第34話:使う者
混乱は、続いていた。
だが。
「……減ってきたな」
バルガスが呟く。
「収まっている」
短く答える。
暴動は減り。
報告も整理されてきた。
「どうやった」
バルガスが問う。
「簡単だ」
「任せた」
「……それだけか?」
「ああ」
机の上の書類を指で叩く。
「西方地区」
「管理責任者」
「元エルド住民」
バルガスが目を細める。
「……あいつか」
第31話で登場した男。
「ああ」
「任せた」
「うまくいったのか?」
「結果が出ている」
それが答えだ。
「……なんであいつなんだ」
「理解しているからだ」
短く言う。
「恐怖も」
「反発も」
「両方経験している」
「だから使える」
沈黙。
「……なるほどな」
バルガスが頷く。
「戦える奴じゃなくて」
「わかってる奴を使うってか」
「ああ」
それが最適だ。
その時だった。
「宰相様!」
扉が開く。
入ってきたのは――
その男だった。
「報告に来ました」
以前より、落ち着いている。
「状況は」
「安定しています」
「分離統治により衝突は減少」
「物流も回復傾向です」
「そうか」
短く頷く。
「問題は」
「人です」
一拍。
「優秀な人材が足りない」
「当然だ」
即答。
「急に国が広がった」
「追いつくはずがない」
「……はい」
男は迷い。
「一つ提案があります」
「言え」
「教育です」
空気が少し変わる。
「統一された制度」
「管理者の育成」
「時間はかかりますが」
「確実に回ります」
沈黙。
「……いいな」
短く言う。
「やれ」
「はい」
迷いのない返事。
それを見て。
「……変わったな」
バルガスが呟く。
「ああ」
「使えるようになった」
それが全てだ。
そして。
男が去った後。
「……やべぇな」
バルガスが笑う。
「国になってきた」
「ああ」
静かに頷く。
もう、小国ではない。
形だけではない。
中身も、変わり始めている。
「……次だな」
視線を地図へ向ける。
残りの小国。
そして、その先。
「終わらせる」
小国の時代を。
完全に。




