
「覚えているか」
男が問う。
「当然だ」
忘れるはずがない。
「お前が」
「帝国を作った」
その言葉。
空気が凍る。
「……そうだな」
否定しない。
「なら」
一歩、前に出る。
「終わらせに来た」
静かな宣言。
「お前を」
殺気はない。
だが。
確実な“意志”。
「……そうか」
短く返す。
「なら」
「やることは同じだ」
沈黙。
「戦うのか?」
「いや」
首を振る。
「戦わない」
その言葉に。
男が、わずかに笑う。
「変わらないな」
「そういうものだ」
「……なら」
「試そう」
一拍。
「今度こそ」
「お前を」
「崩せるかどうか」
静かな声。
そして。
男は、背を向ける。
「三日後」
「始める」
それだけを残し。
去っていく。
「……やべぇな」
バルガスが呟く。
「今までと違う」
「ああ」
静かに頷く。
これは。
ただの戦ではない。
過去との戦い。
そして。
「……終わらせる」
小さく呟く。
今度こそ。
完全に。




