■第111話:外部戦線④
戦いは。
続いている。
変わらない。
はずだった。
■前線
「前進!」
号令が飛ぶ。
兵が動く。
いつも通り。
問題はない。
「――止まれ」
■空白
その瞬間。
動きが止まる。
一拍。
いや。
それより短い。
だが。
確かに止まった。
「……え?」
■感覚
敵がいる。
距離もある。
踏み込めば届く。
だが。
動けない。
一瞬だけ。
「……なんだ今の」
■解除
「行け!」
別の声。
兵が動く。
戻る。
戦いが再開する。
「……気のせいか?」
■フェルス側
「押し返せ!」
号令。
兵が踏み込む。
その瞬間。
止まる。
一拍未満。
「……っ?」
■違和感
すぐ戻る。
動く。
戦いは続く。
だが。
何かがおかしい。
「今……止まったか?」
■全体
戦いは成立している。
崩れてはいない。
だが。
途切れる。
一瞬だけ。
何度も。
「……まただ」
■グラディア本陣
「報告」
「前線で一時停止現象」
一拍。
「継続時間、極短」
将が眉をひそめる。
「誤差だな」
■判断
「問題ありません」
参謀が答える。
「戦闘は維持されています」
一拍。
「記録のみ残します」
それで終わる。
■現場
「さっき止まったよな?」
兵が呟く。
「気のせいだろ」
別の兵が笑う。
「そんなわけない」
一拍。
「……でも動いてるしな」
納得してしまう。
■観戦国
「やや動きが鈍いな」
将が言う。
「だが問題ない」
一拍。
「拮抗している」
評価は変わらない。
■レグナス(上層)
「外部戦線」
ミレアが言う。
「瞬間停止、複数確認」
一拍。
カイルが息を呑む。
「……来てますね」
ヴェルドが答える。
「浅いが」
■分析
「まだ戦える」
ヴェルドが続ける。
「だから問題にならない」
一拍。
「だが」
「回数が増える」
■ルナたち
「……止まったね」
ルナが言う。
「ほんの一瞬」
レオンが笑う。
「気づかねぇレベルだ」
エリナが小さく言う。
「……怖い」
一拍。
ルナは静かに言う。
「まだ怖くない」
■レグナス
「報告」
「外部現象、増加傾向」
一拍。
「問題ない」
それだけ。
戦いは。
続く。
止まりながら。
だが。
誰も気づかない。
それが。
一番静かな崩壊だった。




