■第130話:戦争ではないもの
戦いは。
続いている。
だが。
誰も。
それを戦争とは思っていなかった。
■前線(別国家)
「進め」
命令が出る。
兵は動く。
止まる。
三拍。
血が出る。
もう。
誰も驚かない。
反応しない。
ただ。
次の命令を待つ。
「……前進」
再度命令。
同じことが起きる。
誰も疑問を口にしない。
戦っていない。
だが。
戦闘行動は続いている。
■後方司令部
「戦況は」
「膠着状態です」
一拍。
誰も違和感を指摘しない。
膠着。
その言葉で片付けられる。
だが。
実際は違う。
戦いは成立していない。
勝敗も。
意味も。
存在しない。
■小国
「もうやめろ」
将が言う。
一拍。
誰も動かない。
「撤退だ」
命令。
だが。
兵は動かない。
命令を理解している。
だが。
実行する意味が分からない。
動く理由が。
消えている。
■別戦線
「攻撃しろ」
命令。
兵が動く。
止まる。
また同じ。
「……やめろ」
小さな声。
誰も聞かない。
戦争は。
命令で動く。
だが。
今は違う。
命令が。
意味を持たない。
■観戦国
「戦線が……動いていない?」
将が言う。
一拍。
記録を見る。
進んでいる。
だが。
進んでいない。
「……なんだこれは」
理解できない。
だが。
おかしいことだけは分かる。
■グランヴェルド
「効率が落ちている」
技術官が言う。
一拍。
「原因は」
「不明です」
「ならば無視」
即答。
「通常戦闘を継続」
だが。
通常が存在しない。
■アルカディア
「……完全に崩壊している」
観測結果を見て言う。
一拍。
「戦闘ではない」
「では何だ」
「……分からない」
■ドラグナール
「戦えない?」
低く笑う。
一拍。
「なら戦う必要がない」
だが。
それでも。
戦場にはいる。
■セラフィス
「……無意味」
小さな声。
一拍。
「関与しない」
■ヴァルハイン
「戦争が壊れている」
レオナルトが言う。
一拍。
「成立していない」
「だが続いている」
参謀が言う。
「……最悪だな」
■レグナス(上層)
「外部」
ミレアが言う。
「戦闘継続」
一拍。
カイルが首を振る。
「違う」
「戦闘ではない」
ヴェルドが言う。
■核心
「これは」
一拍。
「現象だ」
■ルナたち
「……もう終わってるね」
ルナが言う。
「戦争」
レオンが笑う。
「形だけだ」
エリナが小さく言う。
「……怖い」
ルナが静かに答える。
「うん」
「もう戻らない」
■最後
戦争は。
終わっていた。
だが。
続いている。
誰も止められないまま。
意味を失ったまま。
それでも。
進み続けていた。




