第17話:暗殺
夜は、静かだった。
王城の灯りも落ち、人の気配はほとんどない。
だが。
完全な静寂ではない。
――いる。
わずかな違和感。
空気の流れ。
「……来たか」
机に向かったまま、呟く。
足音はない。
気配も薄い。
だが、それでもわかる。
殺意は、隠せない。
次の瞬間。
――風が揺れた。
背後。
刃が、迫る。
「遅い」
振り向かない。
そのまま、椅子を蹴る。
倒れる。
刃が空を切る。
同時に。
「そこだ」
声が響く。
壁の影から、兵が飛び出す。
伏せていた者たち。
完全に囲まれる。
「……!」
暗殺者が、わずかに動揺する。
「終わりだ」
短く告げる。
数秒後。
すべてが、終わった。
暗殺者は拘束され、床に押さえつけられている。
「……なぜ、わかった」
低い声。
「簡単だ」
椅子を起こし、座り直す。
「俺がここにいると、知っている者がいる」
「なら」
「来る」
それだけの話だ。
「……それだけで」
「それだけだ」
淡々と答える。
「お前たちの選択肢は少ない」
「だから読める」
暗殺者は、黙る。
「で」
「誰の命令だ」
沈黙。
「言わないか」
「別にいい」
興味はない。
「どうせ、帝国だ」
その言葉に。
わずかに反応した。
「……やはりな」
確定した。
「連れていけ」
兵が動く。
そして。
部屋に、静寂が戻る。
「……大丈夫?」
声。
振り向く。
ルナが立っていた。
「問題ない」
「本当に?」
「ああ」
短く答える。
「……怖くないの?」
「怖いか?」
「普通は怖いよ」
ルナは言う。
「だって、殺されるかもしれないんだよ」
「そうだな」
少しだけ考える。
「だが」
「避けられる」
「……それが普通じゃないんだよ」
小さくため息をつく。
「カインってさ」
「ほんとに変だよね」
「そうか」
「うん」
少しだけ笑う。
「でも」
「よかった」
「無事で」
その一言。
「……ああ」
短く返す。
それで十分だった。
帝国は動いた。
次は、さらに深く来る。
内側から。
崩すために。
だが。
「……問題ない」
小さく呟く。
来るなら。
すべて、潰す。
戦わずに。
それが。
今の、自分の戦い方だ。




